剣術、体術、そして魔法を教えてもらいました
あれから5年が経った。
そう、僕は今5歳だ。
誕生日は僕がこの村に来た日にしたらしい。
あれから5年、僕の滑舌はマシになり、こちらの世界の言葉もわかるようになって来た。
滑舌の方はまだあまり流暢には話せないが。僕の両親、いや、祖父母は祖父がアドレン、祖母がティスという名前らしい。
また、隣の家のおじさんはラーガ、おばさんはマカという名前らしい。
よく僕のことを可愛がりに訪れて来てくれ、おじいちゃんとおばあちゃんの手が回らない時に世話をしてくれている。
4歳からティスばあちゃんは言葉を教えてくれ、マカおばさんはモンスターの解体を見せてくれた。
勿論、食用の素材なのだが、最初はなかなかグロくて直視できなかった。
五歳になって、僕は狩りに同行させてもらえるようになった。
子供は僕ともう1人いたのだが、その子はまだ幼いので、同行している子供は僕だけだ。
まだ見学だけであったが、それはそれで仕方がない。
偽造ステータスを見ていると同年齢の子供よりは平均以上のステータスであったらしかったが、それでも弱いのは当然である。
そうそう言い忘れていたが、この偽造ステータスはレベルもしっかりと上がるらしい。
レベルが1上がるごとに全ての数値が1〜5上がるのだが、本物のステータスはレベルが1上がるごとに全ての数値が50上がる。
まったく、チートにもほどがある。
この偽造ステータスと本物のステータスは脳内で交換することが可能で、それにより実際の数値も反映される。
未だにこの村の人々にはバレていないが、気をつけることにはこしたことがないだろう。
この村の名前はタージュ村といい、人口50人ほどの秘境であるようだ。
旅人は1人も来ず、村人以外の人をまだ見たことがない。
ただ、この村のあたりにいるモンスターはドラゴンや大型のモンスターが7割を占めているので、この村の人々は全員只者ではないのは確かだろう。
ここの領地はライン伯爵が治めているらしいが、ライン伯爵はこの村の存在を知らないのか、一度も兵士を寄越してこない。
それはまあ別にいいのだが。
それよりも僕は明日からアドレンじいちゃんから魔法を教わることなった。
これはチョー嬉しい。
前世に存在しない魔法が使えることは嬉しすぎる。
あと、ラーガおじさんが僕に剣術と体術と、対人戦を教えてくれるらしいが、これはあまり嬉しくない。
実は前世で僕は合気道を嗜んでいたので、合気道を教えて欲しかった。
まあ、この世界には存在しないので仕方がないが。
ではでは、近況報告はこれくらいにして、そろそろ寝ようかな。おやすみなさい…
★★★★★
おはよう!今日から魔法の勉強だ!僕はウキウキしながら一階に降りる。
アドレンじいちゃんはもう起床していて、一階で朝食の用意をしていた
「おじいちゃんおはよう!」
「おはようケイン。昨晩はよく眠れたかい?」
「明日から魔法の勉強ができると思うと目が冴えてしまってあまり眠れなかったよ。」
「はっはっは。今日はビシバシ行くからな?ちゃんとついてこいよー。」
「うん。頑張るよおじいちゃん!」
僕はそういいながらアドレンじいちゃんが用意してくれたパンとスープに食らいついた。
食後、朝の運動としてラーガおじさんに指示された柔軟と体作りのための筋トレと持久力アップのためのランニングをして、今か今かとアドレンじいちゃんの手が開くのを待った。
それまでにラーガおじさんが来て、剣術と体術を仕込まれてヒーヒー言いながらも耐えて、ようやく魔法の勉強が始まったのは昼食後だった。
「それじゃあおじいちゃん、よろしくお願いします」
「うむ。まずは魔法を使うにあたって一番大事な魔力をコントロールすることを教えよう。手足の指先まで魔力が滑らかに循環するようにイメージするんじゃ。血が体の中を循環しているのをまずはイメージして、それを魔力に置き換える。そのあと、それよりも精密にイメージして最終的に体全身に魔力の膜を張るのじゃ。こんな感じにな。」
そう言ってアドレンじいちゃんは体の表面に膜を張った。僕もイメージして真似をしてみる。………できちゃった。
「…………」
アドレンじいちゃんが口を開いて唖然とした表情で僕を見ている。
そら、そうなるわな。
これまで一度も魔法の勉強をしたことがない奴が一発でできたらそうなるわな。
「ケイン…お前、天才の部類に入るかもしれんな…」
「あのさ、おじいちゃん。そのことなんだけど、あまり周りには言わないでくれるかな。僕、目立つの大嫌いなんだ。」
目立ってしまったらこれからこの村に居づらくなる。
でもおじいちゃんとおばあちゃん、ラーガおじさんとマカおばさんには自分の実力を知ってもらった方がこれからの教えてもらえることの内容も増えるだろうし、それに褒めて欲しかった。
だから僕はアドレンじいちゃんにお願いした。
「そうじゃのー、確かに目立ってしまうのう…わかった、このことはおばあちゃんとラーガおじさんとマカおばさんの秘密にしよう。」
そう言って笑ってくれた。
嬉しかった。
僕の気持ちを尊重してくれるいいおじいちゃんを持って僕は幸せだ!
「じゃあ次は魔法で火をおこしてみるぞい。よーく見ておけ。」
そういうとアドレンじいちゃんは目をつむり、目を開けるとともに手の中に火を発現させた。
「魔法はイメージが大切じゃ。イメージすることであとは己の中の魔力量に比例して魔法は発現する。儂はイメージするときに火打ち石から火種を作り、火がおこるのをイメージして発現させた。自分に適応するイメージを探して1番威力のある方法を採用するといいじゃろう。」
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僕はガスコンロをイメージした。発現までの時間を短縮できるか試してみた。結果、アドレンじいちゃんの出した火よりも早くに発現し、威力も3倍ほどあった。
アドレンじいちゃんは絶句していたが、しばらくして我にかえり、笑った。
「まったく、大した奴じゃわい。ケイン、儂の知っている魔法を全てお主に教えてやろう。しっかりついてこい。お主は全属性を持っているじゃろう?」
そうなのだ。言い忘れていたが、4歳の頃にアドレンじいちゃんに魔法属性を調べられ、全属性を持っていることを知った。
あの時も少し村の話題となり、居心地が悪かったものだ。
魔法を昼食後から夕方5時ごろまで教えてもらい、今日、僕は初級魔法全てを手に入れた。
あと、魔力コントロールを完璧に習得した。流石にアドレンじいちゃんも舌を巻いていた。
今日、僕は正式に魔法使いの弟子となった。