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ドラゴンさんの暇つぶし  作者: R's
第3章  人間の想いと神様の願い
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第27話  王都アアル

「違うんです…。面倒だったからじゃないんです…。」

「切りの良い所で話を終わらせただけなんです………。」

 メイシアを出発して一週間。私達はアールハイド王国の王都アアルに到着した。道中では特にトラブルもなく順調に進んだから予定通りに来ることが出来た。


「うわぁ、城門でっか。」


「はいはい。さっさと並ぶぞー。」


 デカい城門を眺めつつ、入口へと向かう。入口は馬車が幾つかと何十人もの人が並んでいた。カプアさんが御者を務める中、私とグレイは竜車に掴まる。竜車は速いというのが常識で、隣に歩きで来たような人がいると別団体だと思われるからね。


「ねー、これどのくらい時間かかるかな~。」


「そうですね。恐らく半刻ほどまつと思いますよ。」


 片手で掴まりながら聞いてみると、カプアさんが答えてくれる。…一時間かぁ。流石に長いなぁ。どうにかして暇潰ししようかな。……。そういえば【復元(リスタレーション)】の魔法ってあんまり使われていないんだっけ。カルナ洞窟で暴れた時とキメラを追跡したときに使ったけど、どういう魔法かギルドで説明させられたんだよね。王都のギルドでも聞かれたら面倒だし、【復元(リスタレーション)】の魔法陣と効果について先に書いてしまおうか。

 私が羊皮紙とペンを取り出してメモを書いているとアシュレイが手元を覗き込んでくる。


「それはなぁに? 魔法陣かしら?」


「うん? ああ、これは私がこの前使った魔法についてのメモだよ?  【復元(リスタレーション)】っていうやつ。」


「【復元(リスタレーション)】……。…もしかして深淵魔法かしら?」


「うん。あれ、アシュレイちゃんは知ってたんだ?」


 アシュレイが深淵魔法について知っていたことに驚いて、思わず顔を上げるとアシュレイは考え込んでいるようだった。何が気になったのかな? 息を呑んだクリスを視界に入れつつ、じっとアシュレイを見ていると彼女は考えを整理するように話し出す。


「…深淵魔法について私が知っていることは少ないわ~。基本的に宮廷魔導士が独占する魔法だとは聞いているの。確か…『危険すぎる術式である』から…情報の公開は控えられていたと思うの。」


「それって『ラプラスの真理』じゃないか!?」


 いきなりクリスが叫ぶ。ラプラスの真理? なんじゃそりゃ。


「あ、あら? もしかして『ラプラスの真理』って知らない?」


「知らない。」


「う~ん、それじゃあ説明するわね~。」


 そう言ってアシュレイは話を始める。


『ラプラスの真理』とは、始祖人(エルダーマン)が極稀に使う特殊な魔法のことらしい。人類には再現不可能な【奇跡】の術式であり、消えたものの復元、大規模な天候を操る魔法、魔力に干渉する術式、無から有を生み出す創造魔法など、奇跡としか言えない魔法を深淵魔法といい、『ラプラスの真理』と呼ぶんだとか。始祖人が術の行使前にラプラスという【名】を呼ぶからそういう呼び方をされているそうだ。


なるほど。確かにある意味ではそうかもしれない。と言ってもなぁ、深淵魔法ってシステムにより強く干渉すれば発動するんだけど。始祖人がラプラスの名を呼ぶのは、システムに干渉する許可を取っているからなんですけど。話を聞いている間、なんとも言えない顔になっている気がする。


「とまあそういうことなんだけどね~? もしかして…リナちゃんは「深淵」について何か知っているのかしら~?」


「あ~~~~……。ごめん、それは言えないかなぁ。説明が難しいんだけど、ちょっと今は言えないことかな……。」


「あら~。残念ね~。」


 うん。あんまりシステムについて吹聴して回ろうとは思っていないからね。残念そうにされても教えられないんだよ。クリス君、私を睨んでも言わないよー。


 メモを書きつつ、二人分の追及をのらりくらりと躱していると竜車が動き出す。そして賑やかな喧騒が聞こえ始めた。メモから顔を上げると竜車の外にいたグレイが窓から顔を見せ、ニヤリと笑った。


「さて、やっと着いたぞ。ようこそ王都アアルへ!」












 しっかりと舗装された道を竜車で進んでいく。私は窓から顔を出して街並みを観察する。文明のレベルは中世ヨーロッパくらいだろうか。しかしながら街にゴミとかはない。【透視(リアテミスター)】で地中を見通すと下水道が見えた。衛生観念はしっかりと育っているようだ。……あ、清掃用スライムだ。ゴミとか排泄物とか食べるんだよねー。スライム自身は排泄しないし、掃除に便利なんだよ。私の認識は一定量食べて大きくなると分裂するル〇バ。さっきからちょくちょくスライムを見るな。街中に生息しているのだろうか。


「グレイさ~ん。リナちゃんは今何を考えてるのかわかるかしら~。何か魔法の気配がしたのだけど~。」


「あれは……間違いなくどうでもいいことだな。話しかけない方がいいぞ、ロクでもなことを聞かれる。」


「えぇ……?」


 …………? なんかクリス君あたりに変人扱いされてる気がする。……あのスライムたちは家の中まで入ってきたりしないのかな? 入浴中に入って来たら嫌だな…結界魔法を常に貼っておくべきか? いや、魔物除けの結界魔法の方がいいかな…。


「皆さん、そろそろギルドが見えてきますよ。グレイもそのままでは目立ちます。せめて御者席に来なさい。」


「分かった。」


 あれ、もう着いたの? 意外と近いな。いやそうか、門に近い方が便利なのか。街中まで獲物を運ぶのは大変だろう。それに狩った魔物を持って街中を歩くのは目立つし、住民がビビる。っていうか解体場の近くに家を立てたくない。

 少し進むと大きな建物が見えてくる。メイシアにあったギルドに近い外見で、更に一回り大きくした感じだ。竜車はギルドの隣の厩に向かっていく。あ、馬車置き場みたいなところがあるんだ。何台か馬車らしきものが置いてあるのが見える。そしてその反対側には大きな酒場がある。中から声が聞こえるので繁盛しているんだろうな。


「さてさて……鬼が出るか蛇が出るか、それとも()()()()()()でてくるかな…。」


 私は窓から身を乗り出しながら、誰にも聞こえないくらいに小さく呟いた。


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