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TS小騎士の恋愛受難

作者: ないんだな、それが

時々思うのが、小説をかいてて途中で自分の性癖を暴露してるみたいで、だんだん笑えてくる。

 拝啓、前世のお父様、お母様。

 私は今神様転生って実際にあるんだなぁ、と夢にも思っていなかった事を味わっています。

 実際やり残したことはいっぱいあります。

 それ以前に異世界など物語の中で楽しむ程度でお腹いっぱいだった私は行きたいなどと毛先も思っていませんでした。


 正直今の衛生環境やら食事環境、男女感の最低限のマナー等々、現代の事を思い出すと涙が浮かんだ数は数え知れません。

 今すぐにでも戻れるなら現代社会に戻りたいです。そして出来うることなら――


「……私の性別を元に戻して」

 騎士学校にある女性の手洗い場、個室にて項垂れながらため息をこぼす。


 私こと、ククル=クロロードの過去はいわゆるテンプレートというやつだ。

 普通に通勤してたらトラックにはねられて、神様の手違いだったと判明し、特典よけいなものを着けた状態で別の世界に送られた被害者だ。

 しかも何が腹立たしいかといえば、もはや神様も「またこのパターンかよ」みたいな顔で送り出すモノだから、素で怒ったのは許してほしい。


 前世で未だにクリアしていないゲーム、読んでいない小説、データを処分していない黒歴史パソコン、そして残してきた仕事。

 色々とやりたい事はあったというのに、こんな運命あんまりだ。ただそれを置いても一番の酷い話は、ククル=クロロードという存在に生まれ変わったという事だ。


 何が気に食わないかといえば、容姿は成人しているにもかかわらず幼児に見られるほど未発達な身体をしているということ。

 そしてこの世界自体が、成人男性御用達の恋愛シュミレーションゲームという最悪の話だ。

 最初は良く似た別人なのだろうと切り捨ててはいたが、ゲーム内の主人公の姿を見て絶望した。顔を覆って天を仰ぐほど絶望したのだ。


 ちなみに原作へ関わらなければ、何の被害も味あわないと思ったら大きな思い過ごしだ。

 一年後、騎士学校を起点として争いが巻き起こるのだが、その時には私も学校で教官として教壇へと立ち、ほぼ強制的に争いに巻き込まれ、拉致られるのだ。



 ――――――それも最悪な事に敵国へ。

 この先に関しては、語らずとも理解はできるだろうが、

 捕まった後は今までの恨みを晴らすべく薬を投与した後、そう言った性癖の人達に酷い目にあわされるのだ。

 


 それもこれも小さいころから戦地を渡り歩いて二つ名が「殺戮幼女」になるまで敵対者をぶち殺してきたククルに原因があるのだが、それはもう言っても仕方のない事だ。


とにかく最悪の目に会う前に用意された救済こうりゃくルートを踏めば、拉致られても酷い目に会う前にギリギリ救出されるので、それを目指せば早いのだが。


「それが出来たら、苦労してないのに」

何度目かのため息をこぼしながら、トイレから出れば。


「あっ、ククルちゃーん」

 何処からともなく私を呼ぶ声が聞こえる。

 それと同時に明確な苛立ちとともに声を掛けたであろう人物に鋭い目線を向けた。

決して私自体がしたいわけではないが、これはもはや仕様と言うしか他あるまい。


(えっと、何か用事でも--?)

「何だ候補生やくたたずども」

「うっ、相変わらずだねぇーこのこのぉ」

 そう言って、膨れっ面をつついてくる教え子達が、取り囲む。

それを心底鬱陶しい表情を浮かべながら、毒舌を吐くが、誰一人として、嫌な顔をしない。


(うぅ、早く用事を言ってくれないかな? 目に毒なんだよなぁ)

「遊んでいる暇があるなら早々に失せろ。この無駄乳どもめ」

 冷たい目が向けるのは、先程から押し付けられる大きめな胸を持つ女子学生達。

 まるで自分との差を見せるように視界へ入り、ククルとしての感情も不愉快の一色に染まる。


「ごめんなさーい、ククル教官。さいきん暑いんで、皆で明後日避暑地に行くんですが、教官もどうですか?」

 特に反省した様子もない謝罪に眉をさらにひそめる。

 この前、正体不明の部隊が襲ってきたと言うのに、何と呑気な事かと思うが、口には出さない。


そういった不祥事こそ主人公たち生徒を巻き込ませる事自体が間違っているのだ。むしろ此処は嫌な事を忘れさせるためにも、彼女たちだけでも行かせるべきだ。


(君達だけで行ってくると良い。あ、ただ保護者を何人か連れて行くのを忘れないように)

