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下水道の出入り口周辺に軍人が三十名ほど集まっており規制線が引かれていた。入り口の前にはプレートアーマーを着た三人と細谷がいる。
「へぇ、それが機械鎧か。かっこいいじゃん!」
「ああ、見た目は唯の鎧なんだが、内部の機械による補助のおかげで運動能力が大幅に向上している。スペック上は変異体とも殴りあえるそうだ。そんなことはしたくないがね。残念なのは稼働時間に制限があるのと資源不足のせいで量産できそうにないということだな」
機械鎧の主な装備はショットガンとマグナム、それに剣だ。変異体などには威力の高いショットガンやマグナムで応戦、発症者には機械による補助から繰り出される剛腕で振るう剣で対処することをコンセプトとしている。通常の稼働状態であれば五時間、激しい動きをすれば二時間程でバッテリーが切れてしまう。バッテリーが切れれば唯の重いだけの鎧になるのでシェルターから離れた場所では使えないというのが難点だ。
「下水道は何事もなければ往復で一時間程度、バッテリー切れの心配はないだろう。もし不測の事態があれば我々が殿を務めるので細谷さんには外部への連絡をお願いします」
「了解。だが、探索の先頭は俺が行くぜ?上位適応者は夜目が効くんでな」
細谷の言葉に頷くと下水道への入り口を開ける。扉を開けた瞬間に中から発症者が飛び出てくるかと思ったがそんなことはなく、刀の柄から手を放すと下水道に続く階段を降り始めた。
しばらく歩くと前方に照明が無くなっている箇所がある。「今照らします」と言い機械鎧兵達が頭部のライトを点けた。ライトで照らされるとそこには大量の血痕と銃弾の痕が残っている。そして黒い袋が二つ。
「明らかに戦闘の跡ですね。こちらの回収袋はネズミと発症者の死体・・・」
「周囲にハンターの死体はありませんね」
機械鎧兵が周囲を見渡すが他に目ぼしいものは見当たらない。
「警戒して先に進もう。ここからは何が起こるか分からん」
四人はそれぞれ武器を握り直すと歩を進めた。
結論から言うと、四人の警戒を余所に下水道では何も起きなかった。あの後、最深部まで行き帰りに横道も調べたが何も無かったのだ。
「明らかに戦闘の跡がありました。しかし、ハンターたちの姿は無く、争った相手の姿もどこにもありませんでした」
つまり何かはあったがそれが何かは分からなかったということだ。報告を聞いた赤瀬が悩んでいると長谷田が提案した。
「暫く下水道の見回りの際は人数を増やして最低でも赤腕章のハンターを二名同行させる。異常があれば誰か一人は絶対に生きて報告するように徹底しよう」
「何も分からない現状では打つ手がないか・・・。仕方がない。暫くはそれで様子を見よう。何かあれば直ぐに軍に知らせてくれ。こちらも出入り口の監視員の数を増やしておく」
今後の方針を決めると現場は撤収作業を始めた。何もできない現状に赤瀬はその様子を親指を噛みながら眺めた。