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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

悪役令嬢は婚約破棄から女王へと成り上がる・訂正版

「マリアンヌ、お前との婚約を破棄する。これは決して覆すことの出来ない決定事項だ。もう既にお前の父親にも我が父である国王にも書類を送ってある」

 学園で行われたパーティー会場で第二王子カイセルが婚約者である。否、婚約者であった、マリアンヌに対してそう残酷な言葉を告げた。


 そんなカイセルの隣には小柄な少女が抱き着くように寄り添っていた。


 その少女の名前はマリア。元は孤児であったが、彼女に宿る膨大な聖なる魔力を見込まれ、学園に特待生として入学した100年に1度の美少女だ。マリアは小柄で儚げで男心をくすぐる動作であっという間に第二王子や騎士団長の息子、魔導士団長の息子に取り入り、魅了していった。正に魔性の女である。もちろん、そんなマリアをよく思ない人間は非常に多い。その為毎日のように嫌がらせが行われ、遂には暴漢に襲われた。もし、そうもし偶然あの場所に第二王子とその護衛達がいなかったらマリアは汚され犯され売られるか殺されていただろう。


 そして、様々な状況証拠とマリアの証言から、その主犯として上がったマリアンヌは今、第二王子の手によって婚約破棄されると共に、今までの罪を償わせられようとしていたのであった。


「どうしてですか、カイセル様、私は何故婚約破棄をされるのでしょうか?」

 マリアンヌはさも当然のようにそう言い放った。一切の反省も言い訳もせず。自分に最大に自信を持ち言い放ったのだ。

 その余りの不遜な態度はカイセルの逆鱗に触れた。


「何故、何故?といったか?ふざけているのか、お前が今までマリアに行ってきた様々な嫌がらせやってないとは言わせないぞ」

 カイセルは怒鳴った。マリアを愛したカイセルにとってマリアンヌは婚約者というマリアの愛を邪魔する、障害であり、マリアに嫌がらせを行った悪女であったからだ。


「いいや、やっていませんわ。何度でも言ってあげましょう。私はやっていませんわ」

 カイセルに怒鳴られてもなお、マリアンヌは一切動じることなくそう言い切った。その余りにも堂々とした態度はその場にいた人から見れば、マリアンヌは無実ではないかと思ってしまう程のものだった。ただマリアンヌがマリアを虐めたというのは本当であった。部下に命じて嫌がらせをして暴漢を雇ってマリアを襲わせたのもマリアンヌであった。

 ようは第二王子は何一つ間違っていないのだ。

 にもかかわらず、そんなマリアンヌの堂々とした態度は当たり前だが第二王子・カイセルの怒りに油を注ぐこととなった。


「ええい、ふざけるな、しらばくれおって、おい騎士よ。こいつを取り押さえよ」

 カイセルが頭に血管を浮かべて怒鳴る。が、しかし、騎士は誰も動こうとしない。それもそのはずだ、一般の騎士には公爵令嬢であるマリアンヌを取り押さえる権限など持ち合わせていないからだ。

 もしも下手をして怪我をさせた終いには首が物理的に飛んでしまう。


「何をしている、騎士よ、動け、動け。あの悪女を取り押さえろ」

 カイセルが怒鳴り散らすがやはり騎士は誰も動かない。

 そう、騎士は動かなかった。代わりに動いたのは学生であり騎士見習いであり騎士団長の息子であるマッシュだった。彼もまたマリアに恋する一人。マリアが虐められてると知りマリアンヌに対して怒り心頭であった。


「騎士いや、お前ら無能共が動かないのであれば、俺が動こう」

 マッシュはそう言い放つと、大股でマリアンヌに近づいた。

 そして、マリアンヌを拘束するために腕を掴もうとした時だった。


 ドン


 マリアンヌが元々かなり近くにいたマッシュに身体が密着するぐらい近寄って身体を密着させるとマッシュの胸を思いっ切り突き飛ばした。

 もちろん、身体を鍛えているマッシュにとってはマリアンヌという身体を鍛えていない令嬢の細腕に突き飛ばされるほどやわではない。むしろ、突き飛ばそうとしたマリアンヌの方が反動で後ろに倒れた。

 そう、倒れたのだ。


 ゴツン


 と鈍い音を立てて床に頭を打ち付けるマリアンヌ。

 もちろん床にはカーペットがしいてあるがそれなりに硬い。

 それに頭を打ち付けたマリアンヌは奥歯に仕込んでおいた、気絶薬を噛み砕き、気絶した。


 ――――――――――


 さて冷静に状況を第三者視点で判断してみよう。

 今、第二王子・カイセルが婚約者であり公爵令嬢のマリアンヌに対して、平民の娘に嫌がらせをしたという理由で婚約破棄をした。

 そして、平民の娘に嫌がらせをしたから捕まえろと護衛の騎士に命令をした。

 しかし、当たり前であるが護衛の騎士は動かなかった。

 だから、騎士団長の息子であり見習いながらも騎士である、マッシュがマリアンヌを捕まえようと動いた。

 そして、マリアンヌを捕まえようと迫った後、嫌がるようにしているマリアンヌに身体を密着させた。そして、抵抗の為に手を突き出したマリアンヌを突き飛ばして身体を床に叩きつけて気絶させた。


 こんな状況を見て、誰がマリアンヌが悪いと思う?


