第13話 終わりの授業と卒業
「唐突な展開ががが。」
時が経つのは早いもので、そろそろ半年が経とうとしていた。もう既にみんな魔法も道具なしで使えるようになったし、ダンジョンもいくつか攻略出来ていた。本当に頑張ってきたと思う。何故かみんな特殊能力を持っていたから順調に進んだんだけれど。やー、でも私の力作のダンジョンが突破された後は私もムキになっちゃって難易度が跳ね上がったんだよねー。一応死んでしまわないように保険の魔法を掛けておいたから良かったものの、無かったら何人か死んでいたと思う。そんな訳で今現在私の目の前には死屍累々とユウキ以外の生徒たちが横たわっています。
「……む、むり………。」
「死んでしまうッス……。」
「難易度が、おかしいです……。」
うん、ちょっと反省しよう。絶対に難易度調整ミスったわ。むしろ何とか未だに探索中のユウキがおかしい。まー、うちの面子じゃ、あの子が一番チートだからねー。うん。だからね、彼が何故か私の設計ミスとしか思えないような難易度のダンジョンの出口近くにいても驚かないんだ。
……やっぱりおかしいな!? このダンジョン人間が踏破できる物じゃないと思うんだけれど!? 完全な暗闇のフロアとか、毒ガスが蔓延しているフロアとか本当に何で攻略できちゃっているのかな?! え!? まじでゴールしそうなんですけど!?
「…せんせーい。ユウキ君が見えてきたんですけど…。」
ダンジョンの出口を見ていたリドルくんから正直聞きたくなかった言葉が来る。本当に何なのユウキは……?
「しゃあ!! 先生! ダンジョンクリアだ!! 次は何だ!!」
「やー、どうすっかなー。まだ決めてないよ。」
「えー。今絶好調なんだけどなー。」
ユウキはまだ暴れたりないのか剣を振り回している。元気だなー。おかしいなー、さっきまでダンジョンで暴れまくっていたと思うんですがね? いったい何の神の加護を持っているんだか…。
………ん? あれ、これはもしかして……。
「皆注目。かつこっちに集合。誰かが転移してくる。」
私の表情が思いのほか堅かったせいか、生徒たちの表情もこわばっている。そんな皆を見渡しながら私は口を開く。
「座学でも少し話したと思うんだけれど、異世界転生で最も大切なことは危機感を高めること。生き抜くためには何が危険か、何がヤバいか察する能力が必要なんだ。例えば、今何かヤバいの分かるかい?」
そう私が言い終わると同時に予想通りにヤツが姿を現す。その光景を確認して、私は思わず声を荒げてしまった。
「今度はどんな無茶ぶりをしに来たの!? R!!」
それを受けてRは意味深な笑みを浮かべたのだった。
「ヤッホー! 御機嫌よう♪ そろそろ異世界へご案内しようかなと思ってね~? 来ちゃった♪」
「「「「「え、えええええぇぇぇぇ!!??」」」」」
いつものようにRは大混乱を巻き起こす。
「ってそう言えば期限の半年はもうすぐだものね。そりゃそうか~。」
皆からすれば寝耳に水かもしれないけれど、私はそこまで驚くことじゃな――
「だから皆の能力付与は今日中に終わらせてねー?」
「は?」
「じゃあねー!」
「え?」
「あ、準備だけはしておくから早めにやってねー。」
そう言ってRはまたどこかに消えていった。
…………え?
……つまりどういうこと? ……あ、ああ!!
「そういう事か!?」
「えー、これから皆に私からの加護をあげたいと思います。」
教室でいつものように話し始める。けれどもうこれが最後。私とみんなはこの先関わることは無いのだから。だからこそ、彼らに祝福を与える。私が先生として教えて来たこと、これは転生者として必要なことだったのだが、もう一つ、私が皆に与えたものがある。それは『加護』。ご褒美として皆にあげるよ、と言っていたものだがまだ転生、転移後用の加護に変えていなかったのだ。一応天界で発動するものは上げていたんだけれどね?
「加護ですか? どんなものが貰えますか?」
「あー、チャン君ナイス質問。貰える加護はなんとランダム! 私も何が入っているかはよくわからないんだ。」
私がこれから与える加護とは、私の神通力の一端である。そしてそれは力に変換され、個人に最も適応した《何か》に変化する。それは馬鹿みたいなパワーだったり、魔力だったり、スキルだったり、どのような形になるかは個人次第だ。
「ということで成績順に加護を多めに渡すから。一番はユウキ。続いてエミリー、リドルの順で三番までが特別の沢山あげるからー。」
《竜の加護》
私の説明の最後に唱えた言葉はそのまま現実へと変換されていく。キラキラした魔力の輝きが皆の体を覆っていく。
「つーことで卒業おめでとう。これからも頑張り―よ。」
「え!? 卒業ですか!?」
「いつの間に…。」
「ここに来て急展開ですねー。」
「やっと物語っぽくなって来たなー。」
意外と軽いな、皆。それでいいのか。
『じゃ、行ってらっしゃーい!!』
「「「「「おわっ!?」」」」」
「あ」
何か全員転送されていった……。いや、何かこうもっとしんみりすると思っていたんだけど!? 感動のお別れとかじゃないの!?
「まー主様にそんなこと期待するだけ無駄にゃ。」
「猫丸ちゃん。」
私の背後から現れた二足歩行の黒猫、猫丸ちゃんは手紙を持って来ていた。
「話は通ってるのにゃ。その座標にリナちゃんの元居た世界があるのにゃ。」
「おお、マジか。ちょっと展開に追いつかないんだが?」
「もう既に何人か勧誘しているにゃ。弟君が取られるにゃ?」
「うえっ!? マジかよ!? ちょっと行ってくる!」
私は慌てて界渡りの準備をする。その傍ら気になっていたことを猫丸ちゃんに聞く。
「ねぇ、ユウキ達のことなんだけれど、天界での出来事は忘れるように暗示が掛かってなかった? あれじゃ私の教えがどこまで聞くか分からなくない?」
「ああ、それかい? そりゃ天界について話されると困るからさ。」
その疑問には頭上からの声が回答してくれた。
「R、どゆこと?」
「僕らについて情報を持って欲しくないんだよ。面倒なことが起こる。身体は覚えているから君の役割は十分に果たされているよ。お陰でこっちも準備が整ってきたし。」
「ふーん。」
難儀なことだ。ま、私には関係ないんだけど。
「分かったわ。それじゃ、私は彼方に会ってくるよ。」
「送ってあげようか?」
「いらない。場所は分かったし。」
私は転移魔法を丁寧に構築していく。やっとだ。やっとあの子に会える。待っていてね。
誰にも聞こえないほど小さく呟く。
「お姉ちゃんは約束、忘れてないから。」
「面白かったら高評価お願いします!」




