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 発症者を投げ飛ばしているジャイアントの元まで行くと細谷は刀を構え走った。一瞬で間合いを詰め刀を振る。脇腹から刃が入ると思ったが、肉を少し切ったところで刀が弾かれた。続けざまに刀を振るう。しかし、同じ様に弾かれる。

「あ?硬いな。骨に何か仕込んでやがるな」

「ああ、その通りだよ。剛志はただのジャイアントじゃない。私が丹精込めて手を加えたからね」

 少し離れた場所から蝿鈴が疑問に答えた。

「馬鹿がノコノコ出てきやがったな。こいつ殺した後にすぐテメェもぶっ殺してやるからそこで待ってろ」

「ははははは!君には無理だと思うがね」

 ジャイアントの振るう拳を避け切り返す。しかし、どの攻撃も致命傷に至らない。それどころか時間が経つと傷はどんどん塞がっていく。ジャイアントの連撃に堪らず細谷は距離を取った。

「剛志は回復能力も桁違いでね。私が思うに君の体力が尽きる方が早いと思うんだがどうかな?」

 ジャイアントの戦闘を面白そうに蝿鈴が眺める。細谷は一度大きく息を吐くと呼吸を整える。

「確かにこいつは強いけどな。俺の方がもっと強いんだよ」

 細谷が刀を鞘に戻す。空気の爆ぜる音がすると細谷の身体に電流が走る。

「上位適応者か。まぁ、そうじゃないと生身でここまで来ないか」

 蝿鈴はその様子を特に慌てるでもなく眺めた。時間が経つごとに走る電流の量は増えていき細谷の身体から絶え間なく放電が行われる。

「よく見とけよ。一瞬だからな」

 その言葉と同時に細谷は駆けた。放たれる電流が脳が指令を出すよりも早く身体を動かす。Sウイルスにより強化されている身体は本来なら不可能な動きを可能とする。電熱により鞘の中に仕込まれた金属線がプラズマ化される。鞘の内部の圧力が高まり射出される刀の軌道をコントロールしジャイアントの首を薙いだ。

 轟音が響き勢いよくジャイアントの首から鮮血が溢れる。薙ぎ払われた頭部は弧を描きくるくると飛んで行った。その様子を蝿鈴は呆然と眺める。

「くっそ痛ぇ!腕に負担かかるからあんまやりたくねぇんだよ」

 右肩を押さえながら細谷が愚痴を零す。壁の上からは先ほどの場面を見ていたのか歓声があっている。

「それじゃあ、さっき言ったとおり次はお前の番だぜ」

 細谷はそう言いながら刀の先を蝿鈴に向けた。蝿鈴の手は強く握られブルブルと震えている。今更ビビったのかと言おうとしたところで蝿鈴と目が合う。その表情は怒りで満ち溢れていた。

「よくも私の息子を殺したな・・・。お前もシェルターにいる奴らも同じ目に合わせてやる」

 嫌な予感がし細谷が走る。常人ならば反応できない速度で踏み込むと刀を振る。獲ったと思った瞬間に刀身が掴まれた。掴んでいるのは蝿鈴だ。しかし、その姿は先ほどまでと違いまるで何か鎧の様なモノを纏っていた。

「なるほど・・・。この刀、生宝石でできているのか。普通の刀で剛志の首が断ち切れる訳がないしな。小賢しい」

 刀を掴まれ動きの止まった細谷を蹴る。細谷は咄嗟に左腕で庇うが凄まじい衝撃に吹っ飛ばされた。外壁にぶつかり止まるとどうにか立ち上がる。周辺にいる発症者が細谷に襲い掛かるが壁の上からの銃撃によって阻止された。

「おい!大丈夫か!?」

「大丈夫だ!こっちは気にせずそっちはそっちの仕事をしろ!」

 上から掛けられた声に返事をすると刀を握り直す。

「誰が大丈夫なんだ?お前か?嘘は良くないな」

 蝿鈴が苛立たし気に呟きながらやって来る。

「しかし、こいつらも仕事が遅いな。仕方がない私が手伝ってやるか」

 そう言うと腕を振るう。突如、竜巻が発生した。発症者が竜巻に飲まれ宙に浮いていく。そして、次々と壁を越えシェルター内部に落ちていった。

 壁の上からその様子を見ていた赤瀬が叫んだ。

「二個小隊はすぐに下に行って情報共有と落ちた発症者の駆除に回れ!手の空いている者はあいつに集中砲火!」

 その声に蝿鈴に向け一斉に銃弾が浴びせられた。しかし、当たった銃弾は全て跳ね返される。

「無駄だ。ほら、お返しだ」

 また蝿鈴が手を振ると竜巻が発生しまた発症者が飛んだ。細谷が竜巻を避けながら近づくと刀を振る。

「おっと危ないな」

 刀を右腕で防ぐと左腕を細谷に向け振る。突風に煽られ一瞬、細谷の身体が浮き上がった。そこに蹴りを叩きこむと弾かれたボールの様に細谷の身体が地面を跳ねて行く。

「クソッ!おい、本部に行って応援を要請してくれ!」

 赤瀬の言葉に軍人が動こうとした時、別の軍人が駆け寄ってきた。

「火急の要件です!下水道から発症者が溢れ出し現在、本部はそちらの対応で手一杯です!可能なら人員を回して欲しいとのことなのですが」

「見ての通りそんな余裕はないよ!こちらも援軍要請をしようと思ったところさ!こっちはこっちでどうにかするからそっちも自分たちでどうにかするよう伝えてくれ!」

 その剣幕に伝えに来た軍人は慌てて下がる。赤瀬は唇を噛み締めると現状の打開策を模索した。

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