 むしと、平民の娘ごときで重要である婚約を勝手に破棄して、平民の娘ごときで公爵令嬢を捕まえようとした。罪人にしようとした。そして、最後は曲がりなりにも騎士であるマッシュが第二王子という立場のカイセルに命令されてか弱い公爵令嬢に怪我をさせた。

 誰がどっからどう頑張ってみても貴族にとって、悪は完全に第二王子側だ。

 そうなると第二王子・カイセルの派閥はどうなる?信頼ががた落ちだ。逆に公爵令嬢であるマリアンヌは同情される、優しくして貰える。そして、第二王子を含む王家に対して怨みを持つ家の一つとなる。


 そう、それこそが悪役令嬢・マリアンヌの計画だった。

 計画第一段階・婚約破棄され、同情を集めるとともに、第二王子派閥の信頼を削ぐ。

 そして計画は第二段階に移行する。


 ―――――――――――


 気絶したマリアンヌは自分の部屋で目を覚ました。


「お目覚めですか、マリアンヌ様」

 そう言ったのは、元男爵令嬢であったが父親が不正と汚職に手を染めて挙句の果てに内乱を起こそうとしたため処刑されるはずだったメイド・セリカだ。

 処刑されそうになった所をマリアンヌに助けられ、心の底からマリアンヌを信頼して慕っている忠実なるメイドだ。少なくともマリアンヌはそう思っており、常にセリカを側に置き重宝している。


「ああ、起きたわ。にしてもあの気絶薬凄いわね。簡単に気絶出来たわ。また何か機会があれば使えそうですわね。まあ今はいいわ、それよりもセリカ、計画は順調かしら?」


「はい、計画第一段階は成功しました。マリアンヌ様が気絶した後、クソ王子≪第二王子・カイセル≫と脳筋≪騎士団長の息子・マッシュ≫とで口論になり、それを火に油を注ぐ感じで他のハーレムメンバーが口を出し、更に醜い口論を始めました。これにより第二王子派閥及びその他のハーレムメンバーの信頼はがた落ちです、そして、そのスキを突き、中立派や元第二王子派閥やハーレムメンバーの派閥にこちら側に付かないかと手紙を出しました」

 淡々とセリカはマリアンヌに告げた。まるで、それが成功して当たり前のように。


「そう、上出来よ、じゃあ、第二計画を始めましょうか。愚かな父上首を洗って待っててくださいね」

 そう言うと、マリアンヌはニッと悪い笑みを浮かべた。


「はい、分かりました。マリアンヌ様。というわけで旦那様もとい哀れで愚かな愚者の元に向かいましょうか」

 主人であるマリアンヌと同じように、セリカもまた、メイドとは思えないほど悪い笑みを浮かべた。


「そうね、行きましょう」

そうして二人は第二計画の為、現公爵でありマリアンヌ父のいる書斎に向かった。


 ―――――――――――

 マリアンヌとセリカは現公爵であり、マリアンヌの父がいる書斎の目の前についた。周りには誰も居なかった。


「さて、一応の最終確認ね。セリカあの特別なお茶はしっかり飲ませた」


「はい、もちろんです」


「そう。じゃあ後は計画通り」

 マリアンヌはそう小声で言った後、スイッチを切り替えた。今から自分の父親を騙し、殺すために、ひたすらに父親の神経を逆なでする自分へとスイッチを切り替えた。


 コンコンコン


 セリカがドアをノックする。


「セリカです。マリアンヌ様をお連れしました」


「そうか、入れ」


「失礼します」

 セリカがそう言い、ドアを開けた。


「お父様、ごめんなさい、婚約破棄されてしまいました。私に魅力が無いせいで、本当にごめんなさい」

 ドアを開けてから入ってそうそう、マリアンヌは父親に泣きついた。その姿はまるで頭の足りない子供のようであった。

それを見た現公爵はキレた。


「ふざけるな!何がごめんなさいだ、何が私に魅力が無いだ。ふざけているのか。今回の婚約破棄が我が家にどれだけの損害をもたらすか知っているのか。そして、どれだけ事後処理に時間がお金がかかるか知っているのか?」

 現公爵は娘に対して全力で怒鳴り声を上げた。それこそ頭に血管が浮き出るくらいブちぎれて怒鳴った。


「えっと、あの、どれくらいですかね?」

 全力で現公爵の神経を逆なでするように、少しもじもじっとした感じで、下を向きながらマリアンヌは言った。


「は?は?は?は?は?何だ、そのふざけた態度は、このクソ娘が~~~~~~」

 現公爵はそう怒鳴ってマリアンヌに殴りかかろうとした。その時だった。


 バタン


 急に倒れたのだ。


 なんで、倒れたかというと。

 高血圧だ。


 ようは怒り過ぎたのだ。自分の娘に対して。まあ、もちろん、普通はその程度で倒れはしない。しかし、マリアンヌはメイドであるセリカに命令して予めストレスを軽減させるお茶と偽って低血圧の人の為によく使用される。飲むと血圧が跳ね上がる薬という名前の毒のお茶を飲ませていたのだ。


「さてと、仕上げとしますか。さてとお父様、いえクソ無能聞こえていますか?」

 マリアンヌは倒れている現公爵であり父親を足蹴りしながらそう罵った。


「てめ、マリアンヌ。早く・・医者を・・・よ・べ」

 高血圧で倒れてもなお、その傲慢で強靭な精神は意識を保たせた。


「嫌ですわ、お父様、なんで私が医者を呼ばなければならないのですか、だって私はお父様の事が心の底から大嫌いですもの、本当に死ねばいいですわ」

 父親の頭に足をのせてマリアンヌは言い放った。


「ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな、誰が育ててやったと思ってる・・・ん・・・だ・・・」


 バタン


 マリアンヌの言葉を聞き激怒し、起き上がり、マリアンヌを殴ろうとしたが、ストレスと薬のせいで脳に急激な負担がかかり脳の血管が詰まった。

 そして、現公爵であり、マリアンヌの父親は死んだ。


「ハハハハハハハ、上手く行きましたわ、ええ、本当に上手くいきましたわ、ああ。敵は討ちましたよお母さん」

(マリアンヌのお母さんは既に死んでいます。理由は夫(マリアンヌに毒殺された公爵様)がストレスが溜まっていた時の情事で首を絞めて殺したからです。

 不幸というべきか、幸いというべきかマリアンヌのお母さんの身分は貴族の中でも低いほうであり。公爵という権力でゴリ押してなかったことにしました。だけど、噂は流れてしまい、貴族で彼と結婚したいと望む人はいなくなりました。)


