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105.殴り込み

奥の扉が開かれ、そこには、50歳代位のスーツを着ている男が現れる。こういうところから出てくる人は大抵大物であることが定番である。フロアに居る奴等はその姿を見ると、


「「「桔川さん!!」」」


どうやら組長ではなかったようである。だけど、ここに居る全員が一目を置いている人物だというのは分かる。


「この状況はどういう事ですか?」


桔川と呼ばれた人物が状況の把握を始める。なので、俺が、


「ここに、海道って奴が何処に居るか知りたくてここに来たんだが、あんたのお仲間は話をしても答えてくれなくて殴りかかってきたんだ!それで、今、この状況って訳だけど、何か質問は?」


「では、何故、海道をお探しですか?」


「それは、知り合いが海道に連れていかれたからだ!」


「それはそれは大変ですね。」


「なぁ、御託はいいから知っているんなら早く教えて貰おうか?」


「おやおや、それが人に物を頼む態度ですか?」


「頼む?…………誰も頼んでないけどな!俺は、教えろって言ってんたけど?」


「貴方には、今のこの状況が目に見えないんですか?」


「状況?ただの暴力団が俺達に向けて拳銃を構えているだけど、それが、何?」


「この状況にも臆さないですか?」


「それが何か?…………玉兎さん。コイツらの事、写真を撮っておいて下さいね。」


「わかりました。」


玉兎さんは、携帯で今、俺達に向けられている拳銃を持った男達の写メを撮り始める。


「撮り終えましたよ。」


「了解です。…………、それで、早く答えてくれませんかね?こっちは急いでるんだけど!」


「それは出来ませんね。」


「何故?」


「こっちは極道を名乗ってるんですよ。なのに、素人が殴り込んできて、その要求をあっさりと受け入れられるわけがないでしょう。それに、知られてはいけないことを貴方達は知ってしまった。しかも、証拠つきで!」


