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ドラゴンさんの暇つぶし  作者: R's
第3章  人間の想いと神様の願い
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第19話  蠢くモノは

「ええと…指示されていた地点はこの辺りでしょうか。」


「一昨日の会議で指示した所に着いたっぽい?」


「何でアンタが分からないんだよ…。」


「私なんでか地図見ても道に迷うからさー。案内してくれる人が必要なんだよねー。」


 私、リナは『リテリュアル』のメンバー達と共にアリス森林地帯にやって来ていた。ギルドで会議を行ったのが一昨日で、私は各パーティーにそれぞれ別行動を指示したのだ。とは言っても最終的には3パーティーとも合流する予定である。


 アリス森林地帯は本来駆け出しの冒険者たちが経験を積むために活動することの多い場所であり、ある程度安全が保障されていた。しかし、未確認の魔物の存在により、現在はBランクパーティー以上のみ立ち入りが許されている。


「しっかし本当にここに痕跡があるのかね? あたしらは実物も見てないからねぇ、ちょっと信じられないんだよ。」


「報告の件数を見れば実在するのは確かです。それにあの『破城槌』ボルディが見たと証言して以上疑いの余地はないでしょう。……その強さまでは推し量れませんが。」


 完全武装(フルプレートアーマー)を着込んだイライザがぼやく。それに確証をもって答えるのはリーダーのリリシー。周囲を警戒しながらも回答する。


「あ、見っけた。」


「「「は?」」」


 痕跡を見つけたのだが、思わず口に出ていたようだ。道中終始無言を貫いていたエルフのミストリテも、リリシー、イライザも同様に呆けたような声を出す。


「ま、待って下さい!? そんな痕跡何て何処に!?」


「えっと、ほらここ。()()()()()()()()()。だから多分こうして……。」


復元(リスタレーション)


「っ!? 何、今の!!」


 ミストリテは驚愕した顔で私を見る。どう答えようか。もしかしたら有名でない術式なのかもしれない。


「んー、まいっか。これは【再現魔法】だよ。そこにあった状況を作り直す魔法さ。『世界の記憶』に干渉して魔力で再現するからそこそこの魔力量とある程度の魔力操作があれば使えるよ? ただ、動き続ける物…例えば生物とかには使えないんだけれどね。取り敢えず、これで痕跡を追えるようになったね。」


 再現した魔物の足跡…それも複数で、魔力の残滓も復元されている…を指差しながら答えると魔法を使うらしい二人はさらに驚く。


「なんっ!? 何それ知らない!!」


「何ですかその魔法!?」


 いまいちピンとこなかったイライザ以外が化け物を見るように私を見る。


「なんだい? そんなに難しいのかい?」


「ちょ、ちょっと待って……! えっとイライザに分かりやすく言うと、魔法を使いながら大剣で近接戦をこなしてかつ戦場の指揮を執ってる感じかな…?」


「ごめんまっったく想像できない。」


「武器無しで《禁忌の深淵》で最終依頼をこなすくらい難しい。」


「それ人間が出来る事かい?」


「あれ?! 私の認識とずいぶん違うね!?」


 何故かドン引きされる結果になった。あとミストリテちゃんが饒舌になった。何故!? そんなに難しいことではないと思うのだけど……。


『世界の記憶』は誰でも閲覧できる《世界龍の瞳(アカシックレコード)》の一部である。アクセスするには【閲覧(エビデンス)】という魔法を使えばよい。これは《ステータスシステム》と共に開発した魔法であり【復元(リスタレーション)】と一緒に、この世界限定の魔法だったりする。