「そうですね。マリアンヌ様。きっとマリアンヌ様のお母様も天国で喜んでいます。ではこの公爵家をマリアンヌ様のものにしましょう」


「そうね」


 そう言ったマリアンヌの顔は恐ろしいくらい晴れやかで歪んでいた。

 ―――――――――――


「誰か、医者を医者を呼んでください。お父様が倒れましたわ」

 マリアンヌは涙を浮かべながらドアを開けるとそう叫んだ。もちろん演技である。心の中では大喜びしている。


「どうしたのですか、マリアンヌ様」

 その声を聴き一人のメイドが駆け付ける。


「お父様が倒れたの。急にお話をしていたら、倒れたんです。早く早く医者を医者を」


「お父様ということは公爵様がですか。それは大変です。今医者を呼んできます」

 そう言うとメイドは慌てて医務室に医者を呼びに走った。


 ――――――――――

 10分後

 ――――――――――


 医者が到着し公爵様の所に駆け寄り診断を開始した。


 ・・・・・・・


「どうですか、お医者様。お父様はお父様は助かりますか」

 マリアンヌは涙を浮かべて医者に質問した。その姿は心の底から父親の身を案じる心優しい娘そのものであった。


「すみませんが公爵様はもう、亡くなっております」

 医者は公爵の脈を眼を身体の状態を確認してそう告げた。


「そんな、お父様が、お父様が・・・う・・・う・・・う・・・」

 それを聞いてマリアンヌが更に泣き出す。もちろん演技である。実際の所は自分の手で本当に死んでいるか脈を確認し、死んでいると分かっていたのだ。その上で同情を誘うためにわざと泣いているのだ。


「何を泣いているのですか、マリアンヌ様。先ほど公爵様にもし、自分に何かあればこの公爵家を託すと言われたではありませんか」

 そう、セリカがマリアンヌに強く言った。

 もちろん、嘘である。公爵はそんな事一言も言っていない。

 しかし、その事実を知るのは、マリアンヌとセリカのみ、つまり。この場においてその嘘は真実となった。


「そうね、セリカ、そうだわ。私はお父様からこの公爵家を託されたわ。お父様亡き今、お父様の後を継いでこの公爵家を守れるのは私だけだわ。私はお父様の後を継いでこの公爵家の当主となるわ」

 涙をぬぐい、マリアンヌはそう高らかに宣言した。

 その姿は他の人からしてみれば、父の死を乗り越えてより強く成長し。公爵として父の後を継ぐ素晴らしい姿であった。

 ただ、実際は父を嵌めて毒殺し、自分が公爵家の当主になる為にひたすらに猫を被った。恐るべき悪女であった。

 ――――――――――


 マリアンヌが公爵家を継ぐと宣言して一日後。

 マリアンヌは正式に公爵家を継ぐことを認められた。

 もちろん、普通はそんな早く認められはしない。じゃあ何故こんなにも速く認められたか?それに3つの理由があった。

 まず最初に公爵には娘が8人いたが、マリアンヌ以外は全員6歳以下と幼かった為、マリアンヌ以外後を継ぐことが可能な者がいなかったこと。

 二つ目は、マリアンヌが公爵家の後を継ぐというのに正式な決定権を持つ王家が、あの婚約破棄騒動でマリアンヌに多少の負い目を感じていたため。

 そして、三つ目は。マリアンヌが公爵家の当主になることに非常に積極的だった為だ。

 以上の理由で本来は1週間から1ヶ月かかる当主交代が1日で行われた。

 そしてマリアンヌの計画は第三計画に移行する。

 ―――――――――――


「さて、セリカ第二計画は成功、次は第三計画である派閥集めを行うわよ」


「はい、分かっておりますともマリアンヌ様、では、今のところの我が連合に参加をしてくれる派閥を紹介します」


「ええ、お願いするわ」


「はい、では、まず最初に騎士団長の息子・脳筋の元婚約者であるエリイナ様の父親であり当主カリリス様含めその派閥である。北方面の3割の貴族を支配する中規模派閥・カリリストマス派閥。

 次に、元々こちら側に揺らぎかけていましたが。第二王子・ゴミクソの婚約破棄を見て完璧にこちら側についてくれた、第二王女・マリリン様の率いる女性貴族中心の大規模派閥・薔薇百合。

 そして、魔導士団の副隊長が率いる。小規模派閥・魔法千覇。ただし、この魔法千覇は今の団長が嫌いで彼を引きずり落して自分が団長になるためにこちら側についてくれました。小規模ですか。魔法攻撃に非常に特化しており第五計画の時には非常に役に立つと思います。

 後は元第一王子の後ろ盾をしていた派閥をいくつか第五計画を伝えるという形で引き入れました。もちろん裏切らないような人物のみに第四計画は伝えてあります。こちらは今の所は小規模派閥が幾つかある程度ですが、第四計画実行時には全面的にそれを押し出して残りの元第一王子派閥を引き入れますので。おそらくですが大規模派閥2つ分までいくでしょう。

 そして、最後は元々我ら公爵家に使えている大規模派閥・純正貴族です」


「なるほどね、分かったわ。そうなるとこちら側に引き入れたいのは、・・・そうね・・・まずは第四計画の為にも正教会の派閥。そして、第五計画の為にも騎士団の方の派閥もいくつか引き入れたいわね。後は・・・そうね・・・よし、取り敢えずは正教会と騎士団の派閥を増やした後、中立で日和っている派閥共、後は一匹オオカミを気取ってる貴族にエサをぶら下げて一気に引き込みますか。というわけで、セリカ正教会に行くわよ」


