第5話 ドラゴンさんは生徒が苦手?
「ふっふふーん♪ さてさて、早速ですがどんな状況かなー?」
情け容赦は一切いらない。さっさと使える人材(意訳)になってもらわなきゃならない。
私が10人の生徒たちを問答無用で実践訓練を行っているのにもちゃんとした理由がある。まず、彼らに私が絶対に逆らってはいけないという認識をしてもらう必要があるのだ。私は今回、神であるという事は直接は言っていない。しかし、彼ら全員が私のビデオレター(笑)を見ている以上、知っていると見ていい。それなのに気付いた者と気付かない者の差があった。私が独自に評価したランキングで一番良い子は雄輝君。ちゃんと現状を把握しようとして虎視眈々と何かを狙っていた。その『何か』は悟られないようにしていたから分からないけれど。一番良くないのは王君とハウドルちゃん。ちょっと空気を読まな過ぎる。あれじゃあ異世界でも簡単に利用されてそのまま退場することになりかねない。例えどれだけ戦闘能力があってもだ。もう少し裏を考えられるようになってからあの教材を使おう。
次に私の教育方針の関係。私の性格上、教え導くことなんて不可能に近い。諭すくらいなら出来るかもしれないけれど、体験した方が速いと思う。後、教育期間は半年しかないし。
そして最後の理由は一回目で過激な指導方針にしておいて、こっちに連れてくる際に疲労状態になってもらって魔力回路をこっそり付けておくため。これはガチで重要な要素なので本当に大切なのだ。魔力回路が無ければ魔法はもちろん、ご褒美の恩恵が働かない。それだと転生も出来なくなるし、これからの授業にもついて行けなくなるし、ロクなことにならない。……Rが天界に連れてくるときに付ければ良かったんだけれども!!
という事で咄嗟に判断して授業内容を決めたんだけれども、送った簡易的な修行用世界でどんな風に過ごしているかがこれからのカギとなる。つまり私は生徒たちを観察でき、そこから彼らに合った授業プランを決められるという訳なのだ。
黒革の手提げ鞄を開く。その中は真っ黒であり、何も入っていないように見える。はい。ここまで言えば分かるかもしれないけれど、この鞄は所謂マジックバックなのだ! 空間魔法や重力軽減、認識阻害、対象の意識から望んだものを取り出せるようにするための術式など、私が学んだ魔法の全てを総合して創った特別品である。……本当に大変だった…!!
って今はそんなことを気にしている場合じゃない。鞄から『千里眼の水晶』を取り出して机に設置。そのまま起動させて空中に生徒たち10人を見られるように10画面に分割したスクリーンを映し出す。『千里眼の水晶』は特定の相手をどこからでも見られるように創ったマジックアイテム。将来的な利用方法は面白そうな奴の行動を映画鑑賞の様に観察できるように改良して娯楽にすることだったりする。今はそこまで出来ないけど。
そんな風に暢気に考えていた私はそのあまりに衝撃的な映像を前に硬直することになる。
「…………はい?」
水晶に映っていた光景は『何故か』斧を持って障害物となっている森林地帯をバッサバッサと切り払いながら進むハウドルちゃん、その後ろにいる静は適切に罠を見破り、レイチェルはその辺にある物から道具を作ってお手製と見られる鞄に入れていた。
さらに、問題児であろう王君、なぜ君は張君と一緒に私が創った植物型の魔物に追われているんだい………!?
次、リドル、トム、雅杜の三人組。物理攻撃(素手、投石)で罠の一つ、設置型ゴーレムと格闘中。だから何で!? 君達そういうのRから教えてもらっていないんじゃない!? そうだよね!? リドル君は何の武術!? 雅杜君は何でそんなにキレッキレの空手家みたいな動きが出来んの!? トム君!? 君の投石の飛距離と命中率おかしくねぇ!? 40mは離れてるよねぇ!?
エミリーちゃんはさらにおかしい。砂漠の上を高速で移動している。足場はすんごい悪い筈なのに100m14秒なんですけど……!?
「おかしい……!! 絶対おかしい……!!」
極めつけは雄輝君。何で私がこっそり創っておいた隠しエリアに到達して、憲兵型ゴーレムと『剣で』戦っているのさ………!!!
「いやどーいう事なのこれ…!!? 一般の『バンク』にいる人類はこんな動きは出来ないからね!?」
駄目だこれ。私の用意していた教材じゃ駄目だ。彼らにとっては意味がない。……もしかしてだけど、生徒たちは『バンク』について説明を受けている? いや、それも違う気がするけれど……。
どうしよう。牛くん呼んで戦闘訓練? やり過ぎる未来しか見えない。私と戦闘訓練? もっと駄目だ。……戦い方を見る感じ、いい線は言っているんだけれどその所為で手加減しにくいね…。でもあんまり加減しないでやると絶対死んじゃうから、いい感じに……いい感じ……。………………………………。
「無理だよおおぉぉぉぉ!?!!?」
いや本当に何を教えてやればいいのさ!? なんちゅー中途半端な所で私に引き継ぎやがったんだ、R!!!
「よし、落ち着け。……もうみんなに何が知りたいか聞けばいいんじゃね?」
若干自棄になっている気もしなくないけれど教師役は頑張るか……。取り敢えずあっさりと私の創った試練がクリアされるのを見ながら帰ってきた皆になんて言おうか考えながら待つことにした。
「面白かったら高評価お願いします!」