「まあ、それは置いておいて。…この魔力は確実にギルディスの魔力が使われてるっぽいね。」


「……随分と嫌な気配ですね。」


「魔法に疎い私にもこれは分かるねぇ。」


「…死霊術の気配…。」


 復元した魔力は死霊術のソレが感じられるものであり、生者にはとても不快なものだった。

 でも()()()()()()()。これで今日中に終わらせられる。


「さてと、全力で【トレース】!!!」


 私が使ったのは追跡魔法。……魔力を辿り、標的に必ず辿り着く魔法。これで、見つかったキメラは炙り出せる。


「じゃ、そっちはよろしく。」


「ええ、リナさんもご武運を……。…皆さん行きましょう!!」


「ああ!!!」  「了解。」


 【トレース】によって発生した光の道筋を『リテリュアル』のメンバーが追跡する。私とはここで別行動だ。


「さて。これでもう追い詰めた。」










「くそがあぁぁ!!!!!!」


 暗い洞窟にて男の絶叫が響く。


「何故だ! 何でアイツらがいる!? おかしいだろ! ここがバレる訳が無い!!」


 男は憤慨していた。折角望み通りの力が手に入り、実験もうまく行っていた。それなのにAランクパーティーが邪魔をしているのだ。

 男の持つ力は杖によるもの。死体を改造し、操る力。所謂死霊術だ。この杖さえあれば簡単に軍隊をも創れる。しかし、その為には死体が必要なのだ。今まではコツコツと死体を集め、改造し、兵器を作ってきた。冒険者に邪魔されないように情報も得ていた。ギルド内部に操ったネズミのゾンビを放ち、調査先を知っていた。

 それでも今回は違ったのだ。一瞬だった。気付いたときにはメイシアにいた使い魔全てが消えていた。男は理解できなかった。そんなことはあり得ないのだ。しかし、全ての使い魔との繋がりが消え、情報が得られなくなった。

 さらには男の隠れ家周辺にAランクパーティーが二つもやって来た。この辺りでは何も異常が報告されていなかったはずだ。自分の周りに冒険者が来ないように細心の注意を払ったというのにだ。


 男は研究器具に当たり散らし、ようやく冷静になる。情報を得ようと場所を変えなかったことが災いした。今からでは移動しても見つかる可能性が高い。このままでは自分が危ない。……メイシアには()()()がいる。自分の顔が知られるのは拙い。


 だから男は―――全員殺すことにした。


「行けアスタロト!! 俺の敵を全部殺せ!」


「………ああ、分かった。」








「ボルディさーん。確かこの辺りっすー。」


「あい分かった。お前ら気ぃ締めろ!」


「うっす。」  「はいっす!」


 声を潜めながら報告するバジルにボルディは頷き、メンバーに檄を飛ばす。彼らがいるのはカルナ洞窟。アリス森林地帯とは真逆の方向である。ちなみに洞窟と言っても元洞窟、というのが正しい。昔ここで戦闘をしていた()()があらかたぶっ壊して今は洞穴が多い荒れ地というべきだろう。


 ボルディたち『ステライト』は今回のキメラと戦闘経験のある唯一のパーティーだ。だからその危険性も分かっている。普段おちゃらけているメンバーも真剣になっていることがその証拠だ。

 あのキメラが死体である、ということは彼らにとって受け入れがたいものだった。何故ならヤツは確実に知性を持っていた。こちらを観察し、弱点を探すその狡猾さは間違いなく『狩人』だった。そう言ったボルディに対し、《賢龍姫(コウゲイ)》、リナはあっけらかんと答えた。


『だからギルディスはSランクの魔物だよ? だってあいつの造るキメラは死者であり自我があるんだもの。……自我を持たせたまま支配するから人間とかがキメラになると最悪だよ? 情に訴えるようなことしたり、人間社会に紛れ込んだりできるから。』


 あ、一応街中は全域調査したから大丈夫だよー。そう続けた彼女は何てことの内容に話していたが、ボルディたちにとっては重要で、重大な事だった。


 自分の意識を残したまま、キメラとして操られ、利用される可能性がある。


「いいかおめぇら。死ぬなよ。儂でも仲間を殺すのは嫌じゃからのぅ。」


 独り言のように呟いた言葉は……離れた場所から聞こえた絶叫に掻き消された。


「面白かったら高評価お願いします!」

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