第10話 ドラゴンさんは暴れる?
ギルマスが行った方へ歩いていくと広めの応接室みたいなところに辿り着いた。そこに入るとギルマスとゆる~い雰囲気のお姉さんが何かの機材を用意している。茶色の長髪を後ろで三つ編みにして、丸眼鏡を掛けた、たわわなメロンをお持ちのお姉さんだった。そっと自分の胸を見て比べてしまった。すると後ろからグレイが一言。
「比べていると怒る奴だからな?」
「いやちょっとそれは理不尽じゃない?」
あれは見ちゃうでしょう? 比べたいでしょう!? っていうか何であんなに大きいんだ? 何食べて育ったんだろう…。いや別に胸のサイズを気にしている訳じゃないんだけどちょっと見たことないサイズだったからついつい見てしまうというか何というか…。あ、ウィルアスよりも大きい。
ちょっと思考の海に入りかけた私の肩をそっと誰かが掴む。パッと顔を上げるとニッコリと微笑んだお姉さんが。
「ん~、その手の動きは何かな~。」
「へ?」
えっと何? 手? 私の手を見てみると胸の前でサイズを確認している私の手が……。
「サイズの比較?」
ゴンッッッ!!!!
「おわっ!!?」
「ウフフ……。駄目でしょう? 女の子がそんなはしたないことしてはいけませんよ…?」
「アッハイ。」
……怖っ!! 顔が!! 笑ってるのに目が怖い!! グレイ!! めっちゃ怖いじゃん!!
「だから言ったのになー。(小声)」
「まぁ初見であの地雷は分からんだろうしのぅ…。(小声)」
ちょっ、まっ、止めてもらえるかな!?
5分くらい笑顔で威圧されていたけれど、準備が出来たらしくお姉さんから解放される。いや~、ビビった。で、ソファーに座った私の前に電話機? レジ? みたいな装置が置かれる。
「ナニコレ?」
「うむ。これはギルドカードを発行する魔道具だ。ここの部分に手を当ててくれ。」
受話器? スキャナー? う~ん、よく分からんけど手を当てる。おっ、これ魔力の波長から生体データを取ってるのか。なかなかハイテク、いやハイマジカル? な一品じゃないか。あれか、生体データをカードにプリントしているのか。幾つか特殊な魔術を組み合わせれば出来るな。《スキャン》と《ロード》と……おっと、終わったようだな。
魔道具から出てきたカードにギルマスが何かを書き込む。それを見ながら私はお姉さんと自己紹介をする。お姉さんはタキヤさんというらしい。ついでにギルマスの名前も聞いておく。鑑定で知ってるけれど、鑑定できることがバレると面倒だからね。
鑑定持ちはこの世界にほとんど存在していない。だからバレてしまうと囲い込もうとする国や組織が絶対に出てくる。いちいち相手してられないから隠しておくに越したことはない
「ほれ、お前さんのギルドカードだ。」
「おお! 早いな…ってあれ?」
一般的にギルドカードって出身地とか年齢とか書かれているんだけど、私のギルドカードには一切書かれていない。書いてあるのは発行したのがメイシアであること、ランク、名前のリナだけ。
「これで良いの?」
「ああ、グレイからお前さんの話は聞いておるからな。」
「グレイ?」
「おう。あと俺から相談なんだが、リナ、俺のパーティーに入らないか? 主にお前の監視のために。」
「わぁ取り繕おうともしないじゃん?」
そこでタキヤさんが疑問を上げる。
「あれ? グレイ君はSランク冒険者でしょう? リナちゃんとはランクが離れすぎじゃない?」
「………うん?」
カードのランクにSって書いてあるんだけれど。
「ああ、リナは特例的にSランクからだな。」
「ギルマス? どういう事よ?」
「……何かしらの功績でもあるんですか?」
タキヤさんは首を傾げているが、グレイは何故か呆れたように私を見た。
「いいかリナ。Sランク冒険者っていうのはそれだけで権力に近いモンを持っているんだ。それがあればお前に絡んでくるバカは減る。いても自業自得で片付けられるんだ。」
「グレイの言うとおりだな。お前さんをSランク冒険者にしておくことで儂らの精神的な安寧が得られるんだ。」
「わぁお。」
なんて言うか、その、私のことを地雷か何かだと思ってらっしゃる?
「それではリナちゃんはどれくらい強いのですか?」
タキヤさんの疑問はこの後すぐに解決することとなる。
「狂暴熊の毛皮、ユッタリアの牙、汚染蜂の針…………これ赤蜥蜴竜の鱗じゃなぇですかい!?」
「こ、これほどとは……。」
「あ、そだ。こいつも売れるかなー。」
「そ、それは!! 閃光鷲獅子の翼!!!??」
「あー、そういやいたなー。一発で撃ち落としてけど。」
「そりゃねー。アイツら的には地面に降りてくるわけないもんね。撃ち落とすしかないよねー。」
ギルマスに連れられて私達がもう一度移動した先は解体場。冒険者が持ってきた魔物、動物などはここで解体できるらしい。それ以外でも素材を持ち込んだら軽く加工したり、鉱石を弄ったり、ギルドの主な収入源なんだとか。そこで私が持っている魔物の素材を売ることに。解体用に魔法を開発しただけあってどれも最高の状態である。解体場にいたおっさんたちは大興奮。タキヤさんは茫然。ギルマスは…ちょっと引いてる?
「ねぇグレイ。何でこんなにこの人たち驚いてるのさ? グレイだってこれくらい狩れるよね?」
「あー、俺は空間収納の魔法を覚えてないからなぁ。それとここまで大量に持ってこない。」
そっと目を逸らす私。逃がさないとばかりに私の肩を掴むグレイ。大騒ぎするギルドの解体場を尻目にグレイはジト目で私に聞く。
「これ全部で1000兆マニー位するぞ。」
この世界の基本通貨はマニー。1マニー=1円。石貨1枚で1マニー、鉄貨1枚で10マニー、青銅貨1枚で100マニー、銅貨1枚で1000マニー、銀貨1枚で1万マニー、金貨1枚で10万マニー。そんで私が出した素材の合計金額は日本通貨で1000兆円。ハハッ。大金持ちになったね。
「ギルドの金庫にこんなにあると思うか?」
「やっちまったぜ☆」
「大馬鹿野郎!!」
さて、うっかり大量に出し過ぎちまったな………。
「はい! これが取り敢えず用意しました、1千万マニーです!!」
ホックホクなタキヤさんから1千万マニーを受け取る。ずしりとした袋をそのままにするのは怖いから空間収納に仕舞う。勿論、誰かに見られないように、さっきの応接室みたいなところでやり取りをした。
ちなみに残りの金額はツケにしてもらった。こっそりとギルマスに「私が何かやらかしてもよろしくね♪」と言ったのはここだけの秘密だ。今もギルマスの顔は引き攣ってるけど私は知らない。グレイが顔を手で覆い、天を仰いでいるのも知らない。笑ってるのは私とタキヤさんを含めた他のギルドの職員だけである。
リナは お金を 手に入れた !! なんてね。
ギルマスは知らなかった。この程度はまだまだ序の口だったのだと。彼が胃薬を常用するようになるまで、あと少し。