「ふん、くだらん。そのような小事、付き合うような歳ではない。せいぜい貴様等だけで行くと良い。・・・・・・あぁ、そうだ。貴様等はただでさえ抜けているのだ。誰かもっと大人っぽい奴でも連れていくと良い」

そう言って輪を抜け出すと、後ろから元気の良い返事が聞こえる。

後ろ手に手を振るも、すぐに小さなため息をつく。


「この人前での毒舌。どうにかならないかなぁ」

 何度やっても、ああいう口の聞き方しか出来ない仕様にため息が漏れる。

これのせいでククルというキャラが原作では完全に孤立し、拉致られても誰にも心配されない所か、自業自得だ。と口汚く貶された時もあったのだ。


それを鑑みて、原作で起きた窮地となった場面に幾つか自分から赴いて助けたが、生来の他人を信用しない毒舌キャラだ。

心配した言葉を口にしようものならば口汚く罵り続け、戦地で他人を泣かした人数は数知れない。


にもかかわらず時折ああやって声を掛けては来るのは不思議だ。

一体何を考えてるのか読めないが、人の内心等知りようがない。

私が出来るのは、ただただ私とその周辺人物が酷い目に会わないよう尽力するだけだ。


そのためにも出来うることならばーー

考え事をしながら歩いていれば、誰かにぶつかる。

体格が小さいこともあってか、こちらが突き飛ばされる形となるが、考え事をしていたのだ。

怒ることなく突き飛ばされた原因に目を向ければ、黒髪の若い男子学生が手を差し伸べていた。


「すいません、教官。急いでいたもので」

 その手を取って立ち上がれば、開口一番に謝罪。

学生にしては若干大人びた風貌を持つ主人公--朝比奈大和-- を一瞥した後、服に着いた汚れを払う。


(気にしなくて良いよ。こっちも気にしていないから)

「大和候補生。貴様は私より強い。強者が弱者に謝るな、周りから舐められるぞ」

「そんな、教官に勝てたのはただの偶然だと・・・・・・」

(運も実力の内だと思うんだけどなぁ。ところで何をそんなに急いでたんだい?)

「己を卑下するな大和候補生。それは己だけでなく、周りの評価すら下げる行為だ。ーーそれよりも何をそんなに急いでいた?」

困惑した表情を浮かべる大和に呆れたようにため息をこぼすと、鋭い言葉を投げ掛ける。

しかし、一体彼は急いでいたのか、そちらに疑問を持つ。


「あ、その教官を探しておりまして。ーー明後日皆で避暑地に行くんですが、教官もよろしければ」

恥ずかしげに頬を掻きながら、旅行のお誘いに思わずまたかといった表情を浮かべる。

決して大和候補生が悪いわけではないのだが、先程断ったばかりだ。ここで行くという手のひら返しはさっきの女子達と会ったときに恥ずかしい。


(悪いけど、行けないなぁ。気をつけていってきなよ)

「私のことは気にするな。貴様等だけで羽を伸ばしてこい」

 先程と同様のことを口にし、身を翻して去ろうとするが、それよりも先に手首を掴まれる。


「--ま、待ってくださ」

あ、と小さく声を上げるよりも先に条件反射で掴んできた大和候補生に足払いを掛け体勢を崩す。

その相手に体を引っ張られる勢いをそのままに腹部へ拳を落とそうとするが、直前で動きを止める。


(あーあ、ダメだよ。後ろから不用意に触っちゃ)

「貴様は阿呆か。いかに貴様が強者でも不用意に後ろか掛かれば、手痛い反撃を受けるぞ?」

「は、はい」

「よろしい、で、何を言おうとした?」

 忠告だけして無理に振りほどく。

 大和候補生を見下ろす形で先程言おうとした続きを促せば、今度は顔を赤らめる。

 あからさまな態度に冷ややかな目を向ければ、震える声で衝撃的な言葉が飛んできた。


「お、俺は教官の水着姿が見たいんですっ!!」

(は?)

「は?」

 はじめてククルとの思いが一致したかも知れない。

 だが、酷いことを言わせてもらうなら。


(大和候補生、趣味が悪いぞ?)

