108.意外な真実
ああ、そうそう、ここで1つ言い忘れたけど、新幹線に乗るにあたって哮天犬の事である。今までは何とか一緒に居ることを押し通せて来た。一番不味いと思ったのは飛行機野中だろう。だが、あそこは玄羅が居たお陰で押し通すことが出来た。だが、今回は新幹線に乗るためそうは言ってられない。しかも、玄羅は居ないのである。そんなことを思っていたら、哮天犬が、
「わんわん!」
と、言っているが何が言いたいのかよくわからないでいると、近くに居たスノウが、
「アイテムボックスになら入れると言ってるぞ!」
「えっ?マジで?」
そう聞くと、哮天犬もスノウも首を縦に降って頷いている。なので、哮天犬に
「悪いけど、少しの間、アイテムボックスに入っててくれるか?」
「わんっ!」
どうやら肯定の意味のようであり、哮天犬はすぐに自分からアイテムボックスに入っていった。そして、直ぐに自分から出てくる。
「わんわん!」
「どうやらアイテムボックスの出入りは自由みたいだぞ!」
またも哮天犬の通訳をしてくれるスノウである。
「そうなのか!でも、急に出てくるのは勘弁な。他の人に見られると厄介なことになるからな。」
「わん!」
俺は、哮天犬の頭を撫でてやると嬉しそうに吠える。どうやら分かってくれたようである。そんなこんなで、無事に山口に帰ってくることが出来た。降りた駅は新山口駅。俺の家まではここから1時間と少し車で移動しなければならない。だが、俺にはその足がないので予め父親に迎えに来るように頼んでいたのである。俺が新幹線を降り、入り口に向かうと既に父親は車で待ってくれていた。俺は、その親父を見つけ車に乗り込む。
「親父。ありがとな!」
「ああ。無事でなによりだ。…………じゃあ、帰るぞ。何処か寄るところはあるのか?」
「いや、特に無いからそのまま帰って大丈夫!」
「そうか。分かった。」
そこからは、車の中で爆睡してしまい気がつくと既に家の前であった。そして、俺は、久しぶりに家に帰りつき、母親に無事に帰ってきたことを告げ、速攻で風呂に入りそのあと自室に戻り再び爆睡するのである。勿論、爆睡する前にグラム達と哮天犬は出てくる。
翌日、俺は8時に目を覚ます。今は社会人のように時間に縛られているわけではなく、出勤時間などを考えなくていいので、どちらかと言うと気楽な生活を送る事が出来ている。俺が、ベッドから起き上がると、1匹の猫が俺の前にやってくる。
『にゃ。ご主人に報告にゃ!』
「んっ?…………俺達が留守の間に何かあったのか?」
俺は、目を擦りながら目の前の猫に質問をする。
『んにゃ特に変わったことは無かったにゃ。』
「それじゃあ他に何があったんだ?」
『にゃ、ご主人には前に報告したと思うにゃけど、今回、妊娠していた猫達の出産が無事に終わったにゃ!』
「そうなのか。それは目出度いな!」
『そこで、ご主人にはお願いがあるにゃ!』
「んっ?何だ?」
『産まれた子達をご主人にテイムしてほしいにゃ!』
「ん~!…………そう言うのはもう少し成長してからの話でいいんじゃないか?」
俺は、テイムしている従魔の子どもだからと言ってテイムしようとは思わない。そこは本人の意志を尊重しようと思う。それと、テイムしたからと言って従魔になった奴等を奴隷のように扱おうとは思っていない。基本的には自由に過ごしてほしいものである。但し、他人には迷惑を掛けないようにしてほしいものである。
『それがそうも言ってられないにゃ。』
「どういう事だ?」
『実は、産まれてきた子全員が尻尾が2本あるにゃ。』
どうやら既に猫又になっているようなので流石に野には放せない。もし、放して一般人にでも見つかれば大変な事になる。
「そっか、じゃあ、テイムするしかないな。」
『よろしくお願いするにゃ!』
「でも、1つだけ言っておくけど無理矢理にテイムする気はないぞ。あくまでも本人の意志を尊重する。その辺りは親や周りの大人達が説得してくれたら嬉しいぞ!」
『その辺はお安いご用にゃ!』
「ああ、頼むぞ。それと、妊娠していた猫達の様子はどうだ?」
妊娠していた猫達は、妊娠していた状態でもダンジョンに行こうとしていたのである。なので、妊娠中はダンジョンの出入りを禁止したのである。どうも話を聞くと、他の猫達がダンジョンでどんどん強くなっていくことが羨ましいんだそうだ。だが、何とか妊娠中はダンジョンに行くことは控えてくれたようであるが…………
