2話
ピコ…ピコ…ピコ…
長い廊下の奥から聞こえてくる妙な音に俺は目を開けた
ついさっきまで畳の上で座っていたはずだがと不思議に思ったが、回りを見渡すことさえ不思議と考えることができなかった。
ただ霞がかかったようにはっきりと思考ができない状態で、この長く前後の間が狭い行列が前に進むのに身を任せボーッと立っていた。
ピコ…ピコ………ピコ、ピコ…ピコ…ピコ…
ピコピコ音のリズムに合わせてこの行列が進んで行く。
どうやらこの奇妙なピコピコ音が進む速さに関係が有りそうだ。
この先に何があるのか分からないが、その音が気に入ってしまった俺はつい小さくピコピコ音を口ずさんだ。
直後、俺の前後5人ほどであろうか一斉に一歩前に進む。
俺は列の横に倒され、前方10メートル程に立っていた人を起点として駅前の駐輪場で倒された自転車のように次々と受け身もとれずに倒されていくのがスロー再生のように、倒れ込む視界の中にはっきりととらえた。
倒された痛みはさておき、つい発した音がパフロフの実験のように彼らを事故を起こさせたのだと強烈な自責の念を覚えたことが、元来小心者の精神の霞を追い払う。
『…す、すみません‼お怪我はありませんか!?』
素早く立ち上がろうとしたが、俺にぶつかり倒れ込んできた後ろの若者の巨体に首から下を押さえ込まれた形では文字通り手も足も出ない。
このままでは自分が死んでしまうと恐怖を抱いた。
『おい!悪いが退いてくれ!動けない!!』
前に並んでいた髪をカラフルに染めた外国人や他のは、俺の叫び声に身動ぎもせずボーッと立ったままだ。
俺の叫びにも全く反応がなかった彼らがやっと動いたのは、前方からやって来た黒服が来てからだった。