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ドラゴンさんの暇つぶし  作者: R's
第3章  人間の想いと神様の願い
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第37話  レッツダンジョン!! 其の6

 周囲を警戒しつつも体制が整ったので、一度打ち合わせを行う。眉間に皺を寄せたグレイが話を切り出す。


「まずは調査をした方がいいかもな。さっきみたいに囲まれると一々面倒だ。外なら俺が焼き払っちまえるんだが……。」


「室内だもんね。一応ある程度は周囲を探ったけど、あいつら全方位から来てたよ?」


 基本的に私は索敵をしないことになっているけど、緊急時には【生命探索(ライフサーチ)】で辺り一帯を調べることになっていた。【生命探索(ライフサーチ)】は思考性を持たせた魔力を飛ばし、ソナーのように反射してきたものを解析して、生きているものを感知する術式だ。それで探知した結果、私達を襲撃した魔物の群れは全方位から来ていたことが分かった。


「……カプア。」


「ええ。この階層は迷路のようになっているようですね。地図では全ての通路が繋がっているようです。ですが……後ろからも来ていたのですね?」


「上の階層からは来てなかったかな。でも通り穴から降りた時に横穴あったでしょ? 多分そこからも湧いてきたんだと思う。」


「面倒ですね~。」


 それはつまり、この階層一帯に魔物が溢れている可能性がある、ということだ。凄く面倒である。というか普通のパーティーだったら死んでる。いやまぁこのダンジョンは攻略じゃなくて素材集めとかがメインのパーティーが多いからあんまりここまで人が来ないから問題ない…はず。


 ふと、何かが引っ掛かる。小さな疑問で、それはあり得ない矛盾。故に私は、()()、見逃すことは出来ない。


 ダンジョンに人が来ないのであれば大量に魔物が生まれることはない。そういう風に私が創ったからだ。そして私達より前に攻略しようとしたパーティーは大体3ヶ月前だとかだった筈。ではなぜ、ここまで多くの魔物が生まれた? 


『本体。見てるよね。』


『調査中。……ヤバい、分からない。』


『この世界限定でも全知の私が?』


『多分ジャミング。ちょっと見てきて頂戴。履歴から逆探知できないか試す。時間が掛かるから話はあとで。』


 即座に念話を使い、本体に調べてもらったら【詳細不明】と来た。どういうこと? …侵略者か、漂流者? うーん、ジャミングがあるなら多分私が直接見てくるべきかな。何があるか分からない以上、ラプラス達も周辺警備に努めるべきだろう。暫定の敵の強さが分からないのに手出しをするのは不安だ。


「リナ嬢? どうかしましたか?」


「んー、最悪の可能性を考慮してた。」


 顔に出さないようにしていたんだけど、カプアさんには気付かれたので誤魔化しておこう。一応最悪の可能性を考えていたのも間違ってはいないし。ただ、最悪の想定がきになったらしいクリス君が説明を求める。


「アンタが考える最悪は?」


「……下の階層全部で魔物が大量発生?」


「「「………あり得るなぁ………。」」」


 その様子を想像したらしい3人が顔を顰める中、カプアさんは飄々と宣わった。


「では全て斬りましょうか。」


「………。えっと……?」


 にっこりと笑顔でやべぇことを言われたので私は何も言えなくなる。はい。混乱しました。うん? 違うな、えっと、何て?


「オイ待てカプア。リナが愕然とするようなことを言うんじゃねぇ!!」


「カプアさんって時々無茶なこと言うよね!? 流石に厳しいでしょう!?」


「そうよ~。せめて計画立てて順序良くしなきゃ無理よ~。」


「えっ、正気!? 本気で言ってたの!?」


「ですが倒さなくては指名依頼(ミッション)を達成できませんよね。」


「「「「………。」」」」


 正論である。いや、言っていることは正しいけど実際にやるのは難しいと言うか何というか……。


「クリス君とアシュレイ嬢がライに乗って移動してください。私とグレイ、そしてリナ嬢が走りながら間引きます。開けた所で集まった魔物をクリス君、アシュレイ嬢の魔法で吹き飛ばします。生き残りを私達で殲滅します。これを繰り返せば問題ないでしょう。それに強い魔物は同士討ちをすることが多い。であれば深層でも通じると思いますが。」


「……出来そうじゃない?」


「出来るなぁ。」


「出来ますね…。」


「あらぁ~。私も思いっきりやっちゃっていいのかしら?」


 ちょっ、振り回さないで! その杖メイスみたいなもんだから! 危ないから!


 滅茶苦茶やる気になったアシュレイちゃんからどうにか距離を取りつつ、作戦を煮詰めていく。問題となるのは進行する速度。それと魔物をどれくらい間引くか、である。


「ライはまぁ、死骸を乗り越えていくだけの度胸もあるし、走り続ける体力もあるよな?」


「そうするとグレイとカプアさん、私がどれだけ戦えるかに掛かってるかな。」


「一日戦い通しでも問題はないですね。休息は必要ですが。」


「どこで休むかってこと? 私が探ってみようか?」


「負担に…ならないか。じゃあ頼んだ。」


「頼まれた。」


「僕とアシュレイさんはどうするの?」


「クリスは魔法を()()()。アシュレイは………あー、近くに来たら好きにやれ。」


「分かった。」  「は~い!」


 真剣な様子のクリスとはち切れんばかりの笑みを湛えたアシュレイ。あまりにも嬉しそうなアシュレイちゃんにドン引きした。これから連戦するだろうとは思えないんですけど。


「にっこにこじゃん……。満面の笑顔じゃん……。いいのあれ…?」


「…個人的には放置した方が楽なんだよ…。」


 ふっ、と遠い目で微笑むグレイは悟りを開いたかのように言う。


「アシュレイと一緒に戦うなら暴れさせる機会を作っておくべきなんだ。」


「やだ物騒……。」


「割とお前も同類な?」


「うっそだぁ……。」


 うっそだぁ。私もあそこまで戦闘狂じゃないよ……。ないよね……?









