第6話 始業のベルは不穏と共に
「何だか話が繋がらないな、という部分は後々の展開に関わってくるやつなので気にしないで欲しいな♪」
「……時間、かな…。」
私の生徒たちの思わぬ実力を確認した後、私が課した試験の時間が終わりそうなのを確認した。実はこの試験、『緊急時にどれだけ安全に動けるか』、『危険を回避する方法を知っているか』、『その上で目的を達成できるか』という3点を確認するためのものだった。そしてこの場合の目的は『隠されたスキルカードの捜索』。
スキルカードには、私が与えられる特殊技能が書かれており、この試験会場という名の簡易世界から帰ってきてから与えられる。だから皆が戦えていたのは元からの能力だということになる。……ちょっとおかしいよね。だって既に何人か戦えているんだけど!? 『普通の』人は戦えないと思うんだが!? どういうことなの!?
………その辺りはRの采配、もとい嗜好なんじゃないかなって思っている。Rは自分の好み、「面白そうだから」という傍迷惑な思考で、自分のため(笑)に物をそろえることがある。この場合は『手駒』だろう。使い勝手の良い、もしくは「私の反応が面白いものだと良いな」とも言う、人材をわざわざ揃えたんじゃないだろうか? ……なんかこれが正しいように思えるな…。あいつはほんっとに性質が悪いな!!
そんなことをつらつら考えている間に生徒たちが帰還する。……なんか凄いご機嫌なワン君が気になるな。
「はーい。みんなお疲れ~。一回目の試験はどうだったかな?」
「めっちゃ楽しかった!!!」
「そっかー、ワン君凄い楽しそうだねー。」
「うんもう凄いね! 見たことない植物とか鉱物とかあったし、ゴーレムも初めて見たし、転移? も初体験だったし――――」
「そっかー。後で聞くねー。」
わぁー、何ていうかその、圧が凄いなー。めっちゃ興奮して詰め寄られると暑苦しくて仕方がないなー。…ワン君の隣で呆れているチャン君が何というかまぁ、頑張れ!! って感じなのが面白いな。
「皆はどうだったかな?」
「面白かったよー!」
「なかなか無い体験をさせていただきました。」
「結構楽しめたぞ?」
「ゲームっぽくて熱中したッス!」
「えっと、勉強になりました…。」
今だに興奮しているワン君をスルーしながら聞いてみると、全員から面白かったとの感想を頂きました。そっかー。私もゲーム扱いしていたからね? 人のこと言えないけれど君らおかしくね?
「私も一応見てたんだけれどさ、戦闘能力を持ってた人は何で? 正直あそこまで戦えるなんて思っていなかったんだけど。」
これだけは確認をしたいから聞いてみると、皆は顔を見合わせる。
「僕は父が軍人でしたから。」とリドル君。
「私は何となく振ってるの―!!」とイイ笑顔のハウドルちゃん。
「家が道場をやっていまして…。」とマサト君。
「ちょっと色々あったんッス。」と暈した言い方をするトム君。
「剣くらい努力で何とかなるだろ。」と適当に答えたのがユウキ君。
「………うん。何かもうそれでいいや。で、エミリーちゃん達もかなりおかしかったよね?」
かなり、の辺りを強調しながら聞く。お願いだから頭痛の原因にはならんでくれ。
しかし、現実は基本的に無情なのだ。
「詳しくは分からないけれど家系的に特殊なことが出来るのよ。」とエミリーちゃんが言えば。
「才能ですかねぇ~。」とのほほん、と微笑みながらレイチェルちゃんが言い。
「えっと、危険なものは何となく分かるんです。」とシズルちゃんが言う。
うん。もうこの時点で察してきたけれど一応確認しておこうか。
「チャン君、ワン君、君達も何か『普通じゃないこと』が出来たりする?」
「はい! 物の構造を見ただけで当てられます!」とワン君。
「……隠れるのは得意ですよ?」とチャン君。
思わず教卓に突っ伏した。やりやがったあの野郎!! よりによってそういう事かよ!?
災厄。マジ災厄(注・誤字にあらず)だ。うわあ、もうそんなレベルの話なんだ……。聞かなかったことにしよ。
バッと顔を上げて全員を見渡す。
「ちょっと休憩したら魔法の授業をするから! それまでに用意した席に座っててね!」
用意していた座席表を教室の壁に貼り、「休憩は15分です!」と設置しておいた時計を起動して転移魔法を起動する。目標地点はRの部屋。あそこは私が自由に使っていいらしい。それってどうなの? って思ったけれど、どうせ今はRはいないから気にしないでおく。
さて、魔法の授業で物凄く便利そうな教材があるからそれを使いましょうか。という訳で教材を人数分創って、ついでに《見本》も用意する。……私は教師。今はそれだけを考えましょう。面倒事、ダメゼッタイ。
「と、いう事で魔法の授業を始めます。」
『はーい!』
うむ。元気がよろしい。そして全員が突然の転移に対応できるように身構えております。……信用ねぇな! しょうがないけれど! 魔力回路創らないといけないんだから一回目は雑にしておこうって決めてたんだもん!! 色々予想外だったんだもん!
「はい注目! 今回は転移とかしないでこの無駄に広い教室でやります。ってワン君! 露骨にがっかりしない! 何を期待してるんですか!! 全く……さて、皆さんにこれを配りまーす。」
ワン君ブレないな…。もう君はそういうキャラだってことにしとくよ。神様も諦めが必要。鞄から灰色の物体を取り出して皆に見せる。これが魔法の授業の教材である。今回用意したのは《白亜の涙》の劣化版金属。名付けて《涙の欠片》。粘土みたいだけど一応金属ですよ?
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名称 涙の欠片
ランク A
特徴 魔力が変化し結晶化する際に、金、白銀、銅、鉄等が混ざった結果、生成される金属。魔力に沿って形を変えるが、形状が変わってしまうとその形が保たれる。ただし何度か変化させてしまうと変性が失われてしまう。
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便利なんだけど流石に《白亜の涙》はポンポン創るもんじゃないかなって思ったから、その劣化版を作っておいたんだよね。そして私の世界のあちこちに埋めていたんだ。それでも希少な性質だってことで埋蔵量は多くない。まぁ、私はそんなの関係なしに創るんだけど。
「そしてこれを使って皆にお手本と同じものを作ってもらいます。」
教卓の上に盾を置く。円盾と呼ばれる片手用の盾だ。いいですかー、と確認すればリドル君が疑問を口にする。
「先生、それはどういう事ですか? 魔法の授業と関係していないように見えますが?」
真っ先に質問するかなと思っていたワン君は盾を凝視していた。うん。何か安心感すら感じてきたな。ワン君を温かい目で眺めながら、リドル君に回答を告げる。
「これ、一応金属なんだけれど魔力を込めると柔らかくなる性質があってね? 魔法を教える前にまずは魔力の制御を覚えてもらわないといけないから、魔力制御の練習台ってわけ。それと魔力に関してはこれから使えるようにするよ。」
私の答えに対し、生徒たちが困惑するのを見ながら片手に魔力を集める。指向性良し、術式良し、対象範囲良し。……これ、制御に気を使うから嫌いなんだけどなー。…発動。
「発現!!」
「面白かったら高評価お願いします!」




