5話 白銀色の子守歌
5話 砂嵐
しろいのとくろいのが、荒れ果てた大地を進んでいると、
くろいのが突然立ち止まりました。
「くろいの、どうしたの?」
「しろいのあっちを見て。」
そう言ってくろいのは指を指しました。
くろいのが指を指した先を、見つめると砂煙のようなものが見えました。
「誰かいるのかもしれない。行ってみよう!」
しろいのとくろいのは、砂煙のようなものが上がる方へ歩いていきました。
だんだん近づくにつれ、しろいのとくろいのは砂煙のようなものがとても大きいことに気づきました。
「くろいの、石像さんが言ってたことおぼえてる?」
「うん、おぼえてるよ。
嵐さんは豪雨と暴風で大地を荒れ果てさせるって。」
そう言ってしろいのとくろいのは、砂煙のようなものを見上げました。
「もしかて、この中に嵐さんがいるかもしれない。」
「そうだね。話しかけてみよう!」
しろいのとくろいのは、砂煙のようなものの中に向かって話しかけました。
「嵐さん!ぼくはしろいの。こっちはくろいの。
もし、この中にいるなら返事をして!」
すると、砂煙がおさまり、大きな灰色のなにかが姿を現しました。
そして、大きな灰色のなにかはしろいのとくろいのにを見下ろしてとても低く唸るような声で言いました。
「俺は嵐。お前たちは何故俺の元へ来た?」
嵐の声に、しろいのとくろいのは怯えながらも答えました。
「ぼくたちは、夜の日を創造している月と星を探してるんだ。
嵐さん、もし、なにか知ってたら教えてよ!」
答えを聞いた嵐は顔をしかめながら、さらに恐ろしい声で言いました。
「月と星を探しているだと。
やっと、手に入れた月と星をお前たちは俺から奪おうたいうのか!」
すると、おさまっていた砂煙がふたたび巻き起こり、
砂煙が空へと伸びて灰色の雲が空を覆い始めました。
空が灰色の雲に覆われ、辺りは薄暗い闇に包まれました。
そして、灰色の空から雫が落ちてきて、強い風が吹き始めました。
しろいのとくろいのはお互いを支えながら、嵐に向かって叫びました。
「ちがうよ!月と星を奪いに来たんじゃないよ!
ただ、夜の日がまた来て欲しいだけなんだ!」
「やはり、俺から奪うのではないか!」
そう言って、さらなる豪雨と暴風がしろいのとくろいのを襲いました。
「しろいの!ぼくもうだめだよ。飛ばされちゃう!」
「くろいの!ぼくは君を離さないから!」
しろいのとくろいのが吹き飛ばされそうになったその時、
しろいのとくろいのを白銀色の光が包み、とても美しい歌声が響きました。
それは、子守歌でした。
美しい子守歌が、辺りを白銀色の光となって包みこむと、
砂嵐がおさまり始めて夜のような闇が広がりました。
闇の中、白銀色の光が空から降り注ぎました。
しろいのとくろいのが空を見上げると、そこには白銀色のなにかがいました。
白銀色のなにかは、微笑みしろいのとくろいのを一撫でしました。
「ねえ、くろいの。あれってもしかして、、、。」
「しろいの。きっとそうだよ!」
そして、砂煙の中にいた嵐に向かって歌うような声で話しかけました。
「嵐さん、わたし達あなたと少しの間だけど、一緒にすごせてとても楽しかったわ。ありがとう。
でも、わたし達がいないと困ってしまうちいさなもの達がいるのよ。元いた場所へ帰るわ。」
白銀色のなにかがそう言うと、嵐はとても悲しそうにして言いました。
「月と星よ。貴女が帰ってしまったら俺はまた、1人になってしまう。」
「いいえ。あなたはひとりじゃないわ。」
そう言って、月と星は嵐を一撫して美しい歌声で子守歌を歌い始めました。
すると、白銀色の光が嵐を包み始めました。
嵐を包んでいた光がおさまると、
嵐は澄み渡る水をまとった翡翠色の姿に変わっていたのです。
「これであなたはひとりじゃないわ。
あなたは、豪雨と暴風を巻き起こす嵐から、恵みの雨と思いを運ぶそよ風に生まれ変わったのよ。
雨とそよ風さん、今のあなたなら昼の日も夜の日もみんなと一緒にいることができるわ。」
雨とそよ風は、澄みきった笑みを浮かべて言いました。
「月と星よ、ありがとう。
そして、連れ去ってしまってすまなかった。
貴女のおかげで俺は1人ではなくなった。
しろいのとくろいの、お前たちを怖がらせてしまってすまない。」
しろいのとくろいのは、頭を下げる雨とそよ風を見て答えました。
「雨とそよ風さん、ぼくたちは大丈夫だよ!」
「そうだよ、だから頭を上げて。
あなたが雨とそよ風さんに生まれ変わることができて良かった。」
雨とそよ風は頭を上げると、しろいのとくろいのをそよ風で包み込んでから空へと舞い上がりました。
「ありがとう!しろいのとくろいの。そして月と星よ!
これからは、恵みの雨とそよ風になってお前たちにまた会いに来る!」
そう言って、雨とそよ風は空の彼方へと行ってしまいました。
空の彼方を見つめていたしろいのとくろいのへ、
月と星は話しかけました。
「しろいの、くろいの、わたし達を見つけてくれてとても感謝しているわ。ありがとう。
ところで、これから森の方へ帰ろうと思うのだけど、あなた達も一緒に帰らない?」
しろいのとくろいのはお互いを見つめあってから、月と星に答えました。
「ありがとう!ぼくたちもあなたと一緒に帰るよ!」
「ええ。一緒に帰りましょう。」
そう言って、月と星はしろいのとくろいのを抱きあげて、
夜の日の空を駆けて行きました。
しろいのとくろいのが出逢った森へと帰ると、
月と星は、しろいのとくろいのを大地へと下ろして言いました。
「あなた達のおかげで、こうしてわたし達はまた、夜の日を創造できるわ。本当にありがとう。
また、どこかで会いましょうね。」
そう言って、月と星は夜の日を照らすために空の彼方へと行ってしまいました。
「ねえ、しろいの。一緒に夜の日を探してくれてありがとう。
君がいてくれなかったら、ぼくはずっとあの木陰から動けなかったよ。」
「ぼくこそ、ありがとう。くろいの。
きっと、ぼく1人じゃ夜の日を探せなかった。
君が一緒だったから探すことができたんだ!
これで、一緒に遊べるね!」
しろいのはそう言って、くろいのの手と自分の手を重ねました。
「うん!ぼくたち一緒に遊べるね!
しろいの、ぼく、君と出逢えて本当に良かった。
ぼくと友だちになってくれてありがとう。」
「友だち?ぼくたちもう親友だよ!」
「親友!うん、そうだね!」
そうして、夜の日を探して親友になったしろいのとくろいのは、いつまでも一緒に遊び続けました。
そんな2人を、石像、太陽、月と星、そして雨とそよ風は、
優しく見守り続けたのです。
しろいのとくろいのを読んでくださった読者のみなさま、本当にありがとうございます。
初めて投稿したお話でしたが、
みなさまに楽しんで読んでくださっていると思うと本当に嬉しい限りです。
感想なども伝えてくださると今後の励みになります。
これからも、少しづつではありますが、
お話を投稿していきますので、どうぞとよろしくお願いいたします。