第25話 王都へ?
「ぬぐあ!?」(後の話との矛盾を発見)
「訂正します!!」
「グレイの発言にあった『アルス』→『あいつ』に変更。」
「いやアルス誰やねん!!!」
「本当にすみません……。」
料理とは食材の選択から始まり、火加減、調味料の量、調理法など多様な選択肢がある。そして料理は出来る人間と出来ない人間がいるものだ。いわゆる得意不得意だろう。出来る人間は簡単にやってのけるものだが、出来ないものは出来ないのだ。
「つまり何が言いたいかというと、王都までの道中での食事はグレイに任せたい。」
「その壮大な前振りいるか?」
「いる。様式美。」
「お、おう。リナのそういう拘り、一か月もパーティー組んでるけどやっぱりよく分からんな。」
「何でさー。」
心底不思議そうなグレイを前に、私は頬を膨らませる。前振りは壮大な方が誤魔化しやすいんだよー。しっかりグレイに要望は押し付けられたし、これがいいんだよ。
ふと思い出したようにグレイが口を開く。
「そういやリナは料理が苦手なんだったか? それでも簡単なものくらいは作れるんだろう?」
「……。えっと…、焼くのは出来るかな…。」
「…まさかとは思うが、それ以外は出来ないのか?」
「………。」
「うっそだろ。」
ふいっと横を向く。私は呆気に取られたグレイに言い訳をしていく。
「…焼くのはほら、簡単じゃない? でも煮たりすると…調味料とか水の量とか間違うんだよね…。」
「いや何で? そんなに難しくないだろ。」
「頭では分かってるんだけどさー、足りない気がしてついつい多く入れちゃうんだよねー。」
グレイよ。信じられないような顔をしないで欲しい。私だって何で? って思うくらいだもの。なんか、こう、分量を間違うんだよ。何でなのか私が一番聞きたいよ。
「そういうことだから、道中のご飯はよろしく。」
「別にいいが…そこまで酷いのか…。」
「…。……やめてー、そんなめでみないでー。」
棒読みで喋ってたら「分かったよ」とグレイがいう。よっしゃ、王都への道中のご飯は美味しいものが食べられそうだ。グレイの作るご飯はすごく美味しい。最近はあんまり食べてないけど。
グレイはぶっちゃけ料理人でも食っていけるらしい。実家が食堂だったから料理はしっかり仕込まれたと言っていた。本当になんで冒険者やっているんだか。
何故料理の話をしているのか? それは簡単だ。私達は王都に行くことになったからだ。その道中の相談をギルドの酒場でやっている訳ですよ。こういう相談とかできるからギルドには酒場が併設されることが多いらしい。酒場って言ってもほぼ食堂だけど。今はお昼ちょい過ぎくらいですからね。今から酒飲む馬鹿は居ないってことですよ。
それよりも王都ですよ王都!! 私宛にギィスが手紙を出したこと、Sランク冒険者として登録されていること、数十種もの魔物の情報提供などについて、アールハイド王国冒険者ギルド本部から呼び出しを受けたんだ。びっくりした。Sランク冒険者にもなると呼び出しとかあるらしい。というかAランクまでが呼び出しに必ず答えないといけなくて、Sランクからは可能なら来てー、ってものらしい。そもそも連絡がつかないことが多いため、こういう措置が取られているみたい。ついでに王宮からも呼び出しが出てる。
「王宮がついでってお前なぁ。」
「あらら? 声に出てた?」
「それ絶対王都で言うなよ? 不敬罪になるかもな。」
「本音は?」
「なんかあったらクソ面倒。」
「わあ素直。」
王都が楽しみで考えが口に出ていたらしい。勿論呼び出しには応じますよ? 面白そうだし。もともと世界中を回る予定だったんだし、今回は王都に縁があった、ということなのだろう。絶対に行きます。
「あ、今回は馬でも借りた方がいいの?」
「馬か? 俺達より遅いのにか?」
「いやでもグレイのパーティーメンバーも途中で拾うんでしょ?」
確かグレイのパーティーは昇格試験を受けに王都に行っていたはず。そしてそろそろ帰ってくるとか言っていた。私は彼らと顔合わせしていないし、多少は話してみたい。私とグレイだけで王都へ行ったら行き違いになると思うのだが。つーかそもそも面子を知らない。グレイが教えてくれないのが悪い。いい加減教えて―。え? 後で? 実は面倒なだけじゃないの? おいこら目を逸らすな。
「あー…。あいつらはもうメイシアに着いてるぞ?」
