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完結 私は先輩に何を求める?  作者: くと
プロローグ
3/33

きまぐれ

[おっすー」


急に化学準備室の扉が開き、女子生徒が1人入ってきた。


「お、君もしかして新入部員?」

「いえ、見学に来て」

「あー、春が言ってた子ね。どう?自然科学部は」


 なんだか、賑やかな人だ。髪も男子より少し長いくらいだし、快活といった印象を受ける。


「いや、まだ考え中です」

「そっか、そっか、春がかわいい子て言ってたから、どんな子かと思ったけど、ちっちゃくてかわいいね」


 確かに目の前の先輩は、私より少し背は高いけど、大して身長差はないと思う。佐保先輩と並ぶとやっぱり小さいし、私より少し高くて春先輩より少し低い。そんなところだろうか。


「彩、自己紹介してないわ」

「あ、そっか。私は2年の川原彩。よろしく」

「1年の高田咲です」


 川原先輩は自己紹介を終えると、長机の椅子ではなく、部屋の奥の大きめの机のところにある椅子にドカッと座った。


「で?君はこの部活に入って何がしたいのかね?」

「え?」

「やめなさい。高田さん、困ってるわ」

「えー」


 うん、春先輩を変わった人って言ったけど川原先輩のほうが変わってるかもしれない。まあ、変わってるというか子供っぽいというべきなのか。


「それで、どうよこの部活」


あ、そのまま話続けるんですね。


「どうって…」

「見学した感想だよ。昨日、春が案内したんだろ?」

「なんか、変わった部活だな。と思いました」

「えーそれだけ?」


 どうかと聞かれたら、変わった部活というのが感想だ。少なくとも、自然科学部という名前から想像する部活とは大きく異なる。今だって佐保先輩、川原先輩と雑談しているだけで、これが部活動ということは意識しないと忘れてしまいそうだ。


 そうこうしているうちに、再び扉が開かれる。


「みんなお疲れー」


「おお、春。待ってたぞー」


 春先輩が入ってきた。どうやら掃除当番は終わったようだ。


「あ、咲ちゃん。また来てくれたの?」

「こんにちは」


 春先輩は私に気づくと、こっちに駆け寄ってくる。すごく嬉しそうだ。そこまで嬉しそうにされると、来てよかったとすら思える。


「今日はどうしたの?また、パン食べに来たの?」

「いえ、そんなに食い意地はってません。普通に見学です」

「そっか、あ、ちょっと待ってて」


 そう言って春先輩は冷蔵庫の方へ何かを取りに行った。


「はい、プリンどうぞ」

「…ありがとうございます」


 なんだろう、餌付けされてるみたいだ。別にお菓子を食べに来たわけではないのだけど、春先輩を横目で見ると、にこにこしながら私がプリンを食べる様子を見ている。まあいいか。


「彩、私のアイス知らない?」

「あ、この前食べちゃった。てへっ」

「ねじるわよ」

「何を!?」


 変わった部活。そういう印象だったけどもう一つ付け加えよう。賑やかな部活だ。春先輩はこの空間を守りたかったのだろう。だから頑張って勧誘をしてた。そうして私も誘われた。でも悪い気はしない。現状を変えるために行動ができることはきっとすごいことなんだろう。私にそんな努力は出来ないと思う.


「ねえ、咲ちゃん」

「なんですか?」

「一緒に部活してくれない?」


 私は、そもそも部活をする気がない。だから入部するなんてことはない。いままでずっと同じようなことをして変わらない日々を過ごしてきた。それを悪いこととは考えていない。でも、なんとなく春先輩ともっと一緒にいたいと思えた。いつか、離れる時が来ることは分かっている。それでも、もう少し話がしたいと思った。


「はい、ぜひ入部させていただきます」


 どうせ暇なんだ。

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