第19話 始まりの人類
『うし、何となく面子を確認したし、仕上げに掛かりますかー。』
「おー! やっと全員揃う訳ねー。【寅】はいないけれど。」
私の眷属の個性が強いという知りたくない現実からは目を背けつつ、『人類誕生計画』を進めていくことにする。それに乗ってくれたのはアストラルだけだけどね!!
『レネ、ラミ、大気成分はどう?』
「問題は御座いません。」
「検査の結果基準値に達したことを報告いたします。」
『アストラル?』
「ん、ローゼが植生について調べた感じだと食料として使える物、毒もしくは薬の原料になるもの、家畜の餌になる物、総合的なバランスも問題なし。土壌成分もOK。サトリとウィルアスは危険な生物の排除をしてもらって生態系の調節もほぼほぼ終了したよ。…それに伴って何種類か絶滅したけど。」
『うん、仕方ないことだから割り切りましょう。で、ダンジョンとか遺跡はどうなった?』
「そこはフィリアに手伝ってもらって、管理はラプラス達がやってる。上手い具合にオーパーツが出来たよ!」
『なら問題ないね。フィリア、ウィルアス、サトリ、ローゼは部屋で待機していて? レネは世界の観測を継続して行って。ラミは私と一緒に牛くん達……タウラス達を回収しよう。』
「「承知いたしました」」
「………。」 「分かった。」 「了解でっす。」 「分かりましたぁ~。」
私の宣言に返事をして散開していく眷属たち。そして私に、アストラルは「んじゃ私がシステム管理しておくわー。」と言って立ち去っていく。うんうん、流石我が分身体。やって欲しいことを分かっている。やっとこれでスタートライン。人類、つーか知的生命体がこの世界に誕生するのだ。どっちかと言うと【文化的な暮らしをする生命】と言うのが正しいのだが。上機嫌なまま私は羽を伸ばし、家の外へ転移を行う。場所は世界樹の目の前。そこで私は儀式を行う。私を中心に複雑な魔法陣が浮き上がる。そこの中に私はさらに情報を入れていく。私の世界の座標、渡る人数、彼らの種族、【ステータスシステム】との互換など、その情報は多岐に渡る。
因みにラミはあくまで保険で連れてきただけである。彼らに頻繁に接触していたのはラミだからね! つーか私だけだとヤバい。
だって私実はタウラスにも自分の本来の姿見せてないし。それとそこそこ成長しているし。私は龍だけど、姿だけ見れば西洋の竜に近いんだよねー。脊椎に沿って羽毛? が生えてるし、髭は無い。竜と龍が混ざった感じ。本質は龍だけれど。ただなー。タウラスにこっちの姿見せてないんだよね。多分。だから呼ぶときはラミがいた方がいい、気がする。人形態で呼べばいいんだけれど、それじゃインパクトが足りないのよ。
ぶっちゃけてしまえば、こういう細かいのは演出です。え ん しゅ つ !! 神様はそれらしくしておかないと威厳がどうこう、示しがつかないとか、なんか色々あるらしい。RだけじゃなくてMさんも言っていたので安心。
そんなことを考えながらも儀式は進む。彼ら、始祖人がこの世界に生まれるために。私の創った隔離世界から、この現実世界へと渡ってくる。
『私の声に応じ、此岸へと渡れ。汝らが名は始祖人。』
【界渡り】。世界を移動する術式。今回わざわざ『儀式』としてやっているのにも一応理由はある。それは彼らがこの世界出身だという事に書き換えているからだ。この世界出身というか、私が始祖人達に頼むとしていることは、人類を神の使徒として導くこと。彼らにはそういう役目を与える。それが別世界出身だと、私の恩恵を受けられないとか異世界の神様に介入されるとか、面倒なことがあるのだ。だから書き換える。
分かりやすく言うと転生させているのだ。ほんと、転移でも転生でも同じ結果にしないと使えないとか面倒だよね。
魔法陣が輝きだし、その光は臨界を迎える。そして…………………そこには34名の始祖人が転移していた。
…。………。………あれ、私がタウラスと戦っていたのって80時間くらいだったよね。そして、一時間につき一人こっちに連れてくるって言ってたよね。80人ちょい転移させた記憶があったんだけど? 隔離世界では老化しないし、意志の力で生きていける筈なんだけど? ……どういうこと?
『上様、天界基準の一万年以上の時が過ぎたのなら当然のことかと。』
『ラミ? どういう事かな?』
念話でこっそりと連絡してくれたラミが達観したように事実を教えてくれた。
『天界の1年とはこちらでは1000年です。』
『…………ん?』
『上様が外にいる時はこの世界基準の時間に対応しておられましたが、基本的に上様は天界基準の時間速度で生活しておられました。付け加えるならば、通常の人類は永遠の時間に耐えきれません。耐えきれている34名が異常なだけです。』
…………おっと? ちょっとそれは気付かなかったぞ? やべぇわ。ほんっとーに気付かなかったわ。ま、まぁ、神が与えた試練の言う事にしましょう。動揺を気取られるな!! 私は偉大な神様を演じなくちゃならんのだ! この期間限定で!!
『やぁ、タウラス? 元気かな? そろそろ使えそうだしお仕事をしてもらおうと思うんだけど? 私の為に、何より君たちの思いのままに、世界を創っていかないかい?』
「……アンタは……。いや、あの時の神か。……やっと呼び出したかと思えば、俺達に何を望んでいる?」
タウラス――【丑】の神格を与えた私の眷属。結構強くてお気に入り。――に話しかける。困惑し、私を見て警戒していた彼ら彼女らのなかで唯一私を見つめていた彼は、私の問い掛けに疑問で回答した。
よし、セーフ!! 第一段階突破!! これは儀式の一環だから真面目に神様やらないといけないんだよね! そんでもって、ここからが問題! 何を言おう!?
『前に言わなかったっけ? ……それじゃもう一度言おうか。君たちは私の世界でこれからやってくる多種多様な《人類》を導いて欲しい。そうして、彼らに独自の世界を築き上げさせろ。私は人の世界も愉しみたいんだ。だから面白可笑しい私の手駒兼娯楽になれ! そのための力もやるし、時間もやるさ!』
どうだ!! 神様っぽいでしょう!? 私の持つ神様のイメージはこんなんだ!! 大自然を眺めるのもいいけれど、文化の営みを見るのも面白いし、本心でもあるし!! さぁ、始祖人代表みたいなタウラスはどう答える!?
………彼は、少し、呆れたように笑ってこう答えた。
「お受けしよう、我が主よ。俺達に未来をくれるなら、そのためなら貴女の掌の上で踊る事でも受け入れよう。これからよろしく頼む、上様。」




