獣伝2 闘争の果てへ
「今回は間章(?)です。」
彼に自我が芽生えたのはいつからだろうか。初めからだったのかもしれないし、途中から手に入れたのかもしれない。それは彼自身にもわからないことだ。
彼が初めて意識したことは敵の倒し方だった。どうすれば他の生き物を倒すことができるのか、その時からそればかり考えていた。それもそうだろう、彼は戦う事しか知らなかったのだから。戦いは彼を奮い立たせ、敵を倒すことは彼に至上の喜びを与えた。彼にとっては全てが打倒すべき敵であり、闘争の相手だった。
強い相手を探し、彷徨い続けた彼はあることが気になるようになった。それは自分から隠れようとする弱いもの。それらは簡単に殺せるのだが、何匹か倒す間に残りはすべて逃げ出してしまう。気にすることすら無いはずなのに、その光景は彼の心に残った。
それからだ。彼が逃げるものに対して容赦をしなくなったのは。あの光景が蘇り、冷静さを欠けてしまうようになったのは。その感情を持て余すようになった彼はさらに戦いに没頭するようになっていった。より強くなるために、より長く生きるために。
戦いやすい場所に陣取り、その日も彼は戦っていた。この場所は居心地がいい。幾ら屍を積み上げても戦いを挑む者がいる。そうだ、それでいい。もっともっと戦いを。
だが、その日はいつもと違った。その強者の気配に彼の首筋の毛が逆立ち、本能が刺激される。
――――――強い、今までの何よりも。――――――
高ぶる感情のまま戦いを挑む。その強者は見たことのない姿をしていた。小柄だが、強力な武器も持っていた。知らない相手。知らない力。全身を駆け巡るは歓喜。これほど強い相手と戦えることに感謝の念すら抱いた。だからこそ出し惜しみせず全力で挑んだ。
しかし。
「起動しろ!! 《竜の咆哮》!!」
強者がそう鳴くと同時に崩壊が訪れる。咄嗟に張った障壁も意味を為すことなく崩れ、彼の身体を焼いていく。衝撃が突き抜け吹き飛んでいく。
――――死ぬ?――――
嫌だ。こんなところで終わることなど認めない。まだ戦える。まだ……。
足音がする。奴が来てしまった。何とか動こうとしてこの身体では抵抗も出来ないことを知った。…とうとう自分が死ぬのだ。今まで散々敵を屠ってきたように。そう思っていたが……。強者はそれを望まなかった。
嗚呼、理解した。その表情が、私と同類なのだと理解させてしまった。では、また全力を尽くして戦おう。私が私として存在するために。例えこの身が壊れようとも私は止まらない。止まることなどない。だから、強者よ。油断などしてくれるなよ?
鎧を纏い、その身一つで強者に立ち向かう。奴は手に持つ刃を振るい反撃する。拮抗しているように見えながらも、傷を負っていくのは私だけ。それでも諦めはしない。必ず隙は出来る。その一瞬を付き、戦況を変えてみせる。怒涛の勢いで攻撃し続け機会を窺え。
―――今だ!!―――
間違いなく届くその一撃、頭部の鎧から槍を創り放った槍撃は、奴をとらえることは出来ず、代わりに奴に隙を晒すこととなった。
「甘いね。」
頭上に一瞬で移動した強者は刃を振るい、彼の胴体を深い損傷を与える。それだけでは止まらないはずの彼はたったそれだけで倒れてしまう。
―――何故だ!?―――
困惑した彼に近づき、強者は言う。
「教えてあげようか? 何で倒れたのか。何で勝てないのか。」
私はますます困惑する。何のことだろうか?
「インストールしたげる。それで君は理解するよ、『フィリア』。」
強者は彼に手を翳す。すると莫大な量の情報が彼の頭の中に入ってくる。同時に焼き切れるような痛みも。
「大丈夫。君はもう一人じゃない。私の眷属で、大切な『仲間』。だから私は君を見捨てないし、力も貸すよ?」
何のことだ。それよりも今はこの痛みをどうにかしなくては。これではもう戦えない。
「戦わなくてもいいよ? 君は私が認める。君は君としてしっかり生きている。創造主として宣言するよ。…君の“怒り”も“悲しみ”も私たちは知っているから。」
…分からない。
「そうかもね。じゃあ教えよっか。だから今は私と旅をしようぜ? きっと面白いよ?」
……私は一度ならず二度も負けたのだ。勝者の言う事に従おう。
災厄の馬は何も知らない。自分のことすらも良く知らないのだから当然と言っていいだろう。だからこそ彼は学び始める。強くなるために。生き抜くために。……世界の創造主の下で。
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