第13話 戦闘開始!!
「Sランクともなれば有意義な戦闘訓練はなかなか難しいだろう。ならば手合わせでお互いを高め合うことが出来るのではないか? 儂からの依頼として【ギルドの訓練場で手合わせをする】というものを発行する。リナ、ヨハン、二人ともこの依頼を受けないか?」
このギルマスの提案に私は目を瞬かせる。グレイは怪訝な表情を浮かべ、ヨハンなんちゃらも不可解に思ったらしい。そこでギルマスは説明を加える。
「お主らは仲が悪そうだがな、Sランクの喧嘩なんぞこの辺りでやられると迷惑でしかない。ならばギルドの管轄下である程度暴れさせたほうが良いだろうて。無論、あくまで手合わせのみ。危険になれば止めよう。……グレイ、頼めるか?」
「俺か? 構わないが……。」
ふむ。ギルマスの目的は他のギルドの構成員、冒険者にSランクの戦闘技術を見せるとかだろうか? ああ、私の戦闘能力を測ろうとしているのかもしれないな。個人的には面白そうではあるかな。
けれどヨハンなんちゃらは不満だったらしい。
「依頼だと? 俺がこんなちんちくりんと戦えと?」
「誰がちんちくりんだコラ。…私はそれ受けるよ。面白そうだし、そっちのお子ちゃまに負けるわけないしね。」
「き、貴様……!! 侮辱するのも大概にしておけ…!!」
「ハッ!! す~ぐ怒っちゃって……。冷静さくらい持ちなさいな。」
「……覚悟していろ!! ギルマス!! 俺もその依頼を受けよう!!」
コイツ煽り耐性低すぎないか? 大丈夫なのかよこんなんでさー。どうでもいいけど。という事でギルドの裏にある訓練場に移動することになった。その最中にさらっと説明。使用可能な武器はギルドの貸し出し用の木製武器のみ。防具はありで、魔法は大規模なものは使用不可。地形を変えるような技やスキルの使用も禁止になった。……あ、これ私が加減できなかったら失格になる奴じゃん。気を付けよ。
ギルドの訓練場に到着。何というかちょっと大きめのグラウンドみたいだな。どことなく校庭的な雰囲気を感じる…。周りを見ていたらグレイに話しかけられた。
「リナは武器を何にするつもりだ? 剣か?」
え、何? 武器? どうしようかな…。
「片手用の木剣ない?」
「あるはず……だ。」
「あ、じゃあそれで。自信なさげだな。」
「貸し出し武器なんて使わないからな。壊すなよ。」
「おっけー。」
ギルマスがギルド職員に用意させた貸し出し用の武器から木剣を選び、軽く振ってみる。うっわこれ簡単に壊れそうだわ。あ、グレイの眉間にしわが寄った。……よし、剣に負担が掛らないように戦いますかー。
「ふん。叩きのめされる覚悟は良いか?」
「あはっ! それは私の台詞だなぁ!」
ヨハンなんちゃらが挑発してきたので煽り返す。あっと言う間に真っ赤な顔になった。いくらなんでも挑発に弱すぎない? ヨハンなんちゃらの武器は木盾と木剣。私の選んだ剣よりリーチもある。……ちょっと待って、もしかしてこれ短剣か? やっべミスった。…あ、違うわこれ。小剣だ。剣と短剣の中間だっけ。まぁいいか。
「両者準備は良いか?」
審判役になったグレイが私たちに聞く。
「構わない。」
「何時でもオッケー。」
「では………始め!!!!」
グレイの掛け声と共に戦いの火蓋は切って落とされた。
先手で動いたのはヨハン。滑る様に接近してコンパクトな構えで剣を振り下ろす。私は軽くバックステップを踏みながら、ヨハンの剣の腹に剣を当て、剣の軌道を変えつつ往なす。しかしヨハンは意に介さず盾を構え突進する。流石に往なせないのでサイドステップで回避。その最中に剣を振るってカウンターしたけど、ヨハンは即座に反応。突進を止め、勢いを回転で殺しつつ盾で防ぐ。
「はっ! やはり大したことないじゃないか!!」
「うっさいなー。あんたまだ突っ込んできただけじゃない? もっと遊ぼうぜー?」
あんにゃろ、折角手加減してるのに煽ってきやがった。大人げないけどちょっと本気を出そうか。ヨハンが再び構えたその瞬間、私は地面を蹴り高速で距離を詰める。ああ、驚いたな。一瞬だ。一瞬だけ隙が出来てしまった。だから魔法が掛かってしまうんだよ。
接近し横薙ぎに振るった剣を、後ろに跳んで回避するヨハン。その顔にもう油断は無い。Sランクに上り詰めるだけはあるか。
「さて、君もちょっと全力で来なよ? じゃなきゃ吹っ飛ぶよ?」
「……俺が貴様に弾き飛ばされるとでも?」
「余裕で吹き飛ばせますが?」
笑顔で言い切った私にヨハンは顔を引き攣らせる。ついでに観戦していた冒険者たちと『戦の王』のメンバー、グレイはドン引きしていた。何故だ?
