21話 遭遇からの後片付け
「リナ、大暴れ。」
えー、前略、異世界から侵入者が二名やって来ました。初手はコンタクトを取ることにしましょう! まあね? 私は話の通じる淑女だし? 会話から始めて差し上げますケド? 普通だったら問答無用で攻撃されてもおかしくない所だからね?
『やあ! こんなところで何をしているのかな?』
おおっと、勇者君は驚いてるみたいだね? 話しかけられるとは思っていなかってのかな? どうせ言語は違うからね。念話で話してやったよ。あれ、牛さんの反応はずいぶんと薄いね? ぶっ飛ばされて倒れたままかな?
「……貴女はここで何をしているのでしょうか。」
「ん? ここは私が作った世界だよ? 私が居て当然じゃない?」
「っ!? 念話じゃない?」
「今君が使っている言葉を聞いたからね。」
勇者君はかなり驚いてくれたみたいだね? うん。私もびっくりだよ。この言語はRが支配している世界の一つで使われてる奴だもの。魔法の勉強中に学んだよ(半強制的に)。フフフ! 私はバカみたいな数の言語を知ってるからね!! Rのせいでな!!
「んで、君は、違うか。君たちは何しに来たのかな?」
ぶっ飛ばした牛さんが起き上がったのでそっちも見なきゃいけなくなっちゃった。めんどい。サッサと答えてくんないかな~。
「…そいつは魔王軍の残党だ。魔王亡き後、そいつらが禁術を使っていたから、討伐するためにそいつを追ってきた。俺は危険は排除しておきたい。そいつを倒せばここから離れよう。だから一度退いてくれ。」
「禁術? こいつもやってたの?」
「……。ソレの身体に纏っている瘴気が証拠だ。残党を残しておくと、いつかまた暴れる。なら先に消しておくべきだ。」
へー。これ禁術になってるんだ。まあ、私もこの術はこの世界ではやって欲しくないかな。
「で、君から何か言う事はあるの?」
「グルルルルッ!!」
あれ、牛さんは話せないの? えー? じゃあもう末期じゃん。この術式は私も知ってるんだけど、確かドンドン強くなる代わりに理性を失っていって、最終的には只の獣みたいになるんだよね。こんにちは! 死ね! をリアルでやるタイプの。さっきの私かよ。しかも纏ってる瘴気は、触れると精神汚染されて心を病むんだよねー。うん。これは禁術でいいわ。
……。……でもなー。ミノタウロスとかさー。欲しくない? 絶対強いじゃん(小並感)。どうにかしてゲットしたい。……………………………………あ、そうだ。
「君が何考えてるかは知らないけどさー。この世界で暴れるなら私が滅ぼしてあげようか?」
牛さんにニッコリスマイル。そして勇者君。君は帰ってくれ! ……え、やだまってまって、なんでそんなにドン引きしてんの? 警戒しながら引いてんじゃん。理性ぶっ飛んでる牛さんも何か引いてない? ワタシソンナニコワクナイヨー? そんな空気の中でも私に話しかけてくる勇者君。勇気あるねー(他人事)。
「…悪いが、残党がどこに隠れているか聞きださなくてはならないんだ。だから―――」
「あ、それは無理だよ? だってもう理性ほとんどないもの。」
「………何?」
あれ? 知らないの?
「何故そう言い切れる? その術は」
「うん。もういいや。飽きた。邪魔。」
転移魔法発動。牛さんの勧誘したいし、勇者君からもらえる情報はもうなさそうかな。勇者君がなんか言ってるけど言い切る前に元の世界に送り返す。ついでに結界修復。アーンド世界の座標をずらす。これで勇者君はもうこの世界にはこれまい。もう一回来ようとされると面倒だからね。
「さてとー。次は君だよ。」
牛さんを見る。……どうせならもう貰っていいよね。迷惑料くらい貰っちゃえ。
「ッ!!! オオオオオオォォォ!!!」
「おっ? 抵抗するのん? いいよいいよー? んじゃ、少し遊ぼうか?」
一曲いかが? って感じかな? 踊るように戦えたなら完璧だって、Mさんも言っていたしね。あながち間違っていないと思う。さて、先手は譲るよ。どんなリードを貰えるのかな?
まずはぶん回し。避ける。タックル。躱す。振り下ろし。当たらない。フェイントからの袈裟切り。往なす。んで反撃。躱せない。それでも斧を離さず振るう。片腕を焼き尽くす。片手で斧を振るう。それでも私には当たらない。素手で殴る。避けられない。牛さんはもうボロボロだね。でもまだ諦めてないみたい。いいね。そういうの大好きだよ?
さあ、まだまだこれからが本番だよ? もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっとオドリマショウ?
「ありゃ?」
何時間か経って、とうとう牛さんが膝をつく。息も絶え絶えだし、もう立ち上がれないみたい? あーあ、ほんと楽しい時間は短いよね。……そういや何気に、実際に虫の息って感じの人初めて見たな。これが瀕死って状態なのかな? …そう考えると…駄目だこれ以上は考えないようにしよう。
「ねーねー、もうおしまい?」
無理矢理顔を上げさせて聞いてみる。
「……………………ぐっ、……。……こ…ろせ………。」
「え? やだよ? 今の楽しかったからこの世界で暴れたことは許すけど。もうちょっと暇つぶしに付き合ってよ?」
回復させちゃえ。そうすりゃ気付くでしょ。全快させよっと。回復魔法起動。…あ、起きた。
「……………………何故だ………。」
「いや治った後の発言それ? もっとないの?」
「………どうやってこの呪いを解いた……。」
「う~ん、ソレの正体知ってたんだとか驚くのそこなんだとかいろいろあるけど、呪いなんて解くの簡単よ? だって慣れだもん。」
うん。マジで慣れなんだわ。数学の問題とか分かる人はすぐ解けるじゃん。分からん人からすると何で解けるの? ってなるけどそれと一緒なのよこれ。ガチで。
「……………………何故俺を治した……。」
「? お気に入りの玩具は壊れないようにするでしょう?」
「……何が目的だ。」
「特にないけど。」
「…………。」
何その無言。ちょっとそんな呆れた目でこっちを見ないでよー。温厚な私だって怒るよ? ………あー、でも直ぐにもう一回戦っても飽きそうかも。取り敢えず戦ってる最中に呪いは消したけど後のこと考えてなかったなー。
「あ、家具造らなきゃ。」
「…………貴様は何がしたいんだ………。」
うん、その残念なものを見るような眼は止めようか!!
「リナはサイコパス要素を多大に含む少女?です。」




