幕間 小話集其の一
「閑話でっす!」 「弟君は素直なの。」
小話1 『辰 笑えない門で神を待つ』
「あああああ~~~~~!!!! もう!!! どうすんのさぁぁぁ!!!!」
ズドーン、バゴーン、と今日もどこかで爆発音という名の戦闘音が響き渡る中、執務室にいるリナ・アストラルは絶叫する。その声を聞いて呆れた顔をするのは後ろに控えていたレネだ。
「仕方がないでしょう。上様がご自身でお創りになったのですから。」
「でもこれはあんまりじゃない!? 何やってんだよ本体いいぃぃぃぃ!!!!」
「………とにかくやらねば終わりませんよ?」
「知ってる!! 分かっているんだけれども!!」
ダン!! と勢いよく世界龍の分身たるアストラルは備え付けの机を叩く。その上に空いてある紙を指差し、また叫ぶ。
「この天獅子って何なんだよ!? この世界にいないから創って、って言われても生態が《獅子の身体を持つ》、《体皮に金属を付着させる》、《大型の哺乳類》って不可能じゃない!? しかも《体に付いた金属は自由に外せる》のに《死んだ後に付着したらそのままの状態を維持する》!? どんな生き物だよおぉぉぉ!!??」
しばらくアストラルが絶叫した後、何事もなかったかのようにレネは切り出す。
「ところで『幻影スライム』と『六華の姫』についての報告がありますが聞きますか?」
「………………………………………………聞く……………。」
レネはコホンと咳払いをしてから報告を開始する。その際アストラルが向ける恨めしい視線はガン無視である。
「まず『幻影スライム』についてです。彼は順調に成長しているようですね。そしてやはり高い知性があると思われる行動をしております。今は《赤の樹妖精》の領域を抜けてこちらに近づいて来ております。このまま行けば3か月後にはこの《竜の里》に到着すると推測します。」
「そっか。アレも神格適応者かな? う~ん。そろそろ始祖人達も神格を手に入れられそうなんだし、本体早く帰って来ないかなぁ~?」
「次に『六華の姫』。こちらは上様が一番最初に創った樹妖精が進化した個体であることが確信できました。《原初の樹妖精の森》から動く気配は御座いませんが、かの森でこれ以上の発展は望めないかと。」
「うん、そっか。…報告ありがとうね。ただ天獅子のヒントにはならなかったかな~。」
そんなことを宣うアストラルには目もくれず、レネは静かに移動を開始する。
「それではこれから午、酉の訓練にあたります。上様もお仕事を放り出しなさいませんよう。」
失礼しました。と告げ、速やかに退出していくレネに開いた口が塞がらないアストラル。無情にも閉められたドアを見て彼女は思った。本体覚えてろ、と。
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小話2 『導の無い虎児は天を仰ぐ』
高校からの帰り道。いつものように僕は電車から降りて家に帰る。明日は水曜日だが休日。しかし、僕の気分は沈んだままだ。…どうしても気になることがあるから早足になっているけれど。
僕は酒井彼方。普通の高校1年生だ。今日は明日の準備のために早く下校している。明日は……僕の姉の命日だから。
姉さんの名前は莉奈。4年前に異常な変死を遂げている。享年は19歳だった。…本当に早いよね。僕が小学6年生の時に亡くなった。当時、僕は姉さんが死んだなんて信じられなかった。
姉さんが死んだことを知ったのは、ほぼ毎日連絡をくれていた姉さんからの連絡が三日途絶えたから。父さんも母さんも「弟離れしたんじゃないか。」と笑って言っていたが心配だったので、姉さんの友人に連絡を取って確認してもらったんだ。友人の真央さんも「あいつが弟離れ何て有り得ない。何かヤバいことでも企んでるんじゃ?」と言っていた。……うんまぁ、姉さんはちょっと、いや、大分変った人だったからそうかもしれないですねって返事しちゃったけれど。そして、姉さんは――――――肉片しか見つからなかった。
あまりの惨状に駆け付けた警官も青ざめた、らしい。僕は確認できなかった。小学生だったし、姉さんは少し遠い大学に進学していたから。確認してきた父さんも青くなって帰ってきた。これじゃあ弔いすら出来ないかもしれないって言っていた。でも、姉さんの遺灰は何とか用意できた。散らばった肉片を回収してくださった人に感謝しなくちゃ。父さん曰く、「お前は見なくて正解だったよ。」今でも父さんは夢に出てくるらしいから。
……姉さんは僕との約束を果たす前に死んでしまった。それがどうしても納得できなくて、姉さんは約束は必ず守ってくれたから、いつかひょっこり帰って来てくれるんじゃないかと思いたかった。でも、姉さんが死んだという事は現実だった。
「はぁ……。」
……切り替えなきゃ。僕はこれから調べ物をしたいから。こんな気分のままじゃ集中できない。姉さんなら「それはそれ! これはこれ!」って言って切り替えそう。凄くサバサバした人だから。
家に到着。鍵を開けて自分の部屋に行き、カバンを下ろす。手荒いとかして姉さんの遺品がある部屋に行く。どうしても納得できないこと。それは姉さんの名前。
僕は昔、姉さんのことを「りな姉」と呼んでいたらしい。……らしい、というのは僕はその記憶が無いから。いや、少し違う。記憶はあるけれど違和感もあるんだ。僕は姉さんのことをそんな風に呼んでいなかった筈だから。
でも両親も姉さんの友人もそんなことはないと言う。僕は姉さんの名前は莉奈じゃないって思うのに。確信しているのに。
だからこんな風に今までのアルバムとかを見ているんだけれど、全部「酒井莉奈」なんだよねぇ………。絶対違うんだけれど、証拠が見つかんないんだよねぇ……。
「あ~、本当にどうだったっけ…。違うと思うんだけどな~。」
ガサ入れが如く証拠を探す。ひたすら探す。一年くらい探しているけど見つかんないんだよねぇ。
と、その時何処からか硬いものが降ってきて頭にぶつかる。
「痛っ! ……ナニコレ?」
ブリキの缶? あ、これお菓子が入っていた奴か? 中に何が、ってこれはもしや。
「……姉さんと一緒に作ったタイムカプセル……?」
あー、懐かしいな~。作った後、埋める前に引っ越しするかもって言われてそのままにしておいたんだよね~。……今の今まで忘れていた。どうしようか?
「折角だし中身でも……っ!!!!」
見つけた。まさかここに証拠があったなんて。それは僕の手紙に書いてあった一文。
『おおきくなっても、みらいのぼくははるねぇとなかよしですか?』
「そっか……ハル姉だ。僕はそう呼んでいた…!!」
納得した。ハル姉だとすっごいしっくりくるもん。そうだった、なんで忘れて―――
「……あれ? じゃあ、莉奈って………誰?」
「注意! リナ・アストラルは神様の方のリナの分身です。」
「誰だコイツ!? っと思った方は読み返し推奨!」




