第5話 二歩目・遭遇!
適当に歩いて時々面白そうなものを見つけたら観察しに行く。小さな鳥型の妖精とか、葉っぱに擬態する虫型の魔物とか、地面に穴を掘って暮らすよく分からない犬にモグラを混ぜたような獣とか、前回見なかったような生き物を結構見つけた。それも鑑定したらちゃんと名前があったから、あー、システム制御のために意識を飛ばしておいて正解だったなー、と思った。名付け機構に全部任せたからかなり適当な名前だけれど。
名付け機構には、種の特徴を参考に名前を足していくシステムだ。だから犬にモグラを混ぜたような獣は「イヌモグラ」だったし、葉っぱ(落ち葉)に擬態する虫型の魔物は「アキノハコノハムシ」だった。………これ、きっとこの世界に転生者が来たら名前手抜きじゃーん! とか思うんだろうなー。
「さてと、そろそろ対処法を考えた方がいいかな~。」
私は気の赴くままに歩き、観察を続けていた。より面白いものを求めてさすらった結果こそ、今の状態である。
「ここ何処だ?」
早い話、迷子になりました。
「いや本当に困った……。」
うーん。どうしよう。ぶっちゃけ適当に歩き続ければどっかの街道とかに出るでしょう!! っていう感じで進んできたけれど、ちょくちょく曲がっていたせいで今の現在位置がつかめない。……スキルを使えば一発で分かるのだが、それじゃあ面白くないんだ。本格的に打つ手が無くなったら使うけれどさー…。
こういう時は一回地図とか見たいのだけれど、生憎地図は落としてしまった。というか川を渡るときについでに魚を見てたらぐしゃぐしゃになっていた。多分私はお馬鹿。
しょうがないので覚えている範囲で地面に地図を描く。真ん中に世界樹、それを囲むように《龍の里》、《龍達の深淵》、でもってこれを囲むように国があってー、………何個あったっけ? ……思い出せないので適当に分けておく。あとは世界樹が等間隔に散らばってるからー、ここら辺で陸地が切れていて、んー。
駄目だこれ。結局現在位置がつかめない。…………スキルを使うか? 最終手段とか言ってたのに? 歩き続けてから考えようか?
「ん?」
何かの気配を感じて顔を上げる。すると、唾液を垂らし、血走った目でこちらを見ているどっからどう見ても肉食恐竜(2体)と目が合った。思わず空間収納を使って荷物を回収し、後退ってしまった。
(あ、やべ。刺激した。)
その瞬間飛び掛かってくる恐竜(仮)たち。地面を蹴って素早く避ける私。そして剣を構えようとして気付く。ここで私が戦うと生態系変わりそうじゃね?
里の一般人に私が祭りから抜け出したことがバレないよう、ラミにこっそり協力を依頼した際に言われたことがある。それは大破壊を行わないこと。特に生態系を変えてしまうことは絶対にしないように約束させられた。しかし、私は今回この身体の力の調節をしていない。つまるところ私は今、力加減が凄く苦手な状態なのだ。蝋燭に火を点けるのに火炎放射器を使おうとする状態である。
ヤバいな。せめて開けた状態のところへ行こう。剣をいったん仕舞って軽く駆け出し、恐竜たちから逃げ出す。何かこのまま全力で走れば余裕で撒ける気がするけど、それやったら戦うのと同じくらいの被害が出ると予想した。多分実際にそうなる。あ、鑑定しておけばどのくらい加減すればいいか分かるのでは?
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名 無し
種族 アサルトレックス
Lv.75
体力 421
魔力 212
武力 321
耐久 283
敏捷 192
特殊スキル 持久強化 追跡
称号 ストーカー 大喰らい
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「思ってたより強いんだが!?」
やっば!? 一番加減しにくい奴じゃん!! んー!! やっぱ広いところ行く! 無理! これ絶対周りも被害出るよ!! 最悪このまま逃げて、身体を使いこなせるようになるしかない!? でもそれは無理そうだわ! 諦めてくれない? 無理? ですよねー。簡単に諦めてくれるなら称号にストーカーなんて付かないよねー! ちょ、どうしよう!?
