からくり姫
むかしむかし。
ある所に手先の器用な王子様が居りました。
王子は、からくりを作るのか得意でした。
からくり犬を作った時、それを見た女の子は手を叩いて喜びました。
「しゅごい‼しゅごい‼おうじしゃま‼しゅごい‼」
トコトコと歩くからくり犬の後に。
ぴょんぴょん跳ねながら三歳の女の子は、ついていきます。
女の子に誉められて五歳の王子様も得意そうです。
それを見ていた、王様とお妃様と女の子のお父さんは二人の婚約を結びました。
王子様は、第二王子で皇太子に何かあれば王位を継がなくてはならないんですが。
王様はまあ第三王子に継がせれば言いか、と緩く考えておりました。
それに第一王子は丈夫で滅多な事がなければ死にそうにありません。
緩い父王のお陰で第二王子は、好きなからくりに没頭しました。
婚約者の女の子は、王子様が、作るからくりをニコニコしながら眺めています。
やがて大人になった王子と女の子は、結婚して幸せに暮らしました。
めでたしめでたし。
本当ならそんな未来が、訪れるはずでした。
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「何故だ‼オリビア‼」
彼女の棺に泣きすがる王子。
彼女の好きな白い薔薇に包まれてまるで眠っているようです。
十五歳でオリビアは、亡くなりました。
急な病でした。
彼女のお墓の前から王子は動こうとしません。
雨が降り始めても王子は動きません。
侍従と護衛騎士が無理矢理王子を馬車に押し込みました。
食事も睡眠もろくに取らないから王子は痩せていきました。
「そんな事ではオリビアは悲しむよ」
兄の言葉に顔を上げ。
「オリビア…」
それから王子は、ちゃんと眠り食事する事にしました。
王子は益々からくりに没頭しました。
そして一体のからくりを作り上げました。
死んだオリビアにそっくりの人形は『からくり姫』と呼ばれました。
いつも一緒にいました。
学校にいる時でさえ。
トコトコトコトコ
からくり姫はついてきます。
まるで生きているようです。
薔薇の庭で王子と二人でお茶をしたり。
オリビア様が、生き返ったみたいです。
王子はとても幸せそうです。
「王子ちょっと…この量産の時計について今度は女性受けするデザインにして欲しいそうで…」
王子が造るからくりはどれも人気で、
国庫を潤しましたが…
北の有力貴族が戦闘からくり人形を造れとごり押ししてきます。
おまけに自分の娘を第二王子妃にと迫ります。
この間のパーティーでもからくり姫と踊っていたら割り込んで来ました。
北の伯爵も娘の令嬢も野心家です。
王子がからくり姫とのお茶の席を外した時に、一人の女が現れました。
「貴女はいつまで私を苦しめるの‼」
伯爵令嬢は人形に向かって怒鳴りました。
「貴女は死んでも私の邪魔をするのね‼」
お前はあの方に相応しくない‼
相応しいのは私よ‼
死んでる癖に‼目障りよ‼
せっかく病死に見せかけて殺したのに‼
令嬢は喚き続けます。
「お前さえ‼お前さえいなければ‼」
令嬢は斧で人形を壊そうとしました。
後ろに立っていた飾りの鎧が、動き斧を弾き飛ばしました。
「お前がオリビアに毒を盛ったんだな‼」
隠れていた王子と騎士が出てきました。
令嬢は護衛騎士に連れて行かれました。
それからも『からくり姫』は、王子の側に居続けました。
王子は、結婚もせずからくり姫と仲良く暮らしました。
「最後までありがとう。私は幸せだった」
王子はからくり姫に看取られて亡くなりました。
『いいえ。私こそ愛して下さって、ありがとうございます』
ガシャリ
からくり姫はそう囁くと動かなくなりました。
からくり姫は王子と一緒に葬られました。
~ Fin ~
★第二王子
からくりとオリビアが大好き。
★オリビア
伯爵令嬢。第二王子大好き。
毒殺される。
★からくり姫
第二王子が作ったからくり。
★北の伯爵
野心家
★北伯爵の娘
野心家。
★飾りの鎧
第二王子が作った戦闘からくり。
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