38話 暇つぶし 鬼ごっこ
水をバシャバシャとフィリアに掛けて後ろ足に付いた血痕を洗い流していく。フィリアの毛並みは白くて綺麗だからこういう汚れはどうしても目立ってしまうため、落ち込むフィリアを少し強引に引っ張って水辺まで連れてきた。勿論近くにある水辺はラプラスに聞いた。まあ答えたのはレネなんだけど。
「レネ、別に私に付きっきりじゃなくてもいいんだからね?」
「現在特に問題は発生しておりませんので。」
…レネの説得はあきらめた方がいいかもしれない。
そんなこんなでフィリアを洗っている訳だけど、フィリアはまだ落ち込んでいる。えっと、うん。
……君さ、初めて会った時草原で大暴れしてなかった? 間違ってもこんなことで落ち込むことなんてなかったよね? いつの間にそんな食いしん坊キャラになったのさ?
いや、いいけどね? 小さなことでも気分が変わるってことは感受性が豊かになってきてるってことだからさ~。
フィリアは基本的に賢いのだが、何も知らずに育ってきたのだろう。生き物の基本的な欲求が薄いのだ。それこそ始めのうちは、三大欲求のどれにも興味を示さないわ、誰かに認めてもらいたいという承認欲求もないわ、群れで暮らしたいっていう事も、安全に生きようとすることもどうでもいいって感じだった。…ほんと良く生きてきたなって思ったよ。
なのに最近は食事に関心を持つようになったし、感情を出すようにもなったし(今回みたいに)、大分喜怒哀楽がはっきりしてきた。いい傾向だね。
そんなことを考えながらフィリアを洗っていたら、私の暇つぶしになる&フィリアの気分転換になりそう&フィリアの現在の能力を確認できそうな、一石三鳥な遊びを思い付いた。
「と、いう訳で! 鬼ごっこしま~す!!」
イエーイ!! と騒ぐ私を不審そうに見るフィリア。やめろし。別におかしくなったとかではないから。
「ふふん。フィリアは私と勝負したくないのかな?」
その瞬間、戦闘態勢に入るフィリア。いやいやいや、手のひら返すの早いわ。呆れながらフィリアにルールを教えていく。
「すっごく噛み砕いて説明するけど、私が追いかけるからフィリアは触られないように逃げるんだよ? その間妨害も可能。そして私は転移魔法を禁止する。鬼ごっこって言ってもそこまで長くやるわけではないし、人数もいないから一回私が捕まえたら終了。制限時間は一時間に設定しとくけど、逃げきれたらフィリアの勝ち。私がフィリアに触ったら私の勝ち。OK?」
フィリアは理解したのか鼻息荒く頷いてくれた。おおう? 急に元気になったのかな? うーん、やっぱりこういうしっかりと体を動かす機会があった方がいいのかね? ちょっと考えながら一時間で砂が落ちきる砂時計を創る。時間を測るときは砂時計を使う。これぞ様式美ってやつですよ!! それと念のためだけど、砂時計の守護と審判訳としてその辺にいたラプラスに依頼しておく。
「1分経ったら追いかけるからね~。…さて、ゲームスタート!!」
私の掛け声と共に砂時計を動かす。その瞬間フィリアは駆け出して行った。…周囲の木々を薙ぎ払いながら…。……ラプラスちゃんの視線が痛いんですけど…。
「うっし、一分経った。追いかけますか!」
いざ追いかけようというタイミングで気付いたんだけど、私のこの分身体の全力って私も出したことないんだよね。…それの検証にもなりそうだわ。
よし。まずは全力でジャンプしてみる。多分かなり高くまで跳べるから、何回か跳べば上から探し出せるんじゃないかなあ~。 という事で実行。
「せーのー、よいしょーーー」
気の抜けそうな掛け声だったけど雲の上まで行ったね。…マジ? 落下する時痛そう。因みに上空8000㎞くらいまで行った模様。逆に地上が見えなかった。後、落ちた時はそんなに痛くなかった。ステータスの暴力か…。次は高度1000㎞に抑えて跳躍。これくらいだとまあまあ探しやすいかな。自分の視力が気になる今日この頃。
「あ、フィリアみっけ。」
この後6回跳躍してやっと見つけた。680㎞くらい離れた所だったので全力疾走で向かう。てかフィリア大分遠くまで行ったな。…えっと、4秒くらい走っただけでフィリアの気配を感じたんだが。この身体スペック高過ぎない? うん、高いに越したことはないんだけどねぇ。
さてと、こりゃ簡単に捕まえられるかもな~。だってもう気配見つけたし、フィリアの妨害は大体読めるし。全部この身体の高スペックの所為だけど! そう思って油断していたらフィリアの気配が消えました。
「あれ? マジで?」
この身体のスペックをフルに使っても察知できない。それ程完璧に気配が消えている。ちょっと前まで気配を消すことすら出来なかったのに?
「魔力感知にも反応なし? 転移魔法でもなさそうだし…。あれ? もしかしてヤバい?」
ちょっと焦ってきた。脳筋なフィリアがここまでやるなんて思ってもなかったからね。反省しよう。…じゃあ、炙り出しましょうか。
大規模な魔法陣をいくつも展開していく。ただし、それらは全て透明かつ感知できないように隠蔽してある。魔法陣の上にあるものは確認できるため、魔法陣でサーチしていくよー。炙り出すって言っても大破壊をするわけには行かないからね、これを使う訳よ。
「今度こそ捕捉したか。」
フィリアの下に一直線。今回はしっかり隠蔽魔法で気配を消して接近するよ。…最初からこうすればよかったわ。あ、見えてきた。まだ気づいていないから後ろから近づいてっと。
「捕まえたーっと!?」
バックステップで後ろ蹴りを回避。からのフィリアにタッチ!!
「残念! 私の勝ちだよー!」
ふっふっふ! 惜しかったね! フィリアはめっちゃ悔しそう。いやー大分焦ったけどまー、何とか勝ちましたよ!!
悔しがるフィリアを連れて転移魔法で砂時計のところまで戻る。時間はってほとんど砂落ちきってるじゃん! マジで危なかった……。
「流石私の眷属だわ~。…うん! ご褒美上げちゃう!!」
植物を創るくらいなら一瞬だもん! 手を翳して作るのはニンジン。馬と言えばこれだよね!! あと、リンゴとかいくつか野菜を創り出す。
「フィリア~。食べていいよ~。」
創ったやつはフィリアの前に置いておく。フィリアは匂いを確認した後少し齧って味を確認して猛然と食べ始めた。……凄い食べるね……。5kgくらいあったんだけどあっという間に無くなっていった。
フィリアが満足そうだしいっか!!!
「面白かったら高評価お願いします!」