『実はにゃ、それも困っているにゃ。母親達は、出産して直ぐにダンジョンに行こうとしたにゃ。だけど、出産で体力が減った状態だと危険だと言って全員で止めたにゃ!』
それを聞いてちょっと頭をかかえたが、
「まぁ、よくやったと思うぞ。」
『だけど、それもそろそろ限界にゃ。』
「なぁ、1つ確認なんだが、母親達に母性本能と言うか、子どもをきちんと育てようと言う気はあるんだよな?」
『それはあるにゃ。』
「じゃあ、解決策は1つしかない。」
『にゃにゃ!?そんな方法があるにゃ?』
「まぁ、そんな難しいことじゃない。ダンジョンに生きたいんなら行かせてやればいいんだよ。」
『にゃにゃ!?…………それじゃあ子どもはどうするにゃ?』
「何も全員が行くわけじゃない。母親達には半々に行って貰う。勿論、それだけじゃ子ども達の面倒は見きれないだろうから、他の猫達にも子守りの協力して貰う。それと、母親達にも一応護衛をつける。まぁ、護衛と言っても一緒に探索をしてきてくれたら問題ない。それを、順次当番をつけてやっていくって言うのはどうだ?」
『いいと思うにゃ!今晩、皆と話し合って決めるにゃ。ご主人、ありがとうなのにゃ!』
「別にいいって。そんな大層なアイディアでもない。…………それと、報告は他にはあるのか?」
『他は特にないにゃ!』
「おっし!ご苦労!これからもチョクチョク出掛けなきゃいけなくなると思うがその時は頼むな!」
『了解にゃ!…………それと、ご主人に1つ頼みがあるにゃ!』
「んっ、そうか。何だ?出来ることならしてやるぞ!」
『じゃあ遠慮なく言わせて貰うにゃ!…………全員とは言わないけど、今回みたいに遠出をする時は付いていきたいにゃ!』
「なんだ、そんなことか!別にいいぞ!だけど、家のダンジョンも俺達が居ない時にスタンピードを起こされても困るし、他の不足の事態が起きる可能性もあるからある程度は家に残って貰うことになるぞ!」
『それでもいいにゃ!』
「じゃあ、選抜の方法は任せるが、行きたい奴だけにしろよ。あと、怪我人が出るような決め方は出来るだけ辞めて平和的に決めるように!」
「了解にゃ!」
そう言うと報告を終えた猫はサッサと帰っていく。
さて、今日と明日は休みの日であるので、何もせずにベッドでゴロゴロしながら録り溜めたテレビ番組を見ながら過ごすのである。そんなだらけた生活を送っていると唐突に携帯の着信音がなる。普段から着信が鳴ることは殆んど無いのである意味緊張する。携帯の画面の名前を見るとそこには森高奏太と表示されていた。高森奏太とは幼なじみである。保育園の頃から中学卒業まで一緒であった。高校は別々の所に行ってはいたが地元には居たので時々顔を会わせていた。高校卒業後は、福岡の専門学校に行っていた。元々どちらかと言えばイケメンで都会派の感じがしていたので、もう地元には戻ってこないのかと思っていたが意外と早い段階で地元に戻ってきたので内心吃驚している。それに、幼なじみの殆んどは一旦都会に出ていくと極一部を除いて帰ってこない。今や何十人と居た幼なじみも地元には数人しか残らなかった。その数少ない幼なじみである。そんな、高森奏太からの電話である。俺は、そんな高森からの電話に出る。
「もしもし?」
【もしもし、神月か?】
「ああ、そうだ!久しぶりだな、高森。」
【久しぶりじゃない!】
俺的には久しぶりなのだが何故か怒られている。
「違ったか?」
【はぁ~。お前、その調子ならメールを見てないな?】
「メール??多分見た記憶が無い!」
【やっぱりか!】
「それで、何の用だったんだ?」
【同窓会のお知らせだよ!】
「不参加で!」
