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 翌日、蝿鈴は自分の左手を眺めていた。皮膚が薄緑色の陶器のような物体で覆われている。右手で軽く叩くとコンコンと固いものを叩く音がする。しかし、謎の物体で覆われた左手を動かすが特に違和感もなく指は滑らかに動いた。

「不思議な物質だ。明らかに触ると固いのに指をしなやかに動かせる。特に関節に継ぎ目があるわけではないんだが・・・。しかし、私はこれと似た物質をどこかで見たことがある気がする」

「あ、起きてたんですね。どうかしたんですか?」

 ペオルの言葉に振り替えると左手を見せる。

「これが何なのかと思ってね」

「手がどうかしましたか?」

ペオルが不思議そうに首を傾げる。それを不思議に思い蝿鈴も自分の手を見るといつの間にか手を覆っていた謎の物質は消えていた。

「む?さっきまでこの手が陶器の様なものに覆われていたんだが」

 蝿鈴はそう言うと左手をじっと見つめる。そのまま腕に力を込めてみると薄緑の物質が皮膚から染み出し手を覆っていく。

「うわ!何ですかそれ?」

「おお、出せた!私にも分からないがおそらくSウイルスに適応したことで発現した能力だろう。まぁ、後で詳しく調べるとして、どうするペオルさん?」

「なにがですか?」

「いや、私で実験が成功したからね。コツは掴めたしナナシもあと一回くらいは同じ様に使えるんじゃないかと思ってね」

 その言葉にしばし悩んだ後、「それじゃあお願いします」とペオルは笑顔で答えた。


自分にした手順と同じようにペオルに処置を進めていく。最後のワクチン投与を終えると一息ついた。

「やはり一度やったことがある分スムーズに終わったよ。あとはSウイルスの様子を見ながらワクチンで増殖のコントロールをすれば完了だ。疲れただろう?そのまま休んでいてくれ」

 蝿鈴はそう言うと机に向かう。そして、自分の左腕を覆っている薄緑の物質を採るためにメスを構えた。刃が欠ける。それならとハンマーを手に取る。普通に叩いても埒が明かないので思い切り振り下ろす。ハンマーがぶつかりカーンという音が響くが左手を覆った物質には罅すら入らない。

「まいったな・・・。採取できない」

諦めると薄緑の物質は体の中に溶けるように消えていった。どうしたものかと蝿鈴は悩む。当初はこれを採取して調べようと思ったのだがどうやら無理そうだ。そうなるとどこかで似たようなものを見たことがあるという自分の記憶を探るしかない。そこでタイマーにセットしていたアラームが鳴る。

「おっと、先にペオルさんの様子を見ないと」

 思考を中断すると蝿鈴は席を立った。

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