「はい、分かりました。マリアンヌ様」


 そして、マリアンヌとセリカは防音能力の非常に高い元父親の部屋を出た後、護衛とメイドに執事と今年6歳になる妹を引き連れて正教会に向かった。


 ――――――――――


 マリアンヌは王都にある一番大きい正教会に入った後シスターにこう言った。


「私の妹が聖女になったわ」


 と


 もちろん、嘘である。

 だけど本当である。

 つまり、どういう事かというと、よくある事なのだ。


 貴族が正教会に自分の娘や妹を連れて聖女になったと言い、莫大な寄付金を払うとともに、正教会の持つ権力を聖女というのを通して借りるのはよくある事なのだ。

 もちろん、それを聞いたシスターは全てを理解した。


「それは、それは。おめでとうございます!新しい聖女様の誕生ですね。今教皇様を呼んで参ります」


「ええ、よろしく頼むは」


 ――――――――――

 そして聖女となったマリアンヌの妹は聖女としての教育の為に、聖女という名前のお飾りとなる為に別室に連れていかれた。もちろん、悪いようにされる訳ではない、美味しい食事にフカフカのベットを用意されてから聖女としていかに民衆を喜ばせるか。笑顔を振りまいて、強烈な信仰心を生み出させれるかのレッスンが行われるのだ。(今でいうところのアイドルです)

 ―――――――――――


「教皇様。こちら寄付金となります」

 マリアンヌは控えている騎士に、人が一人丸々入るくらいの大きな袋に入った金貨の山を持ってこさせて教皇の間にある机の上に置いた。


「これはこれは、ありがとうございます。マリアンヌ様には神の導きと幸運がきっと訪れることでしょう」

 教皇もとい、初老の老人はしわくちゃの顔で人の良さそうな笑みを浮かべてそう告げた。しかしその目は袋に入った金貨の山に釘付けだった。ようは今の教皇は俗物であったのだ。


「そうですね。神の導きと幸運はきっと私に訪れますわ。というわけで、教皇様。私の可愛い妹であり聖女である彼女を認めて貰う為に、正義心の強い神父様を付けて下さい。いいえ、それだけでは不十分ですわね。貴族や商人の息子であり無駄に権力のある欲に溺れた神父様方々もつけてくださいな。私の妹の信仰深さできっと改心させてあげますわ」

 マリアンヌはさも当然のように言い放った。

 もちろん、改心させる気もなければ、自分の妹を認めてもらうために使うわけではない。

 目的はただ一つ、自分が扱いやすい駒を派閥を作るためだ。

 正義心の強い者は今の腐った正教会に王家に嫌気がさしていて、少し唆せば簡単にこちら側につく。

 欲に溺れた者は欲に忠実である。だからこそ公爵家という大きな権力を持つ甘く大きな果実に簡単に食いついて、こちら側についてくれる。そうなれば簡単に正教会で派閥を作れる。

 そう、その二つの人間を教皇様がマリアンヌにつけてくれさえすれば。

 ・・・・・・・・

 暫く沈黙が続いた後、教皇はそのしわくちゃの口を開き言った。


「いいでしょう、すぐに用意しましょう」

 当たり前だが教皇は欲に忠実な人間であった。だからこそ、金貨の山を目の前に簡単にオッケーの返事を出した。


「ありがとうございます。教皇様、では、私はこれで」

 そうして、マリアンヌは正教会に新たな派閥を作り出すことに成功した。


 ―――――――――――


「お疲れ様です。マリアンヌ様、どうぞ紅茶です」

 教皇から良い返事を貰ったマリアンヌは一旦公爵家に戻り休憩をしていた。


「ありがとう、セリカ、でもまだ第三段階は途中だわ。次は騎士団に向かうわよ」


「はい、マリアンヌ様」

 そして、マリアンヌはお父様の元妾と騎士を連れて騎士団に向かった。


 ―――――――――――


 騎士団というのは全員が男である。

 また、騎士団には全員騎士という称号が与えられる。

 この称号には騎士道に乗っ取り清き精神でいなさいという意味が込められている。

 その為、騎士団は清き精神ということで風俗に行くことを禁止されている。というかお金で女性を買うという行為が禁止されている。

 もちろん、性行為自体は禁止されていない。しかし、風俗が禁止されているのだ。エロいことがしたければ自力で彼女を作るしかない。

 しかしながら、騎士団は大変多忙である上に主な職場は貴族街や王城だ。

 そんな場所にまともな出会いがあるか?否。ない。とどのつまり何が言いたいかというと、一部の彼女持ちや貴族で婚約者がいる場合等を除き騎士団は常にムラムラしているのだ。

 そして、そんな騎士団にマリアンヌは全員元平民であるが女性を見る目は確かなクソな父親が作った妾達を連れてきたのだ。

 つまりどういうことだ?こういうことだ?


「さあ、騎士団の皆さん取引をしませんか?何?簡単な取引ですよ。私の亡き父が作った妾達を彼女にしませんか?実はというか何というか、私は見ての通り女性です。そんな私に妾なんて要りません。しかし、だからといって彼女たちをいきなり公爵家から追い出すのも酷な話です。じゃあ、せめて、次の仕事を用意しようと思ったのですが、彼女達に出来るのは家庭レベルの簡単な家事と男性に奉仕することくらいです。さて?どうしようかと考えていたら。私のメイドが妾達に男を紹介してあげたらどうかと案をくれました。というわけで、私の思いついたのは、力が強くて、責任感があり、立派な騎士道を持ち合わせた。素晴らしい人達、そう貴方方騎士団です。というわけで、もう一度聞きます。私の亡き父が作った妾達を彼女にしませんか?」


