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さあ、職を追われるハメになったぞ!どうしてくれる!

 薄暗い、6畳一間。ここで俺は次のステップへ進むべく、荷造りをしていた。しきりに涙がこみ上げてくる。俺は16歳の誕生日に、慣れ親しんだこの鍛冶屋を出て行くことになった。この鍛冶屋、創業100年を越える歴史のある、王立学校の教科書にも出てくるほどの鍛冶屋で、かつての王国軍の将軍の剣を打った事もあるという、まあ一言で言うと、めっちゃ凄いええ仕事をしている鍛冶屋なのである。


 俺はここの鍛冶屋に3年ほど前に拾ってもらい、そしてわずか1年で親方を越えた。この親方、弟子を100名以上抱えた凄い人らしいのであるが、正直、俺にはちょっと頭の固い、頑固親父にしか見えない。この頑固親父は、俺が打つ王国軍のアーマーの代金を4割もピンはねしていた。素直に俺の腕を認めて独立させてくれりゃ、こんなことにはならなかったのに。はあ・・・


 ちょっと、今までのいきさつを思い出してみよう。


 かつて、この国が魔王軍に襲われてたときに活躍していたアーサー王。とかいうのがいて、その人が使っていた剣が、この鍛冶屋の創始者が創ったんだって。剣は戦いの時に、真っ二つに折れて、この鍛冶屋のシンボルとして飾ってあったんだけど、なんとなく、オリハルコンで打ち直せば再生できるんじゃないかと、そう思ったんだ。けど、なんというか、空気的に新人が意見を出すなんて、できるもんじゃないから、こっそり夜なべをして、剣の再生に挑戦したんだ。


 まあ、2時間弱で成功したんだけど、俺は本当に大したことしてないし、オリハルコンと剣の相性が良かったんだ。きっと、誰がやっても成功していたと思う。コロンブスの卵じゃないけど。

 

 翌朝、直しておいた剣が地面に垂直にぶっ刺さっているのを発見した先輩たちが騒ぎまくっている

誰の仕業かと騒ぎつつも、チラチラ俺のほうを見ているwあーそうですよ、俺の仕業ですw

切れ味はどの程度かと、ためしに地面に突きこんでやりましたwそして、抜けなくなってしまいましたw


 俺はニヤニヤするだけで、しれっと自分の持ち場にゆき、仕事の準備を整える。剣を抜こうとするものが何人がいたが、結局誰にも抜くことができなかった。けっこう、力自慢の人が多いのに、そんなに深くささってるのか?心なしか、剣が俺のほうをみて笑っているような気がした


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やれやれ、町中から抜けない剣の噂を聞きつけた人が尋ねてくる。これじゃ、仕事にならん。剣の周りには常時、人だかりができてしまっている

 騒ぎに便乗して、鎧をひとつ持ち逃げしようとした盗人を、先輩が捕まえて兵士に突出しに行った

バカなやつ、うちは腕っ節はみんな強いんだよ。それにしても、この騒ぎ本当にどうにかならんのだろうか。本当に作業能率が下がってしまっている。王国軍へ収めるアーマーだってまだ仕上がっていないのに

そんなことを考えながら、俺は金槌と鋲で、金属と革の部分をつなぎ合わせる作業をしていた。

とそこへ大きな歓声、誰か剣を抜いたのか?

歓声のしたほうへ目をやると、大柄の男と、鳶職人の格好した人が言い争っている

「お前のような小娘に、こんな剣が扱えるものか」

大柄な男は鳶職人に向かって嘲る。鳶職人のほうは、なんだ、よく見ると女の子ではないか。

何か戦士に向かって言い返しているようだ。

 赤いアイシャドウをした、少し無理をした感じのツッパリネーチャンが、ボンタンに作業着を身につけ、ヘルメットを小脇に抱えている。腰にはノミなどが入った工具袋を結んでぶら下げている。ものすごく澄んだ綺麗な茶色い瞳で、キッと戦士を睨みつける。ヘルメットを床に置くと、剣の前に立つ。そして、剣の柄の部分を、ぐっと掴むとスーっと深呼吸をした。周囲の人々も息を飲む、一瞬の静寂、ハーッと吐く。俺はその様子を見守る。あれ、なんか、剣がうれしそうな顔をしているような気がする・・・


そして、次の瞬間、俺は信じられない光景を目の当たりにする


 ぐるんと大柄の男のほうへ向き直る鳶、そして吹き飛ぶ男!あれは・・・上段後ろ回し蹴り!!!

男がどたーんと仰向けにひっくり返る。鍛冶屋の中は大騒ぎだ。俺もびっくりして、製作途中のアーマーを落としてしまった。鋲がはずれ、大きな傷がついてしまった。鳶は剣が自分には抜けそうに無いことがわかると、舌打ちして、ひょいと柱をつたい、騒ぎを尻目に、高いところにある換気用の小さい窓からさっさと出て行った。なんという身軽さだ。男は町の療養院に担ぎ込まれていった。


 今日は何て日だ。くそが、傷を修理するのに、材料を取り寄せて、打ち直して、よその工場に依頼をして・・・


1週間はかかるぞ!

