第10話 竜の先生と迷宮攻略(視点・生徒の一人)
「今回は視点が変わります。」「著者の気分転換!?」
それは本当に突然のことだった。
「こんにちは。 ようこそ我が天界へ。」
僕たちを召喚した神様は笑顔で言った。僕たちはこれから転生するのだと。
いつものような日常がずっと続くと思っていた。友人とふざけ合い、学んで、大人になって、人生を全うして生きるのだと思っていた。
「君達には力がある。才能がある。そして…資格もある。故に僕が君たちに選択を与えよう。ここで消滅するか、未来を進んでいくか。」
僕と同い年のような外見をしたあの方の笑みは人のものだなんて思えなかった。
「はあぁっ!!」
掛け声と共に振り下ろした剣は目の前のゴーレムの持つ盾に阻まれる。それでも静かに、冷静にもう一体からの攻撃を避けながら一度引く。勿論ゴーレムたちも追撃をしてくるが、対処はしてある。
「させない!!」 「そこッスよ!!」
いつの間にか回り込んだ神崎雅杜が低姿勢で突っ込み、剣で足を切り払う。同じタイミングで僕の後ろから飛んできた鉄屑が一体のゴーレムの右腕を破壊する。僕も隙の出来たゴーレム達に追撃をしていく。
「うし、終わり!」
「リドルくんは奇襲お疲れ様です。」
「何だかこのエリアはゴーレム多くないっすか?」
マサトくんとお互いを労っていると後方から鉄とか石とかを投げて援護していたトムくんが疑問を口にする。
「…仕掛けがあるかな?」
「………やっぱり?」
「えー。またパズルとかは流石に嫌ッス……。」
はぁ、と思わず三人で溜息をついてしまった。
僕の名前はリドル・シュライザー。普通の学生だ、と言いたいが父が特殊な軍人だったので普通ではないことが確定している。父は超能力を専門に前線に立つ特殊な部隊に所属する軍人だ。それで僕も特殊な力が使えるらしい。父は炎を操れたが祖父は雷を操っていたので、僕も力が発現したなら二人とは違った能力となったことだろう。が、今ではもう関係のない話だ。
僕を含めた10人の子供たちはRと名乗る神によってこの世界にやって来た。『天界』と言われるこの世界は天国のようなものなのかとも思ったがどうやら違うらしい。ただ、ここは《戦闘能力を身に付けさせて別な世界に送るための世界》とも異なるようだ。
召喚されたっていう事だってよく分からなかったけど、何人かはすんなり受け入れていて驚いた。普通こういう状況は拉致を疑おうよ。
「ぶっちゃけただの拉致だから!」
どういう状況ですか、と馬鹿正直に尋ねた子への回答はこれで、目的と意図が読めなくてさらに混乱したけれど。
「よーし! どうせなら先輩の正直な意見でも聞いちゃえばいいかな?」
物凄く適当な説明、「君たちは僕の手駒となって色々頑張って貰います!!」というもの、の後に唐突に言ってくる神様。最早僕たちに選択権なんて無いようでそのまま消えてしまった。……正直本当に目の前から消えたことで神様なんだと思えるようになった。
「……なぁ、取り敢えず自己紹介とかしねぇか? 何かするにしたって知っておいて損はないだろ。」
そういう提案を受けて互いに自己紹介をした。ついでに何故か服装が統一されていることにも気付いた。
全員が自己紹介をした後何か話そうかなと思ったタイミングで、何処からともなくスクリーンが現れ、巨大なドラゴンが映し出される。呆気にとられた後、とんでもない暴露が行われた。
『後付け加えるなら神様マジ面倒くさくて、一番厄介だから捕まった以上「あ、終わったわ」って思った方がいいよ。』
僕たち10人とも全員が絶句した。ええー。もう既に不安しかないんですけど……? しかもその日はそれで終了。僕達10人はそれぞれに別の部屋を与えられた。
