4話 荒れ果てた大地
4話 荒れ果てた大地
湖では、くろいのが木陰で夕焼け色の空の方を見つめながら、しろいのが帰ってくるのを、じっと待っていました。
「くろいの。そんなに心配せんでもしろいのは大丈夫じゃ。すぐに帰ってくるわい。」
石像がじっとしているくろいのに話しかけました。
くろいのは木陰から、姿を現して言いました。
「心配、、、?ぼく、しろいののことを心配してるの?」
「なんと!お前は分からんのか?」
「どうして、石像さんは心配してると思うの?」
「そんなもの、お前を見ておれば分かるわい。
しろいのが行ってから、お前じーっと夕焼け色の空の方を見ておったろ。その時、お前の身体の中心がぎゅーっとならなかったか?」
「うん。くるしくて初めてだった。」
「それが、心配じゃ。相手のことを思うと苦しく辛く、相手の苦しみや痛みを自分自身のように感じて思うのじゃ。」
「ぼく、心配してたんだ。でも、なんでだろう?」
くろいのは、また、じーっとして考えていました。
くろいのがじーっとしていると、夕焼け色の空の方からなにかがやって来ました。
それに気づいたくろいのは、夕焼け色の空の眩しさを感じながらもなにかを見つめました。
だんだん近づてくるなにかは、大きな声で言っています。
「おーい!くろいのー!ぼくだよ、しろいのだよー!」
やっと声が聞こえ、姿が見えました。
くろいのは、影の中を出たり入ったりしながら、
しろいのがこちらへ来るのを待ちます。
しろいのはやっとくろいのがいる木陰の傍まで来ました。
「ただいま!くろいの!
ふふっ、出たり入ったりしてなにしてるの?」
くろいのは、木陰の中から半分だけ姿を出して答えました。
「おかえり。しろいの。
ぼくもよくわからないよ。」
「そっか。わからないのか。」
しろいのは優しい声でそう言うと、
大きな葉を持って水際までくろいのと一緒に歩いていきました。
水際まで来た、しろいのとくろいのに石像は話しかけます。
「よう帰ったのう。しろいの。太陽とは話せたのかのう。」
「うん!太陽さんとお話できたよ。
夜の日が来なくなったのは、月と星が嵐に連れていかれてしまったからなんだ。
だから、これから荒れ果てた大地を辿って嵐の元へ行くよ。」
「嵐の元へ、、、。そうか、十分に気をつけるんじゃよ。
嵐は、豪雨と暴風で大地を荒れ果てさせる。
お前たちじゃ軽くて飛ばされてしまうかもしれないからのう。
嵐が通り過ぎたのは、ここから夕焼け色の空を背にして進んだ所じゃ。」
「うん。石像さん、ありがとう!
くろいのと一緒だからきっと大丈夫!」
「石像さん、ありがとう。ぼくもしろいのと一緒だから大丈夫だよ。」
そうして、しろいのとくろいのは夕焼け色の空を背にして進み始めました。
少し歩くと、しろいのとくろいのは振り返りました。
「石像さーん!また、来るからねー!ありがとうー!!」
しろいのは大きな声で叫び、くろいのは木陰の中から、石像に向けて頭を下げました。
夕焼け色の空を背にしてしばらく森の中を進むと、
途中で折れている木や花、草や、荒れた土が見えてきました。
しろいのとくろいのは、それでも進み続けて、やっと森の中を抜けました。
森の中を抜けると、そこには太陽が言っていたように、荒れ果てた大地がありました。
木々は折れ、草花はなく、そこはただ、荒れ果てた大地が広がるだけでした。
「くろいの、こんな景色みたことある?ぼくは初めてだよ。」
「ううん。ぼくも初めて見た。これが、嵐がとおり過ぎた跡なんだね。」
「この跡を辿れば嵐の元へ辿り着く。行こう!くろいの!」
「うん!」
そうして、しろいのとくろいのは奥へと続く、嵐の跡を進んでいきました。