仕方ないので実力行使に出ようと思っていると、


「ちょっと待て!」


と、部屋の奥から声が聞こえる。すると、全員が声を揃えて頭を下げる。


「「「「くっ、組長!!」」」」


組長は、60代位の人で頭は黒髪と白髪が入り交じっている。身長は俺と同じくらいだから170cm位で、高級そうなスーツを見に纏っている。


「桔川。海道が何処にいるのか教えて差し上げろ!」


「でっ、ですが組長!」


「俺が、教えてやれと言ってるんだ!」


「わっ、分かりました。少し、お待ちください。」


桔川は部下に海道の居場所を調べるように指示を出す。


「おい、オッサン。何で急に教えてくれる気になったんだ?」


「おっ、お前、組長に向かってなんて口を!!!」


桔川が俺の口調に対して動揺する。それは他の組員を見ても動揺で、皆顔は青ざめていた。


「ハハハハハハ、若い者はそのくらいの度胸が無くちゃな!」


「でも、いいんですか?」


「何がだ?」


「海道の情報を俺なんかに教えても。」


「その事か。別に構わん。アイツは色々と悪さをし過ぎている。その内に、今の地位から外そうと考えていた所だ。」


「そうなんだ。」


「ああ。…………、そこでちょっと頼みがあるんだがいいか?」


「俺は、暴力団と取引はしない。」


「そこをなんとか曲げて頼む!」


どうしてもという縋るよう目で俺を見てくるので、


「はぁ~、じゃあ、聞くだけ聞きますよ。」


「そうか。すまんの。頼みと言うのは、さっき撮ったものを黙っておいて欲しいということだ。」


「写真ですか?…………いいですよ。玉兎さん、消去してあげてください。」


「神月さん、いいんですか?」


「いいんですよ。」


「わかりました。じゃあ、消去します。」


そう言うと、玉兎さんは携帯を操作して画像の消去を行う。


「終わりました。」


「だ、そうですよ。組長さん。」


「かたじけない。」


「いいんですよ。その代わり次にこんなことがあったらただじゃおかないですよ!」


俺は、少し威圧をした後ににこやかな笑顔を見せる。


「ああっ、肝に銘じる。」


そして、俺達は海道の居場所を教えて貰い竜光会を後にする。


「組長、いいんですか?奴等をこのまま行かせて?」


「そうですよ。しかも、きちんと写真を消去したのか確認もとらなくて、奴等が警察にチクったら俺ら終わりですよ!」


組員達が組長に抗議をする。


「大丈夫だ。アイツの眼は真っ直ぐな感じだった。ああいった奴は言ったことに対してはやる奴の眼だった。」


「っで、ですが…………。」


諄い(くどい)!それよりも、海道だ!お前達は、至急、海道の調査を行え!これは、組長である俺、大熊達弥の名の元の命令だ。可及的速やかに実行しろ!」


「「「「「「わかりました!」」」」」」


そう言い事務所に居た全員が蜘蛛の子を散らすように出ていった。



そして、俺達は、竜光会の事務所から車で15分位の場所にあるビルの辿り着いた。


「あの組長に言われた場所は、ここですよね?」


「そうじゃな、玉兎。ここで、間違いはない。だが、何故、あの組長は、海道の居場所が分かったんだ?」


「多分、あの組長、海道の事を怪しんでる節があったから、あの秘書みたいな男がGPSでも仕込んでたんじゃないですか?」


「あぁ、なんかあの人ならやりそうですね。」


「そうだな。」


「そんなことより早く行きましょう!2人が心配です。」


そして、俺達3人、いや、哮天犬とグラムが居るから5人はビルの中に入っていく。




時間を少し遡る。

私と芽衣は、玉兎さんに送られて家に戻る。玉兎さんにはアパートの前で別れた。そして、部屋に戻るとそこには海道とその手下が5、6人居た。私は、危機感を感じ部屋を出ようとするが、


「おっ、お姉ちゃん。」


見ると芽衣が男の一人に捕まっていた。


「芽衣っ!」


私が、芽衣の所に駆け寄ろうとすると間に海道が割って入る。


「妹が大事なら俺の指示に従え!へへへへへ!」


「卑怯な!」


私は、海道を睨む。


「卑怯ね。俺にとっては褒め言葉だよ。じゃあ、俺についてきて貰おうか。」


私は、仕方なくついていく。途中、玉兎さんが居て助けてくれようとしたが人数は海道達の方が多く、しかも相手は喧嘩に慣れてる連中である。反対に玉兎さんは一般人である。それに見た感じ格闘技等を行っていたようには見えない。案の定、海道の手下にやられていた。私たちは、車に乗せられ目隠しをされる。車で3、40分位移動しただろうか、車が止まり、車のドアが開き


「降りろ!」


私と芽衣は言われた通りに車を降りる。そして、言われた通りに歩いていく。どこかのビルに入りエレベ−タ−に乗せられる。何階かは分からないが下ろされる。私と芽衣は目隠しを外される。


「さて、ここなら邪魔が入ることはねぇ!」


「それで、私に一体何の用件なの?」


「言わなくても分かってるはずだぜぇ~!」


「それは私に貴方の女になれってこと?」


「なんだ、わかってるじゃねえか!」


「その件はお断りしたはずよ。」


「俺の誘いを断るとはどうなるか分かってるんだろうな?」


海道が薄ら笑いを浮かべながら部下の男に眼で合図をする。すると、芽衣を捕まえていた男が懐からナイフを取りだし芽衣の頬をナイフの腹の部分でペシペシと叩く。


「おっ、お姉ちゃん。」


芽衣の顔は青ざめて恐怖に染まっている。


「ぐっ、卑怯よ!」


「言ったはずだ!卑怯は褒め言葉だとな!ハハハハハハハ!」


さっきよりも嬉しそうに笑う海道であったが、私は海道を芽衣を捕まえている手下の方に突き飛ばす。すると、見事に海道は手下とぶつかり合い芽衣が解放される。


「芽衣っ、早くこっちにおいで!」


一瞬、芽衣は迷ったが私の方に走って飛び込んでくる。出口の方は手下が居るので部屋の奥の方に行くしかない。丁度、そっちに部屋があるので私たちはそこに飛び込む。その部屋は、丁度鍵のかかる部屋であったので迷うことなく鍵を閉める。そして、手下達は、海道の方に詰め寄る。


