2話 湖
2話 湖
夜の日を探してしろいのとくろいのが森の中を歩いていると、大きな湖のほとりに辿り着きました。
とても喉が乾いていたしろいのとくろいのは、
水際まで行き湖の水を飲みました。
水を飲んでいると、どこからともなくしわがれた低い声が聞こえました。
「今日も良く晴れておる。お前たちもそう思わんかのう?」
しろいのとくろいのは、きょろきょろと辺りを見回し、声の主を探しました。
どこから聞こえてくるのか、
しろいのとくろいのが耳を済ませていると、
「ここじゃ、ここじゃよ。お前たち。」
と湖の中心から聞こえてきました。
しろいのとくろいのが、湖の中心を見ると、
そこには、所々欠けた石像が立っていました。
「誰かと話すのは久々じゃ。わしは湖の石像。お前たちは?」
「ぼくはしろいの。こっちの影にいるのはくろいの。」
「しろいのとくろいのか。見たまんまじゃの。」
「ぼくたち、夜の日を探してるんだけど、石像さんはどこに行っちゃったのか知ってる?」
そうしろいのが尋ねると石像は、答えました。
「夜の日がどこに行ったかは知らん。
じゃが、昼の日を照らしている太陽なら知っているかもしれんのう。」
「太陽?あの夕焼け色の大きなやつのこと?」
「そうじゃ。あれが太陽じゃ。」
しろいのは太陽を指さしながら、
「太陽にどうやって聞くの?太陽はお話できないよ。」
と言うと、石像は大きな声で笑い始めました。
「はっはっはっっっ。
お前たちは太陽が話せないと思っておるのか?
太陽は話せるさ、お前たちやわしのようにな。
昔は、よく話したものさ。」
「そうだったんだ。知らなかった。くろいのは知ってた?」
「ううん。ぼくも知らなかった。太陽が話せたなんて。なら、夜の日を照らしてる月や星も話せるのかな。」
くろいのが呟くと、石像は答えました。
「あぁ、そうじゃ。月と星も話せる。
今でも覚えておる、歌うようなとても美しい声じゃよ。」
「月と星も話せたんだ!
でも、どうやって太陽さんに聞きに行くの?」
「簡単じゃ。夕焼け色の空を辿っていけば丘が見える。丘を登れば、太陽の元へ辿り着く。」
石像がそう言うとしろいのとくろいのは、夕焼け色に染った空を見ました。
「石像さん、教えてくれてありがとう!ぼくたち、さっそく太陽さんの元へ行ってみるよ。」
「お前たち、太陽がいる丘は遮るものが何もない。
わしが思うにくろいのは影の中でしか動けないようじゃから、太陽の元へはしろいの、お前だけで行くことになる。
その間、くろいの、お前はここで待っておった方がええの。」
「遮るものがなにもないなんて。
石像さんが教えてくれなかったら、くろいのをつれてっちゃうところだった。
くろいの石像さんの言うとおりここで待ってて。
僕が太陽さんとお話してくるよ。」
「君、ひとりで行くの?」
くろいのは、不安そうにしろいのに尋ねました。
「そうだよ。心配しないで、かならず夜の日がどこにいるか聞いてくるから。」
そういって、しろいのはくろいのを近くの木陰までつれていき、夕焼け色に染った空の方へ歩いていきました。
くろいのは、ただじっと夕焼け色に染まるしろいのの後ろ姿を、見えなくなるまで眺めていました。