私は片手で持った木剣をゆらゆらと弄びながら街中を歩くように接近する。ヨハンは気を引き締めたのだろうか、真剣な顔つきで此方を観察する。……ああ、敢えて隙だらけにしているからどう出ればいいのか分からないのか。駄目だなぁそんなんじゃ。一歩。それだけで距離を詰め、横薙ぎに払う。
「ぐっ!?」
それはヨハンに横腹に当たり、私の宣言通りにヨハンを吹き飛ばした。ギャラリーはざわつく。ヨハンが真っ黒な魔力に覆われ、悲鳴を上げ始めたから。私が仕掛けた魔法、それは付与魔法の《バッドエンド》。対象を覆い、生命力を蝕み馬鹿みたいな苦痛を与える魔法だ。
さてとこれで勝負はついたかな。私は審判のグレイに向けてニッコリと微笑んだ。
「はい。私の勝ちだね。」
「………勝者、リナ!!」
私の初めての依頼はこれにて終了、かな?
「リナ、正座しろ。」
「何故に!?」
「当たり前だ馬鹿野郎!! 何だよ今の魔法は!?」
「痛みと恐怖を与えて生命力を奪う魔法。」
「んなもん禁術みてぇなもんじゃねぇか!!!!!」
「えっ!? マジで!?」
「なんっで知らねぇんだよ!!!?」
「いやぁ、この魔法、かなり久しぶりに使ったし……。」
「封印しとけ!!? 目立つどころじゃあねぇぞ!?!」
「うい……。」
はい。試合終了後、グレイに引っ張られてギルドの会議室? らしきところに。そしてリナちゃん絶賛怒られ中です。あ、勿論《デッドエンド》は解除してきました。グレイがものすっごい形相で睨んできたし…。鬼のような形相だったよ……。
「……ふうー。今回はヨハンが相手だったからいいものの、ぜっっったいに他のヤツに使うなよ? 下手すりゃ即死だぞ。」
「……え~? 流石に即死は無いんじゃないかな~?」
「いや、うっかり即死させそうだな。」
「私に対する信頼の無さよ。」
「むしろ信頼しろと?」
「………出来ないね!!」
「威張るな!!」
いや、ねぇ? こうやって振り返ってみると、そこそこやらかしてる気もするしなぁ。
「もしかしたらさ、何か私の魔法はなるべく使わない方がいいかも?」
「…その根拠は?」
「さっきの《デッドエンド》は手加減しようとして使った魔法だから。」
あ、グレイが頭を抱えた。なんかブツブツ言いだしたけどスルーしようか。
唸っているグレイを放置していると、会議室の扉がノックされる。
「オルトラだ。少し時間を頂けるだろうか。」
丁度いいな。私も用事があったからお話でもしようか。
「どうぞ。」
声を掛けるとオルトラさんが入ってくる。頭を抱えて唸っているグレイを見て動きが止まった。
「取り込み中だったか?」
「あー、なんというか、うん。グレイの整理がつくまで私は暇だし、私で良ければ話を聞くよ?」
「そうか。俺の要件はお嬢さんについてだから問題ないな。」
……。成程。そっちか。
「お嬢さん。種族が龍人だとは聞いたが……純血種、それも真祖の系譜ではないだろうか?」
うわお。待ってそんなに細かく伝わってるの? えっと……やべ、これ誤魔化せないかも?
「あー、何処まで知ってるの? 私は言えることに制限があるから全部は言えないんだけど。」
「ああ、俺は真祖と純血種の違いまでは知っている。こう見えても考古学をやっているからな。」
「…じゃ、教えるけど。私は最初から純血種の系譜だよ。これは秘密だから誰にも言わないでね。」
私は何てことないように告げた言葉だけど、オルトラさんはそうでもないようだ。顔を両手で覆い、天を仰いで「やはり」と呟く。そうして少し経って彼は立ち上がった。
「リナ様。それではこれにて失礼いたします。」
「あ、うん。…あっ、口調は前と一緒でいいよ。目立つし。」
「ぬっ。承知いたしました。…それでは。」
一礼してオルトラさんは会議室を出ていった。さてと。
「オイコラリナてめぇ、次はどんな爆弾を抱えてやがる。」
グレイをどう誤魔化そうかなー。鬼のような形相で詰め寄ってくるグレイを見ながら、私は現実逃避を始めるのだった。
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