「海藤さん。大丈夫ですか?」


手下の一人が海道に問う。


「クソガ!あのクソアマ~!絶対に許さねぇぞ!さっさと連れ戻せ!」


「「「「「わっ、分かりました。」」」」」


手下達は、私達が入った部屋を開けようとするが鍵が掛かっているため直ぐには入ってこれない。


「海藤さん。鍵が掛かっています。」


「馬鹿野郎!そんものさっさと壊せ!」


「分かりました。」


海道の手下達が扉の破壊を試みている。扉は意外と頑丈のようで簡単には壊れなさそうである。だが、問題はこの後である。咄嗟に逃げ込んだこの部屋は入ってきた入り口以外に扉は無かった。それに、部屋の中には何も無い。なので、諦めてくれるのを祈るだけであるが、それは万が一にもあり得ない事だろうと思う。

扉は次第に壊れていき、ついにはド−ンっと音を立てて扉が壊れ、海道達が入ってくる。


「手間ぁ~かけやがって!このアマァ~!」


海道は怒り心頭である。私は、芽衣を守ろうと必死に抱き抱えるが、海道は私の髪を掴み思いきり引っ張られ、芽衣と引き離される。


「お姉ちゃ~ん!」


芽衣が叫び私の元にやって来ようとするが、海道の手下の一人に捕まえられて身動きがとれない状態である。


「雅ぃ~!俺の女になる気は無いのか?」


「こんなことするような人の女になるわけ無いでしょ?」


すると、海道は私の頬を平手打ちで叩く。


「生意気な女だな!」


そう言い再度私の頬を平手打ちする。私は、海道を睨み付ける。


「はぁ~、もうどうでもいいや。この程度の女なら世の中に腐るほどいるからな。」


海道は、懐からドスを取り出すと私の腹部を刺す。私は、痛みのあまり床に倒れこむ。


「お姉ちゃん。お姉ちゃん。」


芽衣の声が聞こえるが段々と意識が遠退いていく。


「おい、後始末をしておけ!」


「分かりました。それでガキの方はどうします?」


「姉一人じゃあ可哀想だから、一緒にあの世に送ってやれ!」


「わかりました。」


海道の部下が芽衣を羽交い締めにし、もう一人の部下がナイフを取りだし芽衣に襲いかかるが、ナイフが芽衣に到達する前にナイフは不可視の壁に弾き飛ばされる。



さて、ビルに突入した俺達はと言うと、まず、このビルには俺達以外には海道達しか居ないようなので直ぐに居場所を特定することが出来た。場所は、3階である。エレベーターは3階を表示していたので、階段を使って上に上がることにする。エレベーターが降りてくる時間が勿体ないからである。俺達が、海道達が居る部屋に飛び込むと、床に血貯まりの中に倒れている椿さんと、海道の部下か芽衣ちゃんに襲いかかろうとしていた。俺は、グラムに、


「グラム、奴等を全員結界に閉じ込めろ!」


「了解なの!」


グラムは直ぐに俺の言ったことを実行してくれたようで、芽衣ちゃんに向かっていたナイフは、グラムの結界に阻まれることになった。


「ご主人、あの子を捕まえているから密着してて結界に閉じ込めることが出来なかったの。」


「わかった!哮天犬、芽衣ちゃんを助けてやれ、その後、グラムの結界に閉じ込めろ!」


「わん!」


「わかったの!」


グラムと哮天犬の2人は、俺の言ったことを実行に移す。さて、問題は椿さんの方だが、


「しっ、神月さん。椿さんが…………。」


海道の手下から解放された芽衣ちゃんが椿さんに駆け寄ろうとするが俺が


「近寄るな!」


少し怒気を強めて言う。芽衣ちゃんはビクッとなり涙眼になるが、俺は哮天犬に目配せをすると哮天犬が芽衣ちゃんに体を擦り寄せる。

俺は、椿さんの状態を確認する。意識はないがまだ呼吸は止まっていない。


「玉兎さんは救急車を、爺さんは警察に連絡してくれ!」


「ああ、任せろ!」


「しっ、新月さん。椿さんは大丈夫なんですか?」


「玉兎さん!今は一刻を争うんだ。言われた通りにやることやって!」


「はっ、はい!わかりました。」


「この状況を読めんとは、これではこれから先、苦労するのぅ。」


玄羅の独り言であった。

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