さあ、職を追われるハメになったぞ どうしてくれる 5
まあ、そのうち抜けるとは思っていたよ
でもなあ、まさかあんな冴えないやつになあ
なんだか少しさびしい気分だ 酒でも飲みたい
ふらーっと立ち上がる
モブマントが椅子に引っかかって、体からずり落ちる
あらら、いかんいかん、ボーっとしてたな
「あれ、お前いたのか」
先輩が声をかけてくる
「先輩、馬券外したっしょ、俺見てましたよ」
「なんだ、お前も競馬場にいたのか」
先輩と話しながら、俺はヒョロガリのほうをチラリとみる
そして、先輩に彼のことを聞いてみる
「こいつなあ、俺らの工場に刺さってた剣、あったろう。あれコイツが抜いたんだぜ」
「えーマジですか、あの剣を」
俺は大げさに驚いてみせる
「誰も抜けなかったのに、すごいですね」
ヒョロガリは少し照れたような表情になる
「いやあ、本当に偶然だよ。多分たくさんの人が引っ張ってたから、僕の番の時には、きっと抜ける寸前だったんだろうな」
「それで抜けた剣は、どうしたんだよ」
先輩が割り込む
「ああ、王様に渡したよ」
どうやら王様の手元に今はあるらしい
「君らのとこの親方、賞金を出すとか言っておきながら、いざ出す時は渋るんだよ。なんだかんだ理由をつけて、半分しかもらえなかったんだ」
「ギャンブルで作った借金、完済できるかと思ったのに」
「だいたい、悪意あるな。あの人、剣が抜けないままなら、もっと儲かったのにとか思ってるにぶつぶつ・・・・」
どうやらこのヒョロガリは、金には汚い上に縁のない、貧乏人らしい
話せば話すほど、俺の中の評価はどんどん下がってゆく
残念ながら、ほめるところが何も無い
話を切り上げ、店の外に出る
そこへ、すーっと俺と同じモブマントを着た3人が寄ってきた