第14話 情報規制
「滑り込みセーフ!!!」
「うーん、セウト!!」
「ふむ? 今回の依頼の報酬はお前さんについて詮索しない、が良いとな?」
「うん。今回見てた人たちはしょうがないけれど、ギルド主導で私について詮索したりしないで欲しい。」
グレイの追及の手を躱した私は、ギルマスに戦闘訓練の依頼の報酬を強請ることにした。という事でギルド内を探索し、何事もなくギルマスと合流、そのままギルマスの執務室へと移動した。ヨハン? ああ、試合終了後に治療室に連れていかれたままだよ? 『戦の王』はまだそこにいるんじゃない? オルトラさんが私のところに来たのがおかしかったんだよ。
「ちなみにそれを報酬にしたい理由は?」
「あー、それは俺の発案だ。こいつの魔法、つーか戦闘方法はちょっとヤバそうだからなー。なるべく知られない方がいいと判断したんだ。それにリナは金持ってるからなー。金銭にするより揉め事の種を潰したい。俺の心労的に。」
「ああ……。」
「誠に遺憾。」
ギルマスにグレイが答えると物凄く納得したような顔をされた。正直さっきのはやり過ぎたとは思うけれどさー。ぶすっとしていると一緒に執務室に来ていたタキヤさんがお茶とお茶請けを出してくれた。緑茶と煎餅だった。え? これこの辺りではポピュラーなの? へぇー、特産品なんだ。普通に美味しいです。
「では今回の報酬としてSランク冒険者リナについて、ギルドが詮索したり、探ったりしないと約束しよう。タキヤ、契約書の用意を。」
「畏まりました。」
「契約書ってことは契約魔法? タキヤさん辺りが使えるの?」
「ああ、タキヤは契約魔法を使える。あまり知られている魔法ではないと思うがよく知っていたな。」
「ちょっと使う機会があったからねー。」
「オイちょっと待て。リナ、お前契約魔法まで使えるのかよ?」
「うん? そうだけど?」
契約魔法。それはかなり特殊な魔法である。魔法のタイプとしては媒体を用意して発動する類の術だ。媒体は主に契約書を使う。発動すると契約書に書いてあることを必ず実行しなくてはならないのだ。その際に用意した契約書は消滅する。契約書自体は魔法を使用する本人の魔力を込めればいいから用意は簡単なんだけれど、発動してしまうと解除がとても難しいのだ。ぶっちゃけ呪いの類だね。
で、そのせいかこの魔法を習得している人は物凄く少ない。それでグレイは驚いたんだろう。私自身も使う機会はほとんど無いけどね。始祖人たちでもあんまり使わないしなぁ。
「……なぁリナ。一回お前が出来る魔法について教えてくれねぇか? ぜってー厄ネタが出てくるとは思うけど、突然知るよりはましだと思うんだ。」
「あー。それもそうだね。私も何が危険視されてる魔法か調べてないしねー。宿に戻ったら防音の結界を張って話すよ。」
「いや、ここで教えてくれ。ギルマスにも聞かせる。」
「おいグレン。お前さん儂も巻き込もうとしてないかの?」
「俺も若干普通の冒険者から片足を踏み外してるからな。一般的な視点を持ってるギルマスを巻き……ゴホン、頼ろう。」
「お前さん思いっきり巻き込もうとしてるな???」
そっかー。それじゃあしょうがないよねー。グレイは真剣な顔をしてるけれど顔が思いっきりにやけてることを教えた方が良いかな? ギルマスは焦っているけどスルー。
「おっけー!! じゃここでぶっちゃけるね!」
「それでは私は一度下がりますね~。あ、契約書はこちらになるので用意が出来たら呼んでくださいね~。」
「まてタキヤ。お前さんもこっちで……。」
「それじゃあ私は通常業務に戻りますのでー。」
バタンと容赦なく締まる扉にギルマスは顔を引き攣らせる。私はタキヤさんから受け取った契約書に契約内容を書く。ペンを使わず魔法で素早く書いてグレイへパスし、グレイはそれを持ってギルマスの前に行き、契約書を渡す。
「じゃ、ギルマスが内容を確認しているうちに私の使える魔法について共有しておくね。」