恐らくは同窓会は小中の幼なじみでやるのだと思う。小学校も中学校もほぼ全員が同じ所に通う。都会のように学校が沢山あるわけでも所謂お受験があるような学校は存在せず市立の小学校と中学校があるのみである。なので、必然的にそこに通うことになる。まぁ、若干名、市の中心部に引っ越して学校が変わるものも居た。それに、俺達のクラスは2クラスはあったが、ほぼ全員が仲が良かったため、同窓会もクラス関係なく行われる。そして、俺は、同窓会には参加したく無かった。さっきも言ったとおり俺達の学年は全員が仲が良かった。だが、その中でも仲のいいグループは存在する。まずは、勉強もスポーツも出来てイケメンで、女子持てるタイプの奴等。いい奴等なんだけどちょっとだけ悪そうなタイプ。三枚目で少し陰キャなタイプ。大まかに分けるとこんな感じである。こう聞くとスクールカーストがあるように感じるが、特にはそんなことはなくて皆仲が良かった。だが、俺は、このグループの何処にも属していない。例えば、男子9人居て、何かの活動で2つのグループを作るとする。大体今の上げた3つのグループがグループを作る。だが、大抵はイケメンのグループと少し陰キャのグループが一緒になることが多い。そうなると後は、ちょい悪の奴等でグループを作る。そうなると弾き出されるのは俺である。この場合は、大抵先生がどちらかのグループに所属するように言ってくれる。だが、これが任意のグループ作りの場合は、大抵1人残ってしまう。なので、1人でやることが多かった。昔から感じていたが、何処か俺だけ浮いてる雰囲気はあった。なので、幼なじみにはあまり会いたくないので同窓会には参加したくないのだ。だが、そんな俺を高森は許してくれない。
【何言ってるんだ?地元にいる奴は強制参加だ。それに、神月、お前の場合は特に強制だ!】
「何だよ!その滅茶苦茶な理論!」
【なら、理論的に言ってやろう。神月!まずはお前は俺が送った同窓会の出欠席のメールに返信がなかった。他の奴等は全員期限内に返信があったぞ。因みに、俺も全員の連絡先を知ってるわけじゃないから、その辺は知ってる奴から連絡して貰った!】
「おっ、おう!大変だったな。」
【ああっ、大変だった。そして、もし神月が地元には居なくて例えば東京や北海道なんかに居たらしょうがないと思っただろう。だけどな、実際にこっちに居るんだから仕方ないだろ。後半は、俺の独断だ。それに、もう会場を押さえてあって人数も言ってある。キャンセルは不可能だ。】
「マジか?」
【ああ、マジだ!】
「……………………仕方ない。分かった!」
【よしっ、じゃあ、参加ということで!ちゃんと来いよ!】
「分かった。それで、場合と日時、後、会費を教えてくれるか?」
【おおっ、そうだったな。場所は新下関駅の直ぐ横にある下関シーサイドホテル。日時5月2日は18時からで会費は7000円だ!】
「えっ?!会費高くない??」
【少しな。だがその分、料理も酒も良いものが出るぞ!】
「そうか。…………まっ、俺は酒は飲まないからその分料理の方に期待させて貰うさ!」
【そうそう、因みにバイキングだからな。それと、席は一応用意してあるが使うも使わないも自由だ。】
「そうか。分かった!そうだ、何人くらい来るんだ?」
【確か40人ちょっとじゃなかったかな!】
「なっ?!それって俺達の同級殆んどじゃないか?」
【ああ!俺、頑張った!】
「確かにな!」
【もっと誉めてもいいんだぞ!】
「凄いよ!尊敬する!」
【それで、当日はどうやっていくんだ?】
「確定ではないけど多分自分の車かな?新下関にもダンジョンが出来てるって言うし、同窓会当日はホテルに泊まって翌日にダンジョンを見てから帰ろうかと考えてるぞ!」
【そうなのか。当日に帰るんなら俺達と一緒に行けばいいと思ってたんだがな!】
「俺達?」
【山川と大城だよ。】
「アイツらか!」
【地元に居るんだ。一緒に行った方が皆手間が省けていいいだろ?】
「確かにな!…………でも、帰りはどうするんだ?お前ら全員酒飲むんだろ?」
【それは家の嫁さんに頼む予定だ。行きの運転は俺がして帰りは頼む予定だ。】
「その言い方だと嫁さんはずっとあっちに居るように感じるぞ!」
【そうだな。】
「嫁さん、凄いな。愛されてるじゃん!」
【いやっ、それほどでもないけどな。…………そう言えば1ついい忘れたけどドレスコードをしてこいよ。】
「はぁ~?」
【ドレスコードだよドレスコード!】
「要はスーツを着て行けってことか?」
【そう言うことだな!】
「面倒だけど分かった!」
【じゃあ、当日にな!】
「分かった。じゃあな。」
俺は、電話を切る。面倒だけど行くしかないだろう。それに、また別のダンジョンに行けるのだからまぁ良しとしよう。それに、久しぶり幼なじみに会えるのは少し楽しみである。最長で中学卒業以来だから20年会ってない奴がいると言うことだ。そう考えると少し興奮してしまう。そして、俺は同窓会が行われるホテルの1室を予約する。