 30階層。そこは死の世界。死霊王(アンデットキング)を階層主としてスケルトンやゴースト、ゾンビなどが徘徊する厄介なエリアである。死霊術によって蘇ったとされる彼らがどうやってダンジョン内に存在するのか、人類は知らない。よって定期的にこの階層に調査団が派遣されるのだ。されどこの階層にいる彼ら死者たちはそんなことは気にしない。ただ生者を死者に変えるだけだ。死者故に死を恐れぬ彼らは数の暴力で襲い掛かる。そして今、ダンジョン内では魔物が大量に発生している。つまり、普段よりも多くの死者が生まれたのだ。それはもはや軍団に匹敵するほどの軍勢へと変わっていた。


「あっはっはっは―!!! 焼き討ちじゃあぁぁぁぁぁ!!!!!」


「燃えちまええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」


「良い~~~~~わねぇ~~~!!!!! 【完全暴破(フルドライブ)】!!! 吹き飛んでねぇぇ~~~!!!」


「………えぇ………。」


「ほっほっほ。楽しそうで何より!」


 それでも。それでも格が違った。この瞬間、死者たちは恐怖を思い出す――!!




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆




五分ほど時は遡る。



 リナ達は29階層まで踏破していた。


「……数が多いですね。」


 先行して戦い続けたと思えないようなカプアさんは冷静に判断する。なお、カプアさんはここまで一回も息切れしていない。そのタフさは異常である。といってもこの場で息切れしている者はいないが。


「どのくらいだ?」


「ふむ。この先はアンデットが湧く階層でしたね。で、あれば……千は超えているかと。」


「あー、マジだ。【ソナー】で感知できる範囲にも500は居るよこれ。」


「じゃあ~、上書きしますね~。」


 杖を構えたアシュレイは躊躇いなく魔法を連続で行使する。


「頑強であれ【タフネス】、戦え【アグレッシブ】、強化せよ【クレッシェンド】、死を超えよ【デッドヒート】、加護を授けよ【プレッシェンド】、立ち止まる事無く【ノンブレス】。」


 連続詠唱と呼ばれる技術である。同系統の魔法を立て続けに発動するこの技術は、同時にいくつもの魔法を制御するため、並行思考を行わなくてはならない。詠唱、魔法制御、対象を選択、と考えることが多く、この技術を使えるならばAランク、と言われるほど難しいのだ。


「一番狂っているのは今の全て詠唱短縮してることだよね。【ノンブレス】ってあれ最高難易度の魔術じゃん。疲れを癒し続けるんだぜ? あれ。なんで制御できるの?」


 そう、私達が疲れていないのはこの魔法のお陰である。しかし普通はもっと魔法陣を敷いたり、長い詠唱をしたり、魔法石を使ってアシストするのだ。でもアシュレイちゃんはごく自然に使って見せる。あまりにも常識外れで異常な光景に私の口から独り言が漏れる。隣で聞いていたクリスが静かに言う。


「魔法陣を一瞬で創るアンタには言われたくないと思う。」


「………。」


 反論できなかった。


「…えっと、相手は死霊でしょ? ここは火解禁で良いかな?」


 話を逸らして次の階層の敵に触れることにした。それにカプアさんが乗ってくれる。


「そうですね。火の魔法か付与魔法(エンチャント)で焼き払う、神聖魔法あたりで浄化するのが死霊を倒す方法です。物理攻撃は効きにくいですから。」


「僕も火の魔法を使おうかな。神聖属性の魔法って扱いが難しくて覚えてないんだ。」


「じゃあ私も魔法で」


「【属性付与(エンチャント)神聖属性(ホーリー)】。」


 戦う、と続ける前に武器に神聖属性のエンチャントが付いた。犯人はニッコリと笑うアシュレイちゃん。これにはカプアさんも苦笑する。


「……物理が効くようになりましたね。」


「アシュレイちゃん、そんなに殴りたいの……?」


「ゴーストを殴った時の感触って面白いのよ?」


「「発言が怖いんだけど。」」


「おぉ……。ハモッた……。……あー、そろそろ行くぞー。」


 ふざけながらも緊張を解し、グレイの掛け声で攻略を開始する。30階層へと続く通り穴を飛び降りると目の前には骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、幽霊、骨、骨、骨、幽霊―――――。


「「「いや多いな!!??」」」


 見渡す限り骨一色。その全てが同時にこちらを振り向いて―――


「えいっ!」


 轟音を鳴らして()()()()吹き飛んだ。はい。勿論アシュレイちゃんが犯人です。戦棍(メイス)のような杖を思いっきり振り切った、その動作だけで敵が吹き飛ぶとか何事ぉ……。


 それに構わず剣を肩に担いだグレイが指示を出す。


「おっしお前ら数を減らすぞ!! カプアはクリスとライの近くにいてくれ! クリス! ライ! 無茶すんなよ! アシュレイ! リナ! 暴れるぞ!!」


「「「「了解!!」」」」  「ギャウ!」


 さっさと攻略しますか!!


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