「伏せろ嬢ちゃん!!」
良く通る声が響く。私は咄嗟に声に従って身体を伏せる。私の頭上を剣閃が通る。斬撃に魔力を乗せた攻撃の様だ。かなり練度が高い。さらに魔法が展開される。それは転移魔法。現れたのは銀髪の大柄な男性。ガタイはかなりいいようで無精髭が似合うイケオジである。着こなしているのは軽鎧だと思うがかなり特殊な作りの様だ。魔法剣士? 総合的に見てチョイ悪なイケオジという印象を受ける。
手に持っているのは剣。しかし、かなり業物の様だ。っていうか強いな。何だっけあの恐竜。そうだ、アサルトレックスだ。何かあっという間に2体とも解体されたんですけど。強いなー。
「って私の戦闘練習相手が―!?」
「いや嬢ちゃん思いっきり逃げてたじゃねえか。」
「そうだけどそうじゃない!!」
これが、私の初めての「私のことを知らない」人類との会話だった。
「うし。こんなもんでいいだろ。」
「うっそでしょ、何これ凄く美味しいんですけど。」
「おいこら勝手に食ってんじゃねえよ。」
「でもくれるって言ってたじゃん。」
「出来た途端食いだすか普通。皿に取れよ皿に。」
「お皿持ってないでーす。」
「嬢ちゃん本当に何でこんなところに居んだよ…。」
このおっさん(仮)はなかなかに豪胆な人物の様である。解体したアサルトレックス(肉塊)から魔法で器用に血抜きを行い、何と焚火で炙り始めたのだ。更に手際よくスープを用意し、そこら辺で採取した果実とか野草を魔法で洗い、豪華な野営料理を作っていく。炙っていた肉は串を通し、旨そうな匂いのするタレを付けてもう一度炙る。私も食べたいと言ったら私の分まで作ってくれた。というか私に聞きたいことがあったらしく最初から私の分も用意していた。うっま。
「……嬢ちゃんよく食うな。」
「美味しいものは沢山食べたいです。私は料理苦手なんだよね。ただ焼くだけなら何とかなる。」
「お、おう。……食いながらで良いけど嬢ちゃんは何でこんなところに居たんだ?」
「迷子。」
「………禁忌の深淵の近くなのに?」
「禁忌の深淵? どこそれ?」
「ん? まて、ちょっ~~~と待て? 嬢ちゃんここがどんな場所か知らないのか?」
「迷子だからね!」
溜息をつくおっさん。ドヤ顔の私。第三者が居たら困惑する状況であること間違いなしだな。
「あ、おっちゃんの名前聞いてない! なんて言うの?」
「おい待てやゴルァ! 俺はまだ24歳だぞ!! せめてお兄さんと言え!」
「いやいや24は嘘でしょう。駄目ですよそんな嘘付いちゃ。」
「こ、こんのクソガキ……!! 俺はちょっと老けて見えんだよ!! 言わせんなコンチクショウ!!」
「は? マジ? え、こんな見た目で20代……? 私の(設定の)半分以下?」
「は? ……ああ、アンタ龍人族か。……? 待て、それでも40歳くらいじゃねえか?」
「違うわ!! こう見えても50は超えてます―!!」
「うっそだろどう見てもガキじゃねぇか!!」
「はぁ~~~~!?」
今回の旅を行うにあたって、私は50歳の龍人族という設定で行っている。ちなみに龍人族は40歳で成人である。そして大体500年は生きる。
「……提案。年齢の話題はお互い傷つくと見た。」
「…同意だ。これ以上は止めておこう。……あー、俺はグレイだ。よろしく。」
「私はリナ。よろしくー。で、早速質問だけど禁忌の深淵って何?」
「今時知らねぇ奴なんているのかよ…。あー、【龍の楽園】って知ってるか?」
「知らん。」
「そこからかー。……嬢ちゃんよく見たらかなり腕が立つみてぇだな。出身は何処だ。」
「あ、故郷の掟で詳しく言えないヤツ来たー。という事で黙秘しちゃうぞ!」
「ノリが軽いな!?」
「結局【龍の楽園】とは何ぞや。」
「あ~。まぁ簡単に言えば、化け物の巣窟、だな。」
そう言ってグレイは世の中の一般常識を話し始めた。
「面白かったら高評価お願いします!」