「貴様、幼児愛好家ロリコンか? もし、そうなら見損なったぞ」

「違います、俺は教官のじゃないとダメなんです! 教官以外に興味はありません!」

 だんだんククルの目が冷ややかなものから、下衆を見るものに変わっているのに気づいた様子はない。

公共の場でセクハラしてくる大和候補生を教育的指導という名目で、ボコボコにしても良いが、此処は正論をぶつけた方が引き下がるだろう。



「ふむ、貴様の思いの丈はよく分かった。しかし大和候補生、先の襲撃の一件がある。奴等が何時来るか分からん以上、戦力を分散させるのは愚の骨頂だ」

「あ、その件なんですが--」

 二の句を告げさせるより先に言葉を口にして、言いたいことを遮らせる。


「元より私はこの学園の守護を任されたというのに易々と敵を通した。その失態を取り戻すためにも、ここからは離れられんのさ」

納得したか? と分かるような表情を向ければ、視線を逸らされるものの直ぐに見つめ返される。

ーーところで何時まで彼は寝そべったままで居るのだろうか?


「その件なんですが、理事長の方から今回の避暑地はクロロード教官が担当するように、とのことらしいですが聞いてないんですか?」

(は?)

「は?」

 本日二度目の息があった瞬間だった。

 思惑が、理事長の思惑が全く読めない。

 他の教官全員に束になって襲い掛かられても迎撃できる自信があるほどの能力を有している。

 その自覚は向こう側にもあるというのに、それを手放すのは自殺行為だ。それにーー


(原作にこんなイベントは無かったはずなんだが? ここで選択肢を間違えたら、とんでもない目は待ったなしだよなぁ?)

 目に浮かぶのは、女性として産まれてきたのを後悔する酷い目。

 思い出すだけで身震いを覚える。

 ちなみに救済ルートでの選択肢は、学園に残っているククルと一緒に訓練するのが、答えだが大和候補生は既に連れて行く気満々だ。

 ここでどれだけ駄々を捏ねても、上が強制的な手段で向かわせることだろう。

 つまりは、私の人生とやらは詰んだと見て間違いない。


 一度目の人生は納得いってないが、二度目の人生は結末こそ悲惨ではあるが時間はある。

 自嘲気味に笑えば、教官? と問いかけられるような声を掛けられるが、真っ直ぐと見つめ返す。


「分かった、明後日だな。ふむ、しかし」

「何か不都合でも?」

「いや、なに。避暑地と言う事は泳ぐのだろう? 生憎訓練ばかりでな、水着など持ち合わせていなくてな」

 嘘ではない、事実だ。この世に生を受けてからひたすら訓練か、最前線に行って殺し合う日々のどちらかだ。必要最低限以外の衣類以外持ち合わせなど一切ない。

ただ目の前の大和候補生は今一何が言いたいのか理解できないのか、首をかしげるばかりだ。


(今は女だし、前世もセンスがないって言われたし、こういう時は主人公の方がファッションセンスは良いか)

「それで、だな。明日は準備で休みを貰えるだろう。大和候補生、私の水着を一緒に選んでもらえるか?」

「へ?」

 呆気にとられたような表情。自分から誘っておきながら、その反応はいかがなものか。

だが、先程の私と同じように言い訳をされる前に、時間を指定する。


「0900に正門前で待っている。貴様のセンスに期待しているぞ?」

 そう言って踵を返すと、大和から離れていく。


「どうせ泣いても笑っても最後の夏だ。生徒の我が儘くらいは、聞いてやってもバチは当たらんだろうさ」

 ポツリとこぼれた言葉は果たして大和に届いたのだろうか。

 

続き?

(多分需要がないと思うんで、続きは)ないです


キャラ紹介

ククル・クロロード

銀髪碧眼、低身長の転生した主人公。元々はゲームのキャラだが、主人公が他のキャラのルートに入った時点で悲惨な目に会う人。

騎士学校での教官を務め、理事についで強い。


大和

騎士学校の騎士候補生。

一度だけククルを練習試合で地に膝を着けた凄い奴。なお、ククルに一目惚れしアプローチしているが一向に気づかれない可哀想な子。



PS

俺は書いて投稿したからよぉ、お前らも書くの止めんじゃねぇぞ?(吐血

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[良い点] 面白いところ [気になる点] 主人公は誰とくっつくのですか [一言] 短編なのが残念です
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