次の日から前日に映っていたドラゴンさんが僕たちの教師となった。人間の形の方が都合がいいから人型らしい。初回の授業後に聞いた。一回目の授業は凄いハードだったが。
普通いきなり生徒を別世界に飛ばすものだろうか? もしそうなら異世界怖すぎるんですけれど。何とかなったけれど。全員何とかなっていたけれど。先生は皆がここまで動けるものだと思っていたのだろうか? あくまで確認と言っていたので危なかったなら助けるつもりだったのだろうけれど。
その後からは魔力の使い方、武器の振り方(何故か使える人もいた)、罠の解説などを習うことになった。うん。全て実技で、だったのだけれど。
「にしても本当にどうなってんっすかねー、この迷宮って?」
「知らぬが仏じゃない? って意味伝わってるかな?」
「それは極東の諺かい? 僕たちの世界にはなかった…かな?」
授業の後に皆で行う情報交換ではいろんなことが分かった。魔力操作のコツ、武器の手入れの詳細、調べて気付いたことなどを皆で共有した。分かったことで重要なのは、僕たちは全員が違う世界から来ていること、リナ先生が凄く厳しい先生であること、先生の能力が『物質の創造であること』。
物質を無から創るなんて人類では出来ない。しかし法則さえ分かれば出来るんじゃないか、と思った王劉河くんが先生に聞いたらしい。何やってんのと思ったのは僕だけじゃない様だった。因みに先生の回答は「主神級の神格が無いと無理じゃない?」 だったらしい。つまり、先生は主神級の神格とやらを持っているようだ。だから何だという事だけれど。
「魔力操作は楽しいんだけどなぁー。これはしんどいよ~。」
「が、頑張ろう。それにもう少しで攻略出来るらしいじゃないか。」
そう言いながらも歩く速度は緩めない。本当に魔力操作の授業は面白いのだけれど、この『アスレチック攻略』はひたすらキツイ。女子は毎回悲鳴を上げている。勿論僕らの例外じゃないんだ。
「うわぁっ!?」
「うおっ!?」
「またかって怖っ!? 何この絵画!?」
この授業がキツイ原因は主に先生の趣味の所為だと思う。一回目の攻略で注意していた点が二回目以降で見られないのはつまらないと言って妖しげな罠をふんだんに用意したらしい。しかもホラーゲーム真っ青の恐ろしい奴。
迷宮の攻略が授業になってから一か月半は経っていると思う。けれど途中からこの恐ろしい罠によって攻略ペースは落ちている。普通のパズルとかもあって面白いんだけれど、恐怖のエリアが所々に点在するんだ。
今目の前にあるのは恐怖に引き攣った顔の少女とその後ろにいる鎌を持った恨み言を言ってそうな形相の女性の絵。しかも一部には穴が開いている。
「あ、この穴さっきのゴーレムの顔のパーツに似てる。」
「え、それって探して嵌めるタイプの扉って事っすかね?」
マサトくんの言葉に反応したトムくんだけど、物凄く嫌な顔になっている。でも彼の予測は間違ってない。
「このエリアのどこかにいるゴーレムの顔をこの『鎌の先端部分』に嵌めるのかー。」
ヤバいな、棒読みになってしまった。でも二人とも乾いた笑みを浮かべてるし別にいいか。
「これ嵌めたら動くかなぁ。」
「動くよねぇ。」
「そうっすねー。」
何が悲しくてこの恐怖の絵画を完成させなくてはならないのだろう。嫌だー。エミリーちゃんとシズルちゃんがトラウマになった「完成させないと進めない恐怖の絵画」ってこれだったのかなー。本当に嫌だなー。
『終了でーす。目印の魔法石を足元においてくださーい。』
僕ら三人とも安心して脱力してしまった。……授業終了の放送でこんなに安心したのは初めてじゃないかな?
「『目印用の魔法石』についてはまた次回に説明したいと思います。」
「面白かったら高評価お願いします!」