「は?」
「いや、な? 昨日着いたって手紙が届いてな? 今日は休暇ってことで各自休んでるんだ。」
「それ私聞いてないんだけど。」
「今言った。」
「なんで私には言ってなかったわけ!?」
「昨日の夜だったんだって! あの時はお前ギルドに居なかったし! 俺だって偶々会っただけなんだよ! それにお前だって俺を置いて先に飯食ってたじゃねぇか!」
うぐっ。だって昨日の晩御飯は『緑の鳥』で限定メニューの『ルフ鳥の卵かけカツ丼』が食べたかったんだもん。凄く美味しかった。ちなみにルフ鳥はライチョウのような鳥で、お肉も美味しい。
しっかし見事に私だけすれ違ったようだ。何故。まぁメンバーにはそのうち会えるけど『ルフ鳥の卵かけカツ丼』はそもそも材料の入手が難しいからね。こっちを優先するのは正しかったと思う。卵あんの濃厚さとカツの相性の良さよ。もうね、語彙が溶けるの。
グレイはご飯の後に伝えようとしたらしい。でもその時、ちょうど私が魔法通話をしていたから止めたんだそう。なるほどね。ちょっと気になったことがあったから、本体の力で調べてた時だね。
気になったこと? 言わないよ? ちょっと本体が呆れてたし、私のお仕事が増えただけだし。
「……おーけー。分かった。で、皆と一緒に行くんでしょう?」
「おう。分かってくれたらいいんだ。それとあいつらは馬車に乗るな。でも騎獣は駆竜だから馬よりも速いし、スタミナもあるぞ?」
「駆竜? えっと……ああ! あれか!」
確か、昔鑑定したことがあるな。フィリアが追いまわして最後は踏みつぶしたな。馬みたいな体系の蜥蜴なんだよな。恒温動物でびっくりしたんだよね。あれはもう蜥蜴に近い馬で良いと思う。食うの植物(イネ科の雑草)だし。
「え待ってあれ飼い慣らしたの!? 確か群れとか作んないし、いつも動き回ってるからどのくらい生息してるのか調べるのくっそ大変な奴だよ!? よく出会えたね!?」
かなり凄いケースでは!? 基本的に臆病で、気性が荒い、好奇心が強い個体でも人里には近づかないし、この辺りではぜんっぜん見かけないよ!? そもそも開けた土地を放浪している魔物で、縄張りも持たないんだ。まず狙って会えるような魔物じゃない。
「ライ…あ、駆竜の名前な? ライは俺の仲間が幼体の時に拾ったんだと。その時は気まぐれだったし、あんなに大きくなるとは思わなかったらしいぞ。」
「え? もしかして子供? そんな奇跡ある??」
「今は成体だぞ? 拾ったのは20年前とからしい。」
「待って。その計算だとグレイの仲間にお爺さんいることになるけど。」
「いるぞ? ギルマスと同じ猫人の老人が。黒猫の紳士だし、貴族っぽいし、かなり目立つんじゃないか? 身長もギルマスより高いしな。つってもまだ60とかだった筈だが。」
「想像してたより濃い人物像が出来たんだけど。まってほんと待って。残りの面子も同じくらい濃かったりするの?」
「いやあ? あいつが目立つだけだしなぁ……。あとは元男爵令嬢とエルフのちびっこだしなぁ。」
「オイ待てこら。明らかにオカシイ単語が入っているんだが?」
「あ? ああ、確かにエルフのちびっこは珍しいよな。この辺りにエルフは少ないし、エルフは子供を大切にするからなぁ。25にならないと親元から離れられないんだったっけ?」
「いや、うん。確かにエルフのちびっこがSランクのグレイと冒険できるとか凄いけど! それよりも私は元男爵令嬢が気になるんですけど!!」
「支援魔法がうまいぞ。それに度胸もあるし。……そういやあいつ貴族だったのか。」
「ちょっっっっっっとお話ししようか???? え?? 何? 貴族だとは思えないような御方なの?」
「ああうん、まぁ、そうだな? 見た目はまともなんだがなぁ?」
「見た目は!? 中身がどんななの!?」
「よっし、この話はここまでな! それじゃあリナも用意はしておけよ! 明後日出発だからな!」
「は!? え、ちょっ、ま」
「じゃあな!」
雑に話を終わらせたグレイはイイ笑顔でギルドから出ていった。唐突過ぎて止められなかった私のこの怒りをどうしてくれよう。っていうか普通そんな雑に話終わらせるかよ?
仕方ない。旅の準備だけしておこう。どうせ宿は一緒なんだから、また会った時に聞けばいいか…な……。
主にパーティーの仲間に不安が募るが、旅行だと割り切って楽しもう。楽しめるよね…?




