第9話 ドラゴンさん・イン・冒険者ギルド
門番の詰め所から無事に通行許可証を貰ったので、やっと名実ともにメイシアに到着したと言えるだろう。しかし、私が感じたのはきっと達成感ではないだろう。
遠目には石造りの町並みが広がっているように見えたのだ。でも、近くで見てみると実は違った。半分くらい木造建築だった。和風の。………世界観何処に行ったの? 欧州風の石造りのザ・ファンタジーな建物の裏に藁の屋根の古風な木造建築があったんですが???
「ちょっとここの建築事情が分からない。」
「そうか? …そう言えば王都とか別の場所から来る奴は木で出来た家屋はあまりないとか言っていたな…? 田舎では普通だと思うけどな…。」
「あ、良かった。私がおかしいのかと思ったけどそうじゃないんだ。」
うーん、違和感が凄いけれどまぁそのうち慣れるでしょう。さて、街に着いたことだし私はこれからどうしようかな? 身分証明書代わりに冒険者ギルドでカードを発行してもらおうかなぁ。メイシアに就く前にグレイから軽く冒険者について説明をしてもらった。冒険者の主な仕事は魔物の狩猟、退治、撃退、希少な植物や鉱物の採集、他には街での日雇いの雑用など、幅広く存在する。「職に困ったならまず冒険者になれ。」という言葉もあるのだとか。そして冒険者にはS~Eの等級がある。冒険者カードにそのランクが直接刻まれるらしい。その為、冒険者カードは何の変哲もない木の板であるそう。ただ、偽装禁止のためにギルドが何やら細工をしているのだそう。魔法や呪いの類じゃないと噂されているとのこと。ナニソレ面白そう、と呟いたら「偽装するんじゃないぞ。」と注意されてしまった。そこまで信用が無いの? ちなみに身分偽装になるので普通に重罪らしい。貴族になりすまそうとした奴とかは無期限で労働奴隷になった話もあるんだとか。あ、奴隷とかはいるんだ。これも思わず口に出したら、グレイから「もう面倒くさくなるから黙っていてくれないか?」と言われた。解せぬ。
とまぁ、つらつら適当に考えていても埒が明かないので行動に移していくことにする。今後の予定としては、まずは冒険者カードを作る。今日の宿を取る。ああ、一応今の所持金は0だったよね。途中で狩った魔物や動物の素材とか、拾った鉱石、植物とかがあるからお金については心配していない。待て、買取について詳しく聞いてないな。
「まぁいいや、冒険者ギルド行こう。」
「待てギルドはそっちじゃないぞ。」
グレイに肩を掴まれて強制連行された。
「私は猫か?」
「大人しくしておけ方向音痴。」
「うぐっ…。」
い、言い返せない……。
グレイに連れられてやって来ました冒険者ギルド。はい。外観を楽しむ暇もなく中に連行されていきます。
「待ってグレイ。もうちょっと情緒を「良いから行くぞ方向音痴」いや待って??」
ギルド内の職員、数少ないけれどテーブルにいた冒険者たちの呆気にとられた顔を横目に連行されていく私。私の片腕をがっちり掴み、ギルドのバックヤードへ行くグレイ。そのまま流れるように階段を上がっていく。勿論私は引きずられたままだ。
「グレイさん?? 流石に強引過ぎない??」
「悪いな、俺もちょっと仕事があってな。」
「まっっっったく状況が掴めないんだが?」
私の困惑をガン無視したグレイは二階の奥にある部屋まで行き、ドアをノックする。
「ギルマスいるか? グレイだ。」
「おーう、入ってこーい。」
そのままグレイは部屋へと入る。私の腕をつかんだまま。
「何で私まで???」
「………………………は???」
「ギルマス。例の件は多分コイツが原因だ。という事で任せた。」
「「は????」」
部屋の中にいた猫人族の老人が、未だにグレイに掴まれたままの私が、同時に声を上げる。全くもって分からん。どういう事よ?
その時誰かからの視線を感じた。無遠慮な、しかし、明らかに隠された視線。咄嗟にそれを誤魔化す。それと同時に索敵、誰の視線か探る。発生源は…ギルマス? ……《鑑定》。
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名 モーリア・ダリフ
種族 猫人族
Lv. 146
体力 923
魔力 1021
武力 723
耐久 522
敏捷 943
特殊スキル 加速法 狩人の瞳
称号 老獪な演者 ギルドマスター 元Aランク冒険者
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・《狩人の瞳》:効果
危険察知、気配察知。危険対象の把握。空間把握、対象者の追跡が可能。*条件は対象に触れるor痕跡に触れる。痕跡に触れた場合は追跡能力の精度は落ちる。
いや普通に強いな。っていうか《狩人の瞳》つっよ。便利すぎるんじゃないのこれ。ナーフ案件では?
兎に角、今必要なのは状況の整理だろう。えーと、確かグレイと初めて会った時は何か依頼を受けて《禁忌の深淵》にやって来たとか言っていたよね。うん? そもそもグレイは何の依頼を受けていたのかな? ………討伐でも採取でもないかな。例の件、私が原因、秘密裏の依頼?
「えーっと、ちょっと待ってグレイ。私何もヘンナコトシテナイヨ?」
「リナ、諦めろ。俺への調査依頼はそもそもギルマスの独断なんだよ。」
「待て待て待て。ワタシソンナニキケンジンブツジャナイヨ。」
「もうその時点で怪しいんだよなぁ……。」
グレイの眼にはとても優しい光があった。それは小さな幼子を見るような慈悲の眼差しっておい!! やめて!! そんな目で見るな!! 馬鹿な子だなぁみたいな顔をするなああぁぁぁ!!!
「…ふむぅ。すまないがお嬢さん、グレイから儂のスキルについて何か聞いたのかい?」
「あ。」
「何でそこまで中途半端な頭の回転しているんだろうなぁ。もう少し考えたなら分かりそうなんだけどなぁ。」
しまったああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!
私が頭を抱えて床を転げまわっている間にグレイとギルマスは何かの話を進めていく。そうしてあらかた私についての情報共有が終わったらしく、グレイが私に声を掛ける。
「おーいリナー。お前の処遇が決まったから聞けー。」
「いやこれ私何も悪くないよね!? まだ何もしてないのに処遇って不穏過ぎない!?」
「まだ、っていう時点でもう何かやらかすんだよなぁ。」
「これはグレイのいう事を聞くべきだのう…。よし。では…リナ、だったか? 取り敢えずSランク冒険者のカードを用意するからちょっと待っておけ。」
「ええ!!? いきなりSランク冒険者ってありなん!?」
「お前さん、倒した魔物の素材を持っているかい? ギルドで買い取り出来る物なら買い取るぞ?」
「あ、じゃあお願いします。…でいきなりSランク冒険者ってありなの?」
「よし付いてこい。」
「だから…何さグレイ?」
一向に答えてくれないギルマスさんはどんどん進んでいってしまう。けれど多少離れていても付いていくことは可能であると判断し、ポンポンと私の肩を叩いたグレイの方に振り向く。そしてグレイはニッコリと笑みを浮かべ、
「ギルマスは人の話なんて聞かねぇぞ?」
「もっと早く教えて欲しかったかな!!」
もうコイツぶん殴ってもいいんじゃないかな? っていうか私ギルマスに自己紹介とかしてないんだけど。
なんか状況に流されてるけど、まずはギルマスに名前でも聞いておこうかなー。
「面白かったら高評価お願いします!」




