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 ナナシの腹から一本のチューブが伸びている。チューブの先にはボトルが取り付けられており、その中には流動食が入っていた。

「点滴だけの時よりだいぶマシになってきたんじゃないかな?」

採血をしながら蝿鈴が言う。ペオルからすればガリガリのままで何がマシになったのか分からない状態だ。

「しっかし、ナナシは意識が戻らないままですね」

「そうだね。せっかく実験が成功したのに当の本人から話が聞けないというのは誤算だったよ」

 移植手術から二週間が経っていた。しかし、二人の会話のとおりナナシの意識はあれから一切戻っていない。大量に使った薬の後遺症かSウイルスによる弊害かは分からないが生ける屍となっていた。

「まぁ、だいぶ血液も採れるようになってきたし気にしても仕方ないさ!」

 採った血を試験管に移し幾つかの薬剤を入れるとゴムの蓋をする。蓋にシールを貼りそこに日付を書き込む。保冷庫を開けると似たような試験管が複数保管されていた。試験管立ての空いている場所に今回作った一本を差し込む。

「それじゃあ、だいぶ原料のストックもできたし次の実験を始めよう。ペオルさんはナナシの世話を頼むよ」

 古い日付のシールが貼られた試験管を手に取り蝿鈴は部屋を後にした。蝿鈴の姿が見えなくなるとペオルはナナシの耳元で呟く。

「やっぱり私の言ったとおり死んだ方がマシだったでしょ?でも、もう死んでるようなもんか」

 チラリとボトルに目をやると流動食が殆んど無くなっていた。流動食を補充するためにペオルは部屋を出るがその途中思わずスキップしてしまう。ああ、やっぱり他人の不幸は面白い!

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