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 ペオルが作った穴から五メートルほど離れたところに小さな炭の塊が落ちている。次第にその炭の塊が膨張を始める。表面の炭が落ち中から肉の塊が飛び出すとどんどん大きくなり人の形になっていく。

「っぶはぁ!死ぬかと思った!」

 長谷田は周囲を見るが先ほどの鎧を着た人物はいなくなっている。

「取り逃した・・・というより助かったと思うべきだな。あれだけの啖呵をきっておいてこの有様とは我ながら情けない」

 予想外の事態の連続にこれからの行動方針を考えようとしたところに悲鳴が聞こえてきた。とりあえず、救助活動をしながら軍かハンターの連絡所に行こうと決め長谷田は走り出した。

 建物をぶち抜き悲鳴の元へショートカットする。通路に飛び出るとちょうど逃げ遅れた親子が発症者に襲われるところだった。

「させるかぁああああ!」

 長谷田は勢いよく走ると飛び蹴りをかました。発症者がすごい勢いで吹き飛び建物に頭から突き刺さる。

「もう大丈夫ですよ!」

 襲われていた親子を安心させるため笑顔とともに長谷田が話しかける。しかし、そんな長谷田の思いとは裏腹に親子はさらに悲鳴を上げた。

「大丈夫ですか!?どこか怪我でも?」

 周囲を見るが他に発症者は見当たらない。それなのにこの怯え様はどうしたことかと思案していると複数の足音が近づいてきた。

「悲鳴はこっちからだ!」

「今助けるぞ!諦めるな!」

 そんな声とともに軍人達が姿を見せる。長谷田もその姿を見てこれで親子も安心するだろうと安堵の表情を浮かべた。しかし、軍人達が銃口を向けてきたことでその表情は消える。

「何のつもりだ?」

 長谷田の声のトーンが下がる。まさかこいつらは軍人の恰好をした敵かと勘繰ったところで思わぬ言葉が浴びせられた。

「こっちのセリフだ変態野郎が!今すぐその親子から離れろ!」

「この非常事態に糞野郎が!ぶっ殺す!」

 長谷田は言葉の意味を理解するのに時間がかかった。

変態?誰が?

この場合、変態と言われたのは自分のことだろう。しかし、私はむしろこの親子を救うべくいち早く駆け付けた紳士だ。なぜそれを変態などという?やれやれと腰に手を当てたところで違和感に気づく。違和感の正体を確かめるべく視線を下に向けた。自分の逸物が見える。なるほどと納得する。先ほどの激戦で服が全て消失していた。

「誤解だ。弁明させてくれ」

 敵意がないことを示すために両手を広げナニも隠し持ってないことをアピールする。親子の悲鳴のボリュームが上がった。慌てて股間を隠し声を上げた。

「ちょっ!タイム!本当に待ってくれ!?」

軍人達もその謎の行動にどうしていいか分からず膠着状態になろうとしたところでハンターの一行が通りかかった。

「ん?ギルド長じゃないっすか。全裸で何やってんすか?」

 ギルド長という言葉に軍人達から動揺の声が漏れる。長谷田は通りかかったハンターに感謝しながらその隙を逃さず弁明を始めた。


 長谷田と軍人達が先ほどの戦闘の現場に来ていた。長谷田の説明のとおり、辺り一面の建造物は吹き飛びその惨状の中心にはぽっかりと穴が開いている。

「・・・これは本当に人間ができることなんですか?」

「ああ、目の前で見せられたので間違いないよ。しかもこれをした者は行方不明だ」

 長谷田の返答に軍人達は押し黙った。

「しかし、あの親子はハンター達に任せて問題なかったのかね?」

「問題ありません。現在、全軍が出撃してシェルター内部の治安維持に努めています。各所に救護所も設置されているのでそこまで連れて行ってもらえればあとは軍の方で対処できますので」

 その言葉に長谷田は疑問を口にする。

「全軍?」

「はい、特にこの南区には動かせる全体の四割が投入されていますね。残りは東区と西区に二割ずつで中央と北区に一割ずつです。外の対処は赤瀬中佐に一任された状態ですね」

 文字通りの全軍出撃という事態に長谷田は改めて事態の深刻さを思い知った。しかし、中央といえば軍の本部がある場所だ。そこの守りが薄い状態というのは大丈夫なのだろうか。長谷田は素直に疑問を口にした。

「中央の守りは大丈夫なのか?幾ら非常事態とはいえ、軍の本部が敵の真の狙いだった場合に取り返しがつかないぞ」

「それなんですが・・・黒川大将が自ら本部前で陣を構えてらっしゃいます」

 その言葉に長谷田は絶句した。

「ちなみに大将だけか?」

「いえ・・・白取中将と広瀬中将も一緒です。あとの将校の方々は各地の救護所で指揮を取られています」

 軍のトップが自ら本部を守っているという事態に長谷田は眩暈がした。しかし、あの三人が守っているということは現在、シェルターで一番安全な場所とも言える。だが、今回の襲撃者は尋常ではない。

「あの三人でもこの惨状を引き起こした敵との戦闘はまずい。すぐに情報の共有をしよう」

 その言葉に軍人達は頷くと近くの救護所へ急いだ。

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