恋占い
プロローグ
放課後、屋上に出る直前。
「好き、嫌い、好き、嫌い…」
俺は今、マーガレットの花びらをちぎって恋占いをしている。
一枚ずつ、丁寧に落ちていく。
どうしてこうなったか。
それは単純なことだった。
第1章 占いって…
「なあ、直樹には好きな人とかいるのか?」
同級生からの突然の相談を持ちかけられたのがきっかけだった。
そいつは、好きな人がいるらしいのだが、その子が本当に友人が好きかどうかが知りたいと言うことだった。
そんなことは、俺に頼まずに本人かその周りに直接聞いて欲しい…
しかし、俺も友人の頼みだったから、断ることが出来なかった。
「分かったよ、ちょっと調べてみよう」
俺はそういって、花を一本取り出した。
「何をする気だよ」
そいつは言った。
「恋占いさ。此花はマーガレットといって、花言葉がずばり恋占い。あ、ちなみに4月1日の誕生花でもある」
「…お前のその知識に嫉妬するよ」
そいつは言ったが、いちいち答えているときりがないから、速攻始めた。
「いいか、お前は好きでいて欲しいか嫌いでいて欲しいか。どっちだ」
「もちろん好きでいて欲しいさ」
俺はそれを聞いて、花びらを一枚ずつちぎりだした。
「スキ、キライ、スキ、キライ…」
最後の一枚は、好きだった。
「彼女はきっとお前のことが好きさ。本心が知りたいんだったら、本人に突撃をかけろよ」
「ありがとぅ!」
そいつは即刻、その子のところへ行った。
俺が、黄色いハンカチで見送ってやったとき、誰かが俺の肩を叩いた。
「あの…ちょっといい?」
「ああ、どうしたんだ?」
その子は、クラスで一番の無口少女、箕阿凛呼だった。
「ちょっと聞きたいことがあって…」
彼女は、俺を指差して言った。
「あなたは、好きな人っている?」
突然のことで面食らったが、それでも答えた。
「いや、今はいないな。とりたてて好きだって言うやつはいない」
俺がそう答えると、彼女は安心したように言った。
「じゃあ、私に好きな人がいるんだけど、その人が私のことが好きだって言うことって分かる?」
「占ってみるか」
俺は再びマーガレットを取り出した。
「さっきも使ってたよね」
彼女は、マーガレットを指差して言った。
「ああ、こんなときの為に、何本も学校に持ってきてるんだ。だから大丈夫。それに、こいつらは結構頑丈なんだぜ」
俺がそういって、再び彼女に同じ質問をした。
第2章 突飛な事
「凛呼は、その人が好きであって欲しいか、それとも嫌いであって欲しいか。どっちだ」
「嫌いであって欲しい」
俺は初めての答えにすこし考えた。
だが、何も言わずに俺ははじめた。
「キライ、スキ、キライ、スキ…」
はらはらと花びらが落ちていく。
彼女はその光景を一心不乱に見つめていた。
「好きだとさ」
俺は、一番最後に残された花びらを見せながら言った。
「そう…じゃあ、今日の放課後ってあいてる?」
彼女の突然の話で考えたが、特に予定はなかった。
「いや、ないな」
「じゃあ、放課後、この建物の屋上で待ってる」
そういって彼女は席に戻った。
何か言う前に、チャイムがなり、先生が入ってきたので、何も聞けなかった。
俺は、大体予想がついていたが、それでも放課後に屋上に向かった。
扉が開けられており、俺は誰にも見つからないように屋上へとあがった。
「来てくれたんだ」
彼女は、すでに待っていた。
「そりゃ呼ばれたらくるって言うのが、当然だろうさ」
俺はそういって扉を閉めた。
「で、どういうことだよ。放課後にこんなところに呼ぶって」
俺はうすうす感ずいていたが、それでもセオリー通りに聞いた。
床には、マーガレットの花びらが落ちており、その横には、十数本の茎が置かれていた。
「さっきまで暇だったから、どんな条件でも好きって出るのかなって思って、試していたの」
俺のほうに一歩ずつ近づいてくる。
「私、こんな性格だから、人と話をするのは苦手なの。でも、それでも、あなたとだったら話せる」
マーガレットのまだ花びらがついたままの状態のを、持っている。
「私の誕生花。マーガレットなの。恋占いって言う花言葉も知っていた。でも、話せるきっかけがなかったの」
彼女は、俺のすぐそばにまで来た。
「そのとき、あなたが恋占いをしていたから、こうやって話すことが出来た。こうやって、勇気を出すことが出来た」
彼女は、俺の顔を見上げるように顔を上げた。
「あなたのことが、好きです。付き合っても、いいですか?」
俺は考えていたとおりの状況に達したから、考えたとおりのことを言った。
「ああ、もちろんさ」
そういって、一回りも二回りも、小さい彼女を抱きしめた。
風が俺たちの周りを取り巻き、マーガレットの美しいオレンジ色を空いっぱいに広がらした。
エピローグ
翌日、俺が教室に入ると、彼女が友人を慰めていた。
「どうしたんだ」
俺はかばんを置いてから聞いた。
「振られた…」
「ありゃりゃ」
俺は、ちょうど開いていたすぐ右横の席に座って、友人を慰めた。
「でも、それも経験さ。な」
俺は、凛呼に意味ありげな目配せをした。
彼女は、それを見て笑った。
「どうしたんだよ」
「いや、ちょっとな」
俺のかばんの中には、いまもマーガレットが入っている。
きっと、これからも入れ続けるだろう。
友人には悪いが、俺は一足先に好きな人が出来た。
それは、誇れることだと、俺は思っている。
"http://www.birthdayflower366.com/04/01.html"→マーガレット。
ここからネタをとりました。
感謝!