 ・・・・・・・・


 因みに今集められたのは全員彼女のいない騎士団員だ。マリアンヌが彼女のいない騎士団員を集めよと公爵権限を使い集めたのだ。

 少し沈黙が流れる。皆余りにもいきなり過ぎる提案に戸惑い不安になったのだ。

 それを突き破ったのは一人の若い騎士だった。彼は勢いよく一人の女性に近寄ると膝をつき言った。


「アイリス覚えているか。俺だよ俺、アイクだよ。15歳の時アイリスが貴族に強引に連れていかれてからアイリスにもう一度会うために騎士団になったんだ。さあ、アイリスここで合えたのは運命だ。幼い時から言えなかったことを言おう。君が好きだ。俺と付き合って下さい」

 そう、ロマンチックに言った。何ともまあ、凄い偶然が合ったものだと言いたいところだが、違うのだ。計画通りなのだ。あらかじめセリカから騎士団の中にアイリスと深い関係にあるアイクという人物がいると教えて貰っていたのだ。


「アイク、アイクなのね、ええ、もちろんよ。喜んで」

 アイリスはそう言ってアイクに抱き着いた。


 そして、一組のカップルが誕生した。

 こうやって前例が出来てしまうと、後は超絶簡単だ。

 皆、我先にと好みの女性に告白をしだした。


 ――――――――――

 30分後

 ――――――――――


 マリアンヌが連れてきた妾達、総勢28人は全員騎士団の彼女となった。

 もちろん、騎士団の方が数は多いから。彼女を作れなかった人もいる。しかし、そんな人も安心だ。だって、別に騎士としての清き精神とか言うけれども、それには女を金で買うのは禁止と書いてあるけど。同じ騎士団の彼女と性行為に及ぶのは禁止されていない。更に更に、その友人にお金を払うのも禁止されていなし、騎士団が自分の彼女に生活費としてお金を渡すのも禁止されていない。


 つまり、そういうことだ。

 マリアンヌが連れてきた妾達は一部を除き、騎士団の専属娼婦兼家事担当となったのだ。


「マリアンヌ様、この度は本当にありがとうございました」

 騎士団が揃って、マリアンヌに頭を下げた。


「いえ、こちらこそありがとうございます。彼女達を幸せにしてあげて下さい。ただ、騎士団の皆さんの力が必要な時が訪れましたら力を貸してください」

 マリアンヌはそう言って頭を下げた。

 頭を下げるという行為を上の者が下の者に行うというのはその人達に対する最大限の敬意の一つであり信頼の証であった。


「分かりました。マリアンヌ様、我らの力が必要な時はいつでも声を掛けてください」 

 そんなことをされたのだ騎士団はマリアンヌに最大限の恩返しをしなければならなくなった。


「そう、ありがとう。勇敢な騎士団の皆さん、では、私はこれで」

 こうしてマリアンヌは騎士団に自分の派閥を作り上げた。

 ――――――――――


「さてと、取り敢えずは上手く言ったわね。こうなると私の評判も大分上がるでしょうし。後はゆっくり中立派閥や揺れている所を取り込んでいきますか」

 教会に派閥を作るというのは簡単なようで非常に難しい物である。何故なら聖女方式を行うには幼い自分の身内と莫大なお金がいるからだ。

 そして騎士団に派閥を作るというのはもっと難しい、というか不可能に近い。何故なら騎士というのは十分な給与が支払われているためお金にもなびかなければ、政治に興味関心が無いからそう言ったものに関わろうとはまずしないからだ。それなのにマリアンヌは騎士団の半数以上が参加する大規模派閥を作ったのだ。

 その手腕は交渉術は恐ろしい物であり。同時に他の貴族達にその手腕と交渉術は高く評価され認められていたのだ。


「そうですね。マリアンヌ様。では私はもう少しいくつかの派閥に手紙を出してきます」

そしてセリカは心の底から楽しそうな笑顔を浮かべて部屋を出た。


 ――――――――――


 マリアンヌが当主となってから1ヶ月後

 マリアンヌはそのカリスマ性と交渉術、そして、第二王子派閥によって婚約破棄され、酷い目にあわされたという同情心、第二王子派閥引いては王家を嫌っている。これらを武器にして様々な派閥を貴族を取り込んでいった。

 そして、マリアンヌの元にはこの国の約3割もの貴族が加入している大規模派閥、否。大連合が出来た。


 ――――――――――


「さあ、セリカ、大分派閥が集まってきたわ。それそろ第四計画に移行しましょう」


「そうですね。お嬢様、第四計画を始めましょう」


「ええ、始めましょう。私こそが、そう私マリアンヌこそがこの国を支配するために」


「では、今から派閥の各リーダーに計画の実行を伝えますね」

 そうセリカは言うと部屋を後にした。


 ――――――――――


 マリアンヌが国を盗るために行った計画はこうだ。


 第一計画で馬鹿な第二王子に公約破棄される。

 因みにこの婚約破棄の元となった平民の娘マリアはマリアンヌの手のものだ。マリアンヌが適当に見繕った孤児を第二王子とその他を取り込ませれるように教育したのだ。いや、正確に言えばセリカにそうした方が良いと助言をされ、とある孤児院にいる。この孤児が良いと助言を貰ったのだ。


 そして、第一計画で婚約破棄された後、第二計画では父親を殺して自分が公爵家の当主となる。

 公爵家の当主となればその力を使い、第三計画で自分の派閥を広げて大連合を作り上げる。

 第四計画では第三計画で作り上げた大連合を使って国王の引いては王家の悪評を広めて民衆をより多くの貴族を味方につける。

 そして、最後の仕上げとして第五計画で騎士団と魔導士団を引き連れて王城に突入し。王子の身柄確保と国王の殺害だ。


 因みに国の奪い方は簡単だ。

 今現在王家で継承権を持っている第二王子、第三王子、第四王子、第六王子の4人だ。

 それを全て殺す、もしくは幽閉した後、王様を殺す。そうすればこの国を支配する正当な権利を持つ者はいなくなってしまう。

 じゃあ、どうすればいい?

