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前回の実験から一週間が立った。実験体774号はまだ死んでいない。とはいえ、あれから暴れる度に鎮静剤を大量に打ったせいか最近では動くことの方が珍しい状態だ。

「だいぶ見た目に変化が出てきたね」

蝿鈴の言葉に改めて手術台の上を見る。全身から毛が抜け落ち肌は色素が抜けて雪の様に白い。薄っすらと開いている目は白目の部分が黒くなっており、逆に瞳は白くなっている。ここに連れてきて以来、点滴での栄養補給しかしていないせいで頬はこけ身体の骨が浮き出している。

「耳と鼻が無かったら宇宙人みたいですね。なんでしたっけ?昔、図書館の本で見たことある気がするんですよ」

「この見た目で宇宙人と言えばグレイかな?」

「あー!確かそんな名前だったと思います!」

 疑問が解けてスッキリした表情のペオルの横で注射器を取り出す。採血をするために肘の内側を見ると渋い表情になった

「うーん、骨と皮だけなのに血管の位置が分からない・・・。血中のSウイルスが確認したいんだけどねぇ」

「点滴の量増やしてみたらどうです?水分増えるから血管浮きでるかも!」

「それは昨日試してみたんだが効果がなかったんだよ」

どうしたものかと思案しているとペオルが事も無げに言う。

「血液見るだけですよね?適当に切って出血させたのじゃあ駄目なんですか?」

蝿鈴は「確かに」と呟くと引き出しを漁ってスポイトを取り出す。メスでさっと傷をつけると薄っすらと血が滲んだ

「もっと思いっきり行けばいいじゃないですか」

 横からペオルが手を伸ばすとメスを突き刺す。メスが引き抜かれるとそこから血が溢れた。

「おいおい、あまり乱暴に扱わないでくれ」

 蝿鈴のその言葉を実験体に対してなのかメスに対してなのか悩んでいる間にスポイトで血液が吸い取られていく。血液をスライドガラスに垂らしカバーグラスを載せる。出来上がったプレパラートを光学顕微鏡にセットする。

「しかし、Sウイルスが巨大で助かったよ。普通、ウイルスは電子顕微鏡じゃないと見えないからね。お、見えてきた」

 粗動ハンドルを回しピントを合わせる。暫くすると笑い声が漏れた。

「ははは、やった!遂にやりましたよ!全種のSウイルスが血中に存在している!これで神の教えに一歩近づいた!」

「それじゃあこれからどうするんですか?」

「ようやくサンプルが出来たんだ。ここから安全に人体に使えるようにするさ」

問いかけに蝿鈴は目を輝かせながら今後の展望に思いを走らせる。

「あ、そうだ!せっかくですから“これ”にニックネーム付けません?ようやくの成功例ですし」

 ペオルが手術台の上を指さす。

「ふむ、いいんじゃないかな。しかしニックネームか・・・。何か良い案はあるかい?」

「そうですねぇ。元の名前とか分かればそこからつけたんですけど・・・。うーん、実験体774号ですから語呂合わせで“ナナシ”なんてどうです?実際、本名も分かりませんしピッタリじゃないですか?」

「いいね。それでは彼は今日からナナシだ!」

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