獣伝1 一つの結末
「ちょっと…シリ…アス…?」
Side~名無しの猛牛~
戦い始めてどれくらいの時間がたったのだろう。いや、そもそも何のために俺は戦っていたのか。それすら分からなくなった。ただ、ひたすら目の前の少女を打倒したくて戦った。不思議な少女。何を考えているのか分からない。だが、神を自称する彼女はそれに相応しいと思える程強かった。…もう身体は俺の意思に関わらず動かない。戦いは…俺が負けたのだ。魔王様に仕えていたというプライドも、生き残った仲間の中で一番強かったことも、これの前では何の意味もなさなかった。……“神”には“人”も“獣”も敵わないのだと悟った。
「お~! 結構戦えたね~!!」
そんなことはない。ただ手加減をされただけだ。…俺は貴女に弄ばれただけだ。
「記録は…84時間48分56秒!! 凄いじゃん!」
……そんなに長い間戦っていたのか…。それは動けなくなるはずだ。極度の疲労もあるだろう。
「ん? あ!! ちょっ!? 何勝手に死にかけてんの!? 駄目だよ! 君はもう私のモノなんだから!!」
…何を言っているんだ? というか死にかけているのは間違いなく貴女のせいだと思うのだが…。ああ、だからこんなに思考がはっきりとしているのか。死に掛けると、頭が冴えると言っていた奴がいたな。……今もあいつは生きているだろうか。
「あー!! もう!! 怒った!! 勝手にやっちゃえ!! 《神格付与・丑》!! 君の名前はこれから『タウラス』!! 今は仕事無いから今度この世界で人類が生まれたら呼ぶね!! 今は眠ってな!!」
…………本当に勝手な奴だ。まず説明くらい言えばいいだろうに。…俺が分かったのは俺の名はこれからタウラスだ、という事だな。勝手な…。はぁ……。今度会ったら文句でも言ってやろう。
風の音、木が揺れる音がする。身体の痛みはもう無い。…どういう事だ?
「……いや本当にどういうことだ?」
何故俺は森の中にいる?
「起きましたか。」
「まずはこれ、か。」
「もしかしたら同僚になるかもしれませんよ?」
「はぁ…。上様はいったい何を考えているのか…。」
「何も考えていないのでは?」
「成程。あり得る。」
「………誰だ?」
目の前にいたのは黒い少年と白い…幼女? …………まずいな。俺はかなり混乱しているな。
「おや、私としたことが…では名を名乗りましょう。」
黒の少年はそう言って一礼する。
「初めまして。私は“ラミ”と申します。」
「私は”レネ”だ。貴様の名はなんというのだ?」
「…タウラス。」
「ではタウラス。この場について説明致しましょうか?」
「…頼む。」
少年…ラミはコホンと咳払いしてから説明を始める。
「ここは我らの主“世界龍”の内包する簡易世界です。」
「簡易世界、だと?」
「ええ、性質上、どちらかと言えば『箱庭』が近い例えでしょうか。ここは上様の隔離空間なのです。心当たりがありませんか?」
思い出すのは“今は眠ってな”という彼女の言葉。…その後俺はここに跳ばされたのか。
「まぁ、お前たちにとっては牢獄に思えるかもな。」
「何?」
白の少女はそう言った。どういうことだ?
「ここは上様の理想の世界。ここでは“死”は訪れない。いつまでかは知らんが、上様が呼ぶまでこの世界に必ずいなくてはならない。」
「正しく言うと、意志が、自我が無くなれば魂ごと消えますよ? 意志あるものだけが此処で待つことが出来ます。…悪いと思いますが篩いに掛けさせてもらいます。」
上様の世界で生きていけるか。この二人は言外にそう言った。…どういう関係か知らないが、あの不思議な少女の知り合いらしい。
「これから来る君の仲間にも似たような説明をします。タウラス、君も手伝ってくれませんか?」
「…分かった。」
「ほう、聞き訳はいいな。」
「文句を言うなら消そうとしていたんじゃないか?」
「「当たり前だ(です)。」」
思わず溜息をつく。何もそこまで似なくても良かったんじゃないか。その言葉は飲み込んで。
光と共に知った顔の仲間が転移してくる。…これは説明が大変だな…。だが、納得してもらうしかない。俺達が生き残るために。…………俺達は生きよう。亡き友の分まで。知っているのは俺達だけでいい。だから…今度こそ、楽しく暮らそう。あの世界では得られなかった光景をこの世界で掴んで見せよう。……同胞たちよ。ともに行こう。地獄の先の未来へ。
……ところでさっき聞いた『世界龍』という名はあの少女のことか? そんな立派な名を持つ者には見えないのだが……。
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