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銃声が響くとドサリと大きなネズミが倒れる。
「これで三匹目だな」
斎藤がネズミの尻尾を掴んで持ち上げる。しかし、巨大ネズミの鼻先はまだ地面に着いたままだった。
「こりゃ記録更新か?尻尾まで入れれば二メートル余裕で超えてるぜ!」
その様子を見て後藤は溜息を吐いた。
「まだ終わってないんだからバカなことしてないでさっさと袋に詰めな」
「へいへい。おい川崎!」
呼ばれて川崎は背負っていた黒い袋を地面に置くとファスナーを開いた。中には先に仕留めた巨大ネズミが二匹入っている。
「結局、発症者は一人だけか。ずいぶん楽な仕事だったな。」
「本来ならここに発症者がいること自体がおかしいんだよ。ちゃんとワクチン接種を受ければ発症しないっていうのに!」
後藤が吐き捨てるように言うと山口が口を開く。
「まぁ、ワクチンも無料じゃないからな。何か事情があったのかもしれん」
「どんな事情があってもシェルター内部で発症者になるなんて信じられません!」
どうやら山口のフォローは火に油を注ぐ結果になったようだ。川崎は怒りの矛先が自分に向かないように急いで三匹目の巨大ネズミを詰め込むと立ち上がった。
「まぁまぁ、仕事が終わったら酒でも飲みに行こうぜ」
「あんたの奢りで?」
「川崎の昇格祝いだ。ここは俺が奢ってやろう」
その言葉に斎藤と後藤は歓声を上げる。昇格という言葉を聞いて川崎は驚いたように山口を見た。
「本当は秘密なんだがな。どうせ戻れば分かることだ。ちょっとフライングだがいいだろう。お前ら、奢りには口止め料も入ってるからな。ギルドにチクるなよ」
悪戯っぽく笑う山口に三人は「了解」と返事をすると来た道を戻った。