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3話

 ロデリー迷宮は、ホールバルトに隣接する三つのダンジョンの中でも最も危険度が少ないと言われている。そのため、ダンジョン内には駆け出しも多くそんな場所で異常事態が発生すれば大惨事に繋がりかねない。

 

 「ロデリー迷宮内で発見された異色個体は、ゴブリンが多数。他にも、ロックワームの異色個体も少数が発見されたそうです」

 

 「今日になって急に異色個体の報告がこれだけでてきたのか。状況は思ったより悪いかもな」

 

 ロデリー迷宮へと向かう馬車の中、案内のため同行しているホーンバルトの支部職員であるヒューリから現状を聞いて、リースは苦い表情を浮かべる。

 

 今回の件と類似している過去の異常事態発生案件では、異色個体の報告例は資源増加と同じように一ヶ月ほどかけて徐々に上がっていったはずだった。

 それが今回は、たった1日で異色個体の数が急増している。

 

 「最悪の場合、ロデリー迷宮内にはすでに危険度B以上のモンスターが発生していると考えるべきでしょう。ヒューリさんは、俺たちから決して離れないようにしてください」

 

 真剣味がこもったリースの言葉に、ヒューリは緊張した面持ちでうなづいた。

 

 

 


 ロデリー迷宮前に到着すると、慌ただしい様子で人々が寄り集まっている。

 

 「なにかあったんですか?」

 

 ヒューリが顔見知りの同僚をみつけ声をかける。

声をかけられた支部職員は、あぁヒューリかと呟いて参ったよと言葉を続けた。

 

 「一人の冒険者が負傷した状態でダンジョンから逃げてきた。命に別状はなかったが、襲われた相手が問題でな。なんでも、ダンジョン最奥部でオーガに遭遇したらしい」

 

 それをきいて、ヒューリ含めた特救班全員の顔に緊張が走る。オーガの危険度はB以上、ロデリー迷宮に出現するモンスターの危険度は最大でもDとされている事を考えると、間違いなく異常事態と言える。


 「ダンジョン内にいたほぼすべての冒険者の避難は完了したんがだ、当のオーガと遭遇したパーティのメンバーはまだダンジョンの中だ。救援に行こうとも危険度が高すぎて立ち往生しちまってるのが現状だ」

 

 もどかしいと言わんばかりに、目の前の職員は唇を噛み締めるた。

 

 「オーガと遭遇したパーティの構成を教えてもらえませんか」

 

 「それは構わないが……あなた達は?」

 

 リースに声をかけられた職員は、ギルド本部の制服をまとった特救班の面々に、訝しげな顔をする。

 

 「こちらは冒険者特別救援班の方々です」

 

 ヒューリの説明に、職員はあぁと納得したように頷いた。

  

 「あなた達が噂の。ダンジョンの入場記録によると人数は五人。一人は脱出してきたので残りは四人です。取り残されてるのは男性二人、と女性一人、いずれも冒険者ランクはDです」

 

 リースはそれだけ聞くと、わかりましたと頷いて特救班のメンバーへと向き直る。


 「ただいまをもって、ロデリー迷宮内での異常事態の発生を宣言する。俺たちの最優先任務はダンジョン内に取り残された三人の冒険者の救出だ」

 

 「「「「了解」」」」

 

 イレーネ、ミリア、ライオス、ガレアが口を揃えてリースの言葉に応答した。

 

 

 

 「この辺にランクB異常の危険種はいないみたいだけど、異色個体は随分と目立つわね」

 

 ダンジョン内部に突入した特救班五人と、案内を務めるヒューリはダンジョン最奥部への最短ルートを駆け足で進行していた。

 すれ違うモンスターはすべて無視し、たまに襲いかかってくるものはイレーネが牽制しながら、最低限の行為だけでやりすごいていく。

 

 「長年冒険者をやってきたが、こんな数の異色個体に遭遇するのは初めてだな。真っ白なゴブリンの群れとは、違和感しか感じない」

 

 興味深そうに辺りを見回しながら、イレーネの言葉にガレアが返す。

  

 「皆さん、一旦止まって下さい!」

 

 先頭を走っていたミリアが、大きな声をあげて立ち止まった。それに続いて一行も足を止める。


 「大きな魔力の塊を感知しました。ここからなら迷宮最奥部までの感知が可能そうなので、一度探索魔術を展開します」

 

 ミリアの言葉を聞いていたヒューリが、驚きの声を上げた。


 「探索魔術って、ここから最奥部まではまだかなり距離があります。そんな範囲の探知が可能なんですか!?」

 

 「うちのみっちゃんは超優秀な探索役だからね。これくらいお手の物さ」

 

 ライオスがさも自分のことのように自慢げにヒューリに語るのを見て、ミリアは小さく苦笑する。

 

 「私はこれしかできませんから。……見つけました、大きな魔力の塊は十。冒険者のものと思われる魔力も感知、いずれも危険種のものと思われる魔力の塊とかなり近い場所にあります。幸い、命はあるようですが、かなり危険な状況だと思います」

 

 ミリアの報告にわかったとリースが頷き、特救班に指示を飛ばす。

 

 「ライオスとイレーネは先行して冒険者の救出を。おっさんはみっちゃんとヒューリさんの保護を頼む。遠距離連絡の魔術テレパスは常に展開しておくように。以上、各自任務に取り掛かってくれ」

 

 リースが言い終わるや否や、ライオスとイレーネは待ってましたとばかりに駆け出してあっという間に見えなくなる。

 

 「その、単独行動は大丈夫なんですか? 最悪この奥にはオーガが十体は存在しているってことですよね?」

 

 不安そうなヒューリの言葉に、問題ないですと自信をもってリースは答える。

 

 「あの二人はうちのエース、危険度Sのモンスターだろうが負けやしません。それより、俺たちも残りの一人を助けなければいけません。みっちゃん、俺たちはどこに向かえばいい?」

 

 先行したライオスとイレーネに、テレパスで指示を飛ばし終えたミリアは、リース達についてきてくださいと言って立ち上がった。

 

 「こっちです、ついてきてください」 

 

 移動のために探索魔術を切ったミリアは、そう言うと駆け足でダンジョンの暗がりへと歩みを進めていく。

 リースたちも急いでその後を追って走り出した。


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