 王女に国王をやらせるか?

 それは無理だ。元々王女は女性という事で継承権を有していない。その為王として必要な教育を受けていない。

 じゃあ?誰がやる?国王の次に権力を持っている公爵家か?

 そう。公爵家だ。有事の際は公爵家が王を代わりに行うのだ。そう決められているのだ。

 ただ、今現在この国にある公爵家は4つなのだが、そのうちの二つの当主はかなりご高齢でとてもではないが、国王を出来る器ではない。

 となると残りは二つなのだが、片方の当主は年齢も30代と若く才能に溢れ武に優れていて、もう片方の当主は第二王子に婚約破棄された哀れな令嬢マリアンヌだ。

 この二つが上がった時に普通は誰もが前者を選ぶであろう。


 しかし、それは無理なのだ。


 何故ならば彼が支配する領地は王都からかなり離れた場所にあり、その場所は敵対国家である帝国のすぐ隣であり、日常的に帝国が仕掛けて来る小競り合いを解決させないといけないのだ。

 それが出来るのはこの国では才能に溢れて武に優れた公爵様しかいな。

 そんな人物を国王に引っ張れるか?

 無理だ。じゃあ誰がやる?一人しかいない、そう、マリアンヌだ。


 もちろん当たり前の話だが、マリアンヌが主導でこの国の国王を王子を殺しておいて大丈夫なのか?という疑問は浮かび上がる。

 それは大丈夫なのだ。何故なら多数の貴族がそれを認めるからだ。

 この国の国王は王子は腐っている。

 様々なクズエピソードは色々あれど、一番有名なのは。今は亡き第一王子の話であろう。


 今から10年以上も前の話しだ。


 元々は優秀で慈悲深い第一王子がこの国にはいたのだが、彼は平民の妾の子供であった。それ故に第一王子でありながら差別された。しかし、それでもめげずに勉学に武に励み、様々な貴族から認められて、後ろ盾になってくれる貴族も多数いた。


 そんな第一王子の母親はこれまた優しく勇気のある女性だった。そして、優しく勇気がある故に自分の息子を思い平民の身でありながら国王に自分の息子の扱いを改めて下さいとお願いしに行き、平民如きが口答えするなと処刑された。


 それが行われた時、第一王子は6歳であった。


 そして、それを知ってしまった王子は母親を殺された復讐と叫び、愚かにもたった一人で父親である国王にナイフを持って襲いかかり護衛の騎士に拘束された後、殺された。


 もちろんこの事件は国王の手によって隠蔽されて第一王子は賊に襲われて死んだことになっている。


 しかし完璧に隠蔽何て出来るはずもなく一部の貴族は知っている。もちろんそれを聞いて憤る貴族もいたがだから反乱を起こすかとなれば、起こせる貴族はいなかった。何故なら怖いからだ。反乱を起こして失敗すれば自分の首が飛ぶからだ。だから、心の内では怒り心頭であるが我慢しているのだ。

 でも、そういった貴族は大規模な反乱がおこるとなれば喜々として協力してくれる。そしてマリアンヌが腐った王を殺そうとそれを良きことだと許すだろう。

 もちろん、その他利権、利益の関係もあるが。

 今現在国王は王家はかなりの財を有している。

 そんな国王が死ねばその財はどうなる?マリアンヌに行くか?いや、違う、反乱の協力した貴族に貢献度に応じて割り振るのだ。

 そういうエサがあれば、王が腐っていても傍観している貴族達は喜んで協力してくれる。

 ほら?こうやって色々と考えてみれば国王を殺しても大丈夫なんだ。一切の問題がないのだ。

 ――――――――――

 セリカが第四計画を伝える為に派閥のメンバーをほぼ全員集めた。

 ――――――――――


「単刀直入に言う。私は今からこの国の国王を殺す」

 マリアンヌは一切の躊躇いを持たずにそう、大きくよくとおる声で宣言した。


 周りの反応は3つに分かれた。

 1つ目はいきなりの出来事に戸惑う者。

 2つ目は無謀だと不安になる者。

 最後の3つ目は、ようやくかという安堵や王を殺し次の国を自分たちが作って行くという期待だった。

 そして最後の3つ目の反応が一番多かった。


「この国の国王を腐っている。王子も腐っている。このままではこの国は他国に滅ぼされて終わりだ。だから反乱を起こすのよ。私達が新しい国を作るのです。大丈夫よ、この反乱は絶対に成功する。

 ほら、皆自分の周りを見渡してみて。

 ・・・・・・・(そうマリアンヌに言われて周りを見渡す派閥メンバー、そして、彼ら、彼女らは気が付いた。この派閥メンバーがどれだけ凄いかを)・・・・・・・

 分かったかしら?

