第1話 天界にて
「今回は一話だけしか更新できないかも……。」
天界。そこは白い世界。ただただ白い世界の大きな館にて大勢の天使たちが慌ただしく走り回っていた。彼らは全員が作り物の様に端正なその顔に焦燥を滲ませながら駆けている。そんな状況にて館の主は……
「R、正直に言いなさい? 貴方確信犯ですよね?」
「そうだね。これはちょっと、いや、大分酷くない?」
「「主様、あんまりだと思います(にゃ)。」」
「おっとー? 僕の味方ゼロかな?」
女性陣に詰問されていた。
数分前。リナとRは天界にやって来た。
「ただいまー!!」 「お邪魔しまーす。」
「「お帰りなさいませ(にゃ)。」」
「R、お帰りなさい。リナちゃん、いらっしゃい。」
元気よく声を掛けるRと、面倒くさそうに挨拶するリナ(人形態)。そんな二人を出迎えたのはメイド服に身を包んだ猫耳少女と、狩衣の上に袿を羽織ったような格好の狐耳を生やした女性、そして黒装束を着たMだ。
ふと気づいたようにリナが首を傾げる。
「なんか天界の空気いつもと違くない? 猫丸ちゃんも人形態だし、えっと、狐花さんでしたっけ? 私天界で会ったこと無くないですか?」
「…ええ。現状、そこのRがやらかしまして、その緊急事態の収拾にあたっているんです。」
Mが重々しく返答する。リナは顔を引き攣らせた。
(100%面倒事じゃん!!!)
キッとRを睨みつけるとRはそっと目を逸らす。
「いや、うん。僕は転生者候補達とお話ししてこないといけないから詳しい話はMから…」
「主様、それは既に終わっていますにゃ。狐花ちゃんが終わらせましたにゃ。」
猫丸が被せる様に言い放つ隣で、狐花はリナに自己紹介を済ませている。そっと逃げ道を塞ぐようにMはRの肩を掴み、にっこりと笑う。ただし、その眼は吹雪よりも冷たく光っている。
「今さっき新たに『バンク』が崩壊するという伝令が来たのですが? 詳しく話しなさい?」
「は?」
『バンク』。それはいくつか存在する魔法が禁止されている世界だ。数多もの世界が存在する中で、神々が自身に信仰を効率よく集めるために創った機構の一つである。具体的には扱いやすい知的生命体を繁殖させる世界を創り、そこではなるべく不純物が混ざらないように魔力を排除して、彼らを殖やしながら保存することが目的である。そして、リナがいた世界も『バンク』の一つである。
「えっと、まあ、それは事実かな~。RHIAIS地点の『バンク』が駄目になるっぽい?」
「つまり、『バンク』が生まれ変わるから転生者候補達を連れてきたという事ですか?」
『バンク』はどうしても矛盾が出来てしまうらしく、定期的に崩壊と再生を繰り返すのだとか。『バンク』が崩壊する前に、その世界の何人かは別世界の支配者が連れ出すことが出来る。再生した『バンク』には別の『バンク』から記憶消滅処理をした人類を連れてきて殖やすのだとか。
「うん。そんな感じ~。」
「……もしかして私もそうだったりするの?」
胡乱げな顔をしながらリナが聞くとRは、そっと目を逸らした。
「「「「……………。」」」」
((((あ、こいつやったな。))))
「いやね? そういう事じゃなくてね? 誤魔化すのに必要だったというか何というか?」
沈黙に耐えかねたようにRが弁明するが、時は既に遅し。
「R、正直に言いなさい? 貴方確信犯ですよね?」
「そうだね。これはちょっと、いや、大分酷くない?」
「「主様、あんまりだと思います(にゃ)。」」
「おっとー? 僕の味方ゼロかな?」
「「「「当たり前だ(にゃ)!!!!!」」」」
私はふう、と溜息をつく。目の前には正座で座るR。彼は首に「私は悪い子です」と書かれた紙を掛けている。取り敢えずRを皆で〆たけれど……。うあー、マジかー。
「……まさか故郷の世界が崩壊することになるとは……。」
「……本当にうちの馬鹿が迷惑をかけています……。」
うん。今回崩壊する『バンク』は私が居た世界なんだよ。今現在私の家族がいる世界なのよ。……両親はぶっちゃけ崩壊に巻き込まれても自然の摂理だって何とか割り切れるんだけど、弟が死ぬのはやだなー……。
いや、両親が嫌いってわけではないよ? めっちゃ良い人たちだとは思うよ? でもまあ、弟は別格だというか何というか。
「って訳で私は彼方さえ死ななければ問題ないよ?」
「思い切りが良すぎるにゃ。」
「かなた、とはどなたですか?」
「あ、私の弟の名前でっす、狐花さん。」
「という事はそれさえ何とかすればリナちゃんが手伝ってくれる?」
「貴方は!! 反省を!! しなさい!! 世界の命運を弄ったんですよ!!?」
「あ、はい。ごめんなさい。」
怒り心頭のMがRにお説教をしている間にどうにかできないかな~。
「ふむ。だが、崩壊は我の力を持って防いである。と言っても遅延程度だがな。」
唐突に声が響く。私が驚いて声が聞こえた方を見るとRとそっくりな少年が壁に寄りかかっていた。
Rの外見は人形のような完璧としか言いようがない美少年だ。さらさらの銀髪、クリッとした銀の瞳を可愛らしいという表現が当てはまる。しかし、その少年はRと同じ外見でありながら髪と眼の色は黄金だ。冷ややかな雰囲気を持ち、大人びた“神”らしい雰囲気を持つ。
「え、どなた?」
「ああ、そこの娘っ子は初対面か。我はこ奴らの同類よ。O、と呼ばれておる。」
「えっと、O、さん?」
「「お帰りなさいませ(にゃ)。」」
私の隣で猫丸ちゃんと狐花さんも礼をする。という事はRの仲間?
「リナ、といったか?」
「あ、はい。そうですけど。」
「うむ。済まぬがRの計画に乗ってやってくれ。そうすればお主の弟を救う方法が取れるぞ。」
「……本当? 嘘だったら私も暴れるけれど。」
「嘘など付かぬよ。お主も考えればわかるが、弟とやらをお主の眷属にしてしまえばよいのだから。Rの手伝いをすれば許可も下りよう。」
何ですと⁉ た、確かにそうかも。確か『バンク』の管理者ってRの知り合いだって聞いたこともあるし、それくらい何とかなりそうかも。目から鱗が落ちる気分だわ。その手があったか~。
「じゃ、協力します。」
「うむ。助かる。我は所用があってお主とはあまり会わぬと思うが、Rの手伝いは多い方が良いからな。……さて、我はRに用があったのだが……。」
Oさんが、チラリと私の横で叱られているRを見て一言。
「巻き込まれたくないから出直そう。猫丸、一応来たことだけ連絡を。」
「承知しましたにゃ。」
そのままOさんは颯爽と去って行った……。バタバタと廊下側から天使たちの駆けまわる音を聞きながら私と猫丸ちゃんと狐花さんは顔を見合わせる。
「…お茶を用意するのにゃ…。」
「まだお説教終わらなそうだしね……。」
「主様……。」
大丈夫かよ、緊急事態じゃなかったのかよ。…ま、いっか。こういう時は思考放棄という選択が精神衛生上宜しい。私はRから貰った書類を見ながらお茶を楽しむことにした。
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