「おう。」
「お前さんたち……。何でこういう連携が出来るんだ……?」
頭を抱えたギルマスを尻目に私たちは情報の共有を始めた。
「と言っても、私は大体の魔法は使えるよ? 武器も魔法も苦手はあるけど使えないやつはほぼないし。」
「は? 全部?」
初っ端から爆弾を投下してみたけれど、グレイは微妙な顔になる。
「全部って…全属性に適性があるのか?」
「うん? あー、何て言うか、適正関係なしに魔法なら何でも使えるかな。」
「………は? いや、無理だろ? 魔法は適性が無いと使えないだろう?」
「………はい? え? 訓練次第で使えるよね?」
「何か、話が噛み合わないな……。」
グレイが溜息を付く。そして魔法の一般常識について説明する。
魔法を使うにはまず、自身の適性を調べる所から始めるらしい。そこから魔力操作、初級レベルの簡単な属性魔法、中級、上級へと発展させていく。これが普通らしい。契約書の確認が終わったギルマスも途中から話に混ざってきたけれど、適性の無い属性の魔法どんなに訓練しても使えないのだとか。
……そういえば《ステータスシステム》はそんな風に設定されていた気がする。が、しかし《龍の里》の皆はそういうことを気にしていなかったような?
『アストラル様。彼らは加護を受け取ることでその点をクリアしているだけでございます。』
ボソッとラプラスから通達があった。マジか。知らなかった。どうしよう。グレイもギルマスもめっちゃこっちを見てるんだけど。
「リナ。お前のいた所では適正以外の属性を使えるようにするにはどんな訓練をしていたんだ? 教えてくれ。」
「えっと……。」
ですよね!! そうくるよね!! グレイなら気になるよねー!! 実際のところどうすりゃいいのさ!? 教えてラプラス!!
『回答:気合です。』
気合なの!?
『肯定します。気合で何とかなります。諦めるから出来ないのです。』
「気合で訓練すれば習得できる! はず!」
これでどうだ!
「そうか。リナは天才肌なんだな……。」
「う、うむ。言葉にしにくい感覚というものもあるからのぅ。」
物凄い残念な人を見るような温かい目を向けられた。誠に遺憾です。
「そ、それは置いておくとして、基本的に私は気合で大体の魔法は使えるよ? 禁術の類とかも。」
「「は?」」
「えっとねー。死霊術、操魂術、次元操作とか諸々が禁術だと思うんだけど、全部使える。」
「「…………。」」
グレイとギルマスが押し黙った。暇だからグレイの目の前で手を振って見た。無視された。
「のうリナ、グレイ。それ儂に聞かせる必要あったか? かなり知りたくなかったんだが。」
「ハハハ冗談キツイぜギルマス。無知はそれだけで罪なもんだろう? あんただって俺を巻き込んだことあるじゃないか!」
「しかしなぁ、こんな老いぼれにそこまで心労を抱えさせなくてもいいと思うんだがなぁ。」
「そう言うなって。前途ある若者に全責任を押し付けるこたぁねぇだろう?」
…………。
「「………チッ!!」」
わぁお、え? これ私が悪かったりするの? 使える魔法説明しただけだよ? 何かもう悲しくなってきちゃうよ?
「二人を見て決めたけど、禁術系統は封印します。」
「「そうしてくれ。」」
息ピッタリじゃん…。
このあとタキヤさんを呼んで契約魔法を使ってもらいました。念の為に禁術の使用禁止みたいな制約も付けてもらった。因みにだが、契約魔法は契約内容を見ないで発動することもできるので、タキヤさんは私が禁術を使えることは知らない。魔法って不思議―。
今日の依頼:模擬戦。報酬:リナの情報に規制を付けた。
さて、緑の鳥に帰って美味しいご飯でも食べますかー。あと、今度こそ街の外での依頼を受けたいと思います。楽しみ~。
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