 ここにはこれだけの貴族がいるわ。

 つまり。これだけの貴族がこの腐った国を変える、いや、救おうと立ち上がっているのよ。

 成功しないわけがないでしょう。

 さあ、今こそ反乱を起こすのよ。実の息子を平気で殺し、自分は贅沢三昧でこの国の事を全く持って憂いていない愚王を殺せ。血祭に上げて民衆の前で晒すのよ。

 身勝手な理由で私の婚約を一方的に破棄したクソったれの王子を愛した平民の娘と共に地獄に送ってやるのよ。

 さあ、私達なら出来る。この派閥いや、大連合・メセアなら出来る。さあ。立ち上がれ、そして、叫べ。この国を救うのだと。さあさあさあさあさあさあさあ」

 マリアンヌのその気迫に押されて何人かが声を上げた。

 それに釣られて他の人も声を上げた、それは、やがて全員に届き。

 皆が声を上げた。


「「「この国を救うのだ」」」

「「「この国を救うのは我々だ」」」

「「「この国を変えるのだ」」」

「「「そして、この国に巣食う膿を排除するのだ」」」


「そう、その調子よ。私達がこの国を変えて救って豊かにするの」

 マリアンヌの言葉が飛ぶ。


「「「我々がこの国を変えて救って豊かにさせる」」」

 それを全力で皆が復唱をする。


「そう、そうよ。これが出来るのは私達しかいないのよ」

 マリアンヌの言葉が更に飛ぶ。


「「「我々だけがこの国を救えるんだ」」」

 皆が力を込めてそう叫ぶ。


「そうよ。だから皆一致団結して頑張るわよ~~~~~」

 マリアンヌが今日一番の大声を上げた。


「「「「「オ~~~~~~~~~~~~~~~~」」」」」

 同じように皆今日一番の大声を上げた。

 そして、大連合・メセアは団結をした。


 ――――――――――


 そして、大連合・メセアは動き出した。

 最初に行われたのは、国王の悪評広めと王家の悪評を広めだった。

 国王は様々な悪事を働いて、権力に物を言わせて隠蔽して来た。

 それを、ありとあらゆる所に広めたのだ。

 貴族に魔導士に騎士に民衆に。それこそこの国の全てに国王の悪事を広めた。

 もちろん、その動きは簡単に王家にバレた。王家は反逆罪としていくつもの貴族を処刑しようとした。

 しかし、処刑は行われなかった?

 何故って?貴族が恐れ、騎士が恐れ、魔導士が恐れ、民衆が恐れたからだ。

 今の国の王は貴族、それもいくつもの貴族に自分の行った悪しき事を広められたからと処刑しようとしている狂った王だと。

 そんな王に従がえるか?そもそも、国王の悪事を知ってしまった民衆は国王に付き従えるか。

 従えるわけがない。従えたいわけがない。

 そうして、国王の力が減るのに比例するように反乱の波は国王を殺すという強い意志の波は各地へと広がっていった。

 そして、第五計画が始まった。


 ――――――――――


「セリア、上手くいきましたわね。第四計画・大連合・メセアの設立。そして、国王に不信感を抱かせて民衆に反乱の波を作り出す。ハハハハハハハ、本当に上手くいきましたわ。実際今の国王はクソ野郎ですが。無能ではない、この国を上手く統治して、貴族を御している。それなのに、こんな仕打ち。まあ、そう仕向けたのおは私なんですけどね。大体国王の悪事って言っても、平民の妾を取って気に触れれば殺害とか、ストレス発散と奴隷を買って殺すとか。自分に逆らった貴族を簡単に処刑とか。精々その程度ですのに、似たようなことをやっている貴族は山のようにいますのに。それこそ私の父だってね。ハハハハハハハ、本当に本当に愚かですわ」


「そうですね。お嬢様、さあ、第五計画・国落としを始めましょうか」

 セリカが恐ろしく歪んだ顔でニヤリと笑ってそう言った。ただ、マリアンヌはそれに気が付いていなかった。

 ―――――――――――――――

 そして、第五計画は行われた。

 ―――――――――――――――


【貴族街多広場】にて


「さあ、大連合・メセアよ。今こそ愚かな国王を殺すわよ」

 そう、マリアンヌが言った。(因みにマリアンヌは馬に乗ってます)

 その眼下には騎士団に魔導士団が勢ぞろいしていた。

 もちろん全員ではない。一部は国王の方に付いたり、戦いが怖くなり逃げ出したりした。

 しかしながら、大連合・メセアの集めた騎士団に魔導士団は全体の7割を超えていた。


「「「「「「オオオオオオオオオオ~~~~~~~~~~」」」」」」

 騎士団に魔導士団の雄叫びが上がった。


「良い声ね。さあ、行くわよ。突撃~~~~~~」

 マリアンヌの命令で騎士団に魔導士団は王城に向けて進軍を開始した。


 その道を止める者は誰もいなかった。

 否・誰も止められなかった。


 そして、王城の前に着いた。

 王城の扉は強固に閉じられていた。


「魔導士団、おやりなさい」

 マリアンヌの命令で魔導士達は詠唱を始めた。


「「「「「我が手に破壊の力よ集え、そして、放て、眼下に在りし、この扉を破壊したまえ。破壊魔法・破壊弾」」」」」


 ドン


 今まで一度も破壊されたことの無い強固であるはずの王城の扉は魔導士団の集団詠唱魔法の一発で破壊された。


 ドンドンドンドンドンドン


 ワザと大きく音を立てて騎士団が王城に進軍を開始する。


 その音はさながら死の宣告のようで、王城に残っていたメイドも貴族も執事も庭師も料理人も傭兵も騎士も魔導士もその音を聞いたら恐れ一目散に逃げだした。何故ならそれだけ気迫が恐怖あったからだ。想像してみて欲しい。屈強な戦士が足を揃えてワザと音を出して進んでいるのだ。それの邪魔を出来るか?出来るわけがない?そんなことしようものなら殺される、いとも簡単にあっけなく殺される。そう皆の脳裏に刻み付けた。


 ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン


 激しく音を立てて騎士団は進んだ。魔導士団も進んだ。

 そして、誰にも邪魔されることなく王の間にたどり着いた。


「さあ、王を殺すわよ、ドアを開けなさい」

 マリアンヌの命令で騎士団がドアを開けた。

 そこにいたのは、全てを諦めて堂々と玉座に座っていた国王だった。


「ようやく来たか」

 死を覚悟した国王はそう口を開いた。


「ええ、来たわ。どうやら死の覚悟は決めているらしいね」

 マリアンヌが冷たくそう言った。


「ああ、余の負けだ。一思いに殺せ」

 国王は潔く負けを認めて目を瞑った。


「分かったわ。その潔さに免じて今ここで殺してあげるわ」


 マリアンヌはせめてもの慈悲でそう言った。

 何故なら今ここで国王を殺さなければ、国王は民衆の前に引きずられて石などを投げられて放置されて餓死、もしくは出血死するからだ。その他、拷問されたり。民衆の前でギロチン処刑されたりと。少なくとも地獄のような目には合ってしまう。

