第7話 三歩目。街へ行こう!!
「……。お前なぁ…。これはちょっと加減を知らなすぎだろう?」
「……うん。さっき応戦しようとしないで正解だったわ……。」
「いいから魔力制御の訓練でもやってろ。小さい属性の玉を作って不規則に円を描く訓練知ってるか?」
「知ってるー。大丈夫大丈夫。さっきので大体の加減は分かったからー。」
グレイは一つ溜息をつき、呆れながら検分を開始する。その横で私は火球、水球、雷球をそれぞれ3個ずつ作り出して円を描く。魔力制御の一般的なやり方が私の知っているものと一緒で助かった。これ以上変な勘繰りは避けたいしね。
人差し指を中心にくるくると属性球を回す。指を恒星、属性球を惑星と見立ててやると成功しやすいんだよねー。ぶつかって止まることもないし、かなり正確に回し続けられるんだ。
グレイも知りたいことが分かったのか私の方に歩いてくる。そして私を見て何故か脱力したような表情をする。思わず首を傾げてしまった。
「どうかした?」
「いやなぁ、さっきまで魔力の制御が出来ねぇとか言っていた奴とは思えねぇよなぁと思ってさー。」
「何故に棒読み。」
「………よっし。決めた。お前、リナとか言ったな? 町まで案内するからついて来い。」
「オウ? 急にどうしたの?」
「あー。今アンタを町まで連れていくことのメリットとデメリットを考えていたんだよ。でだ、ここでアンタを連れていかない方が後々面倒事に巻き込まれていく気がするんだよ。まぁ恐らく連れて行っても面倒事にしかならんとは思うが。」
「ナニソレー? 私そんなに暴れたりしないよ?」
「《龍の言葉は信じてはならない》って諺知ってるか? お前みたいな規格外の言ってることは信用していると絶対に事故が起きるからな? お前自分が規格外だって分かってるんだろ?」
「めっちゃ疑うじゃん。少しは信じてくれてもいいのよー?」
「悪いな。勘は良い方なんだ。」
……おう。全く信じてくれないじゃない。酷くない? 私が何をやらかすっていうのさー?…まあいいか。それよりも街に行けそうなんだしな。そっちを優先しようか。後はグレイと別れたり何とか撒いたりすればいいかな? じゃあそういうことでグレイに案内してもらう事にしよう。
「ふふん! それじゃあしょうがないなー! さて、まずは何処に行くつもりなのか聞いても良いかな?」
「何で急にテンション上がったんだ?」
「フフフ! それはここ1週間、私は迷子だったからだよ!!」
「思ってたより深刻だったな。」
「うん!! 出来れば美味しいご飯を食べたい!! あとグレイの料理は美味かったよ!」
「…そうだな。俺の拠点には美味いもんがたくさんあるし、そこまで戻るか。つーか一番近いしな。」
「なんていう街なの?」
「アールハイド王国の山岳都市メイシアだ。」
メイシア…か。よっし!! 新たな《何か》を目指してメイシアとやらに出発だ!!
「で、ここからどのくらい時間が掛かるかな?」
「走って三日だな。」
「意外と近かっ……いや遠いな!? ちなみに方角は?」
グレイが無言で指差した方角は私が進もうとしていた方向と真逆だった。私はやっぱり方向音痴なのかもしれないな(遠い目)。
グレイと出会い、メイシアという場所を目指して一緒に行動することになった。一緒にいるためにグレイからはいくつか私に注意することを挙げてきた。1つ、グレイの指示なしに動かない。2つ、戦闘時には手を抜くこと。3つ、身バレしそうな発言はしないこと。この指示から察したけれど、グレイは私が何かやらかすんじゃないかと凄く警戒している。しかし詮索はしてこないから私としては好感度が高い。……しっかし見た目はどう見ても30代なんだよなぁ……。老けている、というより修羅場をくぐり抜けて来た歴戦の戦士、かな? ……ちょっとグレイの過去が気になるなぁ…。ダンディなイケオジが持つ色気があるし。Sランク冒険者だったっけ? 実は良物件的な?
ま、私には関係ないけれど。そんなことよりも私が気になるのはグレイの料理の上手さよ。
「いや本当に何でこんなに美味しいのかしら?」
「そりゃ、俺は元々料理を親父から習っていたしなぁ。上手くもなるだろう?」
「ちょっとその話を詳しく。」
「…まぁいいか。うちは料理人の家系でな。親父とお袋は店をやってんだよ。爺さんは貴族の専属シェフもやっていたらしいしな。」
「え!? すっご!? …あれ? じゃあ何でグレイは冒険者やってんの?」
「……好きなことを仕事にしても辛いときはあるだろ。」
「んー。……悪い。変なこと聞いちゃった。」
興味本位で聞いてしまったがやらかしたな。ちょっと気まずくなってしまう。私は咳払いをして話題を変える。
「これから行く都市、メイシアだったっけ? 何か有名な特産物とかある? 出来れば食べ物がいいんだけれど。」
「嬢ちゃん食い気が過ぎねぇか?」
「リナでいいよ。あと一応私の方が年上だからね?」
「…そうだったな……。すまん、つい見た目に釣られてしまった。」
「オイコラどういうことだコラァ。」
「特産物なー。鉱石とかの方が有名なんだがなー。食いもんかー。」
「ガン無視…だと……?」
「あぁ、強いて言えば味噌、か? ええと、大豆を発酵させた―――」
「味噌!? お味噌!? マジですか?!」
「お、おう? どうした?」
「え、待ってこっちにも味噌ってあるの? マ?」
「よし一回落ち着け。何だかわからんが落ち着いてくれ。よく分からん。」
はい深呼吸―。と言われたので息を大きく吸って吐き出す。そしてもう一度聞く。
「味噌ってあんの?」
「いやお前の想像しているものと一致しているかは知らないからな……?」
グレイは困惑しているけれど私にとってはそれどころではない。味噌があるなら醤油もあるかもしれない。味噌と醤油はジャスティス。美味しい料理の存在が約束される。
「はい! 醤油!! 醤油はありますか?」
「ショウユ? んー、なんだそれは?」
「ハァ!?!?!?!?! 何っで醤油は無いのさ!? 黒くってしょっぱい奴ですよ?!」
「もしかして黒油のことか? お前の地域ではショウユというのか?」
「まさかの名前が違ぁぁぁう!!?? 黒油って何なんだよぉぉぉぉ!!!!!」
「うるっさ!? おい!!! 魔物が寄ってきたじゃねぇかよ!?」
この後私が暴れて魔物は殲滅したが、グレイからは物凄く怒られた。しかし私は後悔していない! 待っていろ黒油ああぁぁぁ!! 絶対に醤油に改名してやるからなああぁぁぁ!!!
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