 そして、マリアンヌは腰に差してあったミスリル製の軽く切れ味の高い剣を取り出して国王の足に剣を突き刺した。


「あああああああああ」

 国王の悲鳴が王の間に響き渡る。


「国王様、いえ、元国王。自分が楽に死ねると思ってるんですか?今から貴方は民衆の前に引きずられて石を投げられ。糞を投げられ、卵を投げられ、罵られて地獄を見た後、手足を切り落して、最後はギロチンですよ。まあ。それだけすれば民衆も貴族も納得するでしょう。その代わりと言っては何ですが、貴方の息子達は生かしてあげますよ。もしかしたら死んでいた方が幸せだったかもしれませんけどね、ハハハハハハハ」

 マリアンヌは笑いながら残酷な真実を国王、否、元国王に告げた。


「さあ、これを今から勝利の証としてこの愚かな元国王を民衆に晒すわよ。騎士よ。持っていきなさい」

 マリアンヌの命令で騎士が国王の国の中に無理やり気絶薬を飲みこませて気絶させた後、箱に入れて担ぎ上げる。


「さあ、新たな女王の凱旋よ。いくわよ」


「「「は」」」

 マリアンヌがそう命令を下すと騎士団と魔導士団は綺麗に敬礼をした。

 ―――――――――――――――

 そうしてマリアンヌは悪しき王を打ち倒し、女王としてこの国のトップに立ちました。

 そんなマリアンヌの驚くべき所はその女王になる為の手段そして速さであった。

 元は第二王子の婚約者に過ぎなかったのに。婚約破棄され、その次の日に父親を殺して公爵家のトップに立ち、1ヶ月そこそこで派閥を集めて大連合。メセアを生み出し、国王を殺した。

 そうして最後には女王に成り上がった。

 マリアンヌという女性、いや、元悪役令嬢はその名を一生歴史の書に残しましたとさ。


 めでたしめでたし


 ―――――――――――――――


 ※ここからは蛇足です。

 読みたくない人は読まないで大丈夫です。

 面白いと思っていただけらブックマーク、ポイントお願いします。


 ――――――――――
































 ――――――――――


 マリアンヌは女王になった。

 元々マリアンヌが大連合・メセアを作ったのと、マリアンヌ以上の適任がいなかったこともあり、簡単にマリアンヌは女王になった。

 何?王子はどうした?そんなもの監禁の幽閉だ。特に第二王子はマリアと一緒にド田舎の屋敷に詰め込んだ。多分今頃実はドSなマリアに死ぬほどキツイ目にあわされてるでしょう。


 ―――――――――――


【王城・マリアンヌの寝室】にて


「セリカ、思ったよりも女王の仕事ってのは大変ですわね。まあ、その分それなりにやりがいはありますしいいんですけど?よしと。今日の分の仕事は終わりましたわ。さてと、次の目標を立てましょう。そうねやっぱり次は世界征服かしら?私の器がこんな国の王女で収まるわけがないですわ。さあ、戦争の準備を始めましょう」

 マリアンヌが書斎の椅子に腰を掛けていつものようにセリカに話をしていた。その時だった。


 グサッ


 セリカが腕の中に隠していた隠しナイフでマリアンヌを刺した。


「ゴボ」

 マリアンヌの口から血が溢れる。


「セリカ、、、な、んで、、、」

 息も耐え耐えのマリアンヌはそう声を絞り出した。


「いや、何、マリアンヌ様は転生って信じますか?あ、実は私転生者なんですよ、そりゃもう、最初はビックリしましたよ。いきなり【ハナラブ】の世界に孤児として生まれたんですから。まあ、でも結果的には良かったですよ。こうやって、マリアンヌ様に拾われたんですから。あ、メイドごっこは中々楽しかったですよ。それに、本当は反乱を一人で身勝手に起こそうとして処刑されるはずの悪役令嬢如きが、私の手助けがあったとはいえ、国王を殺して。女王へと成り上がったっていう展開も超絶楽しかったですよ。いや~~~、流石に驚きましたわ。まあ?でも、マリアンヌ様とのおふざけもそろそろ飽きて来ましたしね。殺して私が成り代わるのも面白そうかなって」


 セリカはヘラヘラ笑いながら楽しそうに言った。

 そして、急にセリカの身体がグニャグニャに曲がって、変色してマリアンヌそっくりになった。


「あな、た、一体、なに、、も、、の」

 ずっと信頼して来たメイドが自分と同じ姿になる。それを見てマリアンヌは心の底から驚き恐怖して、声を絞り出し質問した。


「あ?実は私、自分が殺した人の姿になれる特殊能力を持ってるんです。いわゆるチートですね。まあ、言っても分からないか。だって。私が今こうやって完璧に変身出来たということはマリアンヌ様がもう死んでいるのだから」

 そうして、悪役令嬢でありながら女王まで上り詰めた、マリアンヌは殺された。


 ―――――――――――――――


 おや、このまま死ぬのは、ちと、面白くないな、せっかくだしのう。

 記憶を持ったままやり直してみよう。

 そしたら面白そうじゃ。さあ、儂を楽しませてくれよ悪役令嬢、いや。女王マリアンヌよ。

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[良い点] 計画的に女王になる計画は面白かったです。 [気になる点] 最後に主人公が殺されたのが特に物語として意味もなく読後感を悪くしただけだったのがもったいない。 読後感が悪くならない殺す理由か殺さ…
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