はあ・・・

まったく、あんな剣、直すんじゃなかったよ

仕切りなおしに、外に飯を食いに出よう

財布の中は20Gしかない

「机の引き出しに、500G金貨があるよ」

おお、そうだった、忘れてた

・・・・・・・・

あれ、誰だ今の声?

周りに人はいない

まあいいか、食事にしよう


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カウンター席に座り、日替わり定食を頼む

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

親指で金貨をはじく

ころころとカウンターの上を転がり、黄金の輝きを放ちながら、ほかの客の肘や、食器を交わし主人のほうへと向かっていく。

その様はまるで、砂漠でオアシスに向かうゴールデンバタフライのようだ。

バタフライは主人の目の前に止まった。

主人は面白くなさそうな顔で俺をみつめ、坊主、死神が背後に見えるぜと、せせら笑った

これから死ぬやつに飯なんかいらねぇんじゃねぇのか

俺は舌打ちをし、うるせぇ、さっさとしな。

コックってのは、食いてぇやつに食わしてやる。

それで、いいんじゃねぇのか と言い返す

はん、それもそうだな

コックは、凄まじい包丁捌きで食材を切り、

鬼神が乗り移ったようなオーラを放ったかと思うと、

中華なべを真上に放り投げ、

食材に調味料を加え、料理を完成させた

まったく、仕事がはええな だが、まずくっちゃ意味が無いぜ

とっとと終わらせな、くそがき

ふむ、ではスープを一口、

味わい深い、ツバメの巣だな、

しょっぱなからこいつとは、ちょっと客を舐めちゃいないかい? 

ほぉー海鮮ものがメインだな

近海で取れた新鮮な魚、朝一番に業者に運ばせたな。

ここまでやるかね普通

うむ、火の通り具合、焦げ目の着きあいからくる外見的な味わい。

みごとだな。

ほぉーこの卵もなかなかだ。

天然の飼料で育てた鶏から採取しないと、ここまでの濃厚な味は出ない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ズドン!!!!

と大きな音が後ろから響く

我に返る

ああもう、せっかく「孤独のグルメ」と「カウボーイの食事シーン」を融合させた妄想でアジの開きを楽しんでいたのに!

いかん、骨がのどに刺さった。いてぇ。

てか、ゴールデンバタフライってなんだよwwwww

投げた中華なべはどうなったんだよwwwwww


店の外が騒がしい

ほかの客も、何だ何だと外を見ている。ちょうど、食事も終わったので、外に出る。すると、人が倒れているではないか。血を流している。鉄砲で撃たれたみたいだ。


さっきのズドンという音は銃声だったのか

とても苦しそうにしている


よし、仕方が無い!


かかわると面倒だ・・・妄想しながら避けて行こう!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ふっ、一手遅かったな

この俺に決闘を挑むとは

だが、この早撃ちマクドに適うものはいない

ばかな・・・・・・男だ・・・・・・・

そして、夕日を背に、静かに当てもなく歩くのであx

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ガシッ!と足を掴まれた

もちろん倒れた男に!

うおーマジか!

かなり力が強い、俺はひっくり返ってしまった

そして男は俺に向かって何かをぶつぶつ言ってくる

「え?なんだよ?」

なるべく落ち着いた声を出そうとしたが、恐怖と緊張でかなり上ずってしまった

男は、目は血走り、口から泡を吹き、必死で話してくる

「勇者が・・・・王様。 ホウ コク  は・・・ヤク 」

「ケン・・・マズイ」

なるほど、さっぱりわからん

何がいいたいのだ?

ヨタヨタしながらも、かばんを差し出してきた

受け取るとその場に突っ伏してしまった

もう息が無い


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兵士たちが駆けつけてくる

やばい、面倒なことになりそうだ

近年国内の情勢は不安定で、取締りは厳しくなっている

冤罪で捕まり、厳しい尋問の末、亡くなった人もいる

立ち上がると、すぐ裏路地に駆け込む

兵士たちは死体を検分しはじめた

こちらには気づいてない

あー良かった

はっ!このかばんをどうしようか・・・・・・・

とりあえず、職場に戻る

なぜかうちの鍛冶屋に行列ができている

どうやら、剣を抜くのに挑戦をしたいものは、金をとることにしたらしい

たぶん親方だろうな こんな事はじめたのは

どんだけ強欲なんだよ、あの親方


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「お前は私に挑戦しないのかい?」

誰かに呼ばれる そして 目が覚める

薄暗い6畳間の一室

自分の部屋だ

ああ、変な夢を見たな

そして昨日あったことを思い出す

鎧泥棒、回し蹴りとび職、ノックアウト戦士、そして何者かに狙撃された男

剣を地面に突き刺したとたん、まるで引き寄せられるかのように、人々が集まってきた

親方はこれを機にどんどん商売を広げるだろう

眠い目をこすりながら、顔を洗い、ふと床をみると、狙撃された男から受け取ったかばんが目に付いた

「あ、そうだったな」

面倒なことになりそうだと思いつつ、持ってきてしまった

中身をどっさと布団の上にぶちまける

「なんだ、これ?」

便箋と白紙の手紙、インクのビンに羽ペン、双眼鏡、王国のマークが印された鉄砲と銃弾が6発、薬草が入った袋、聖水のビン、王国のマークが印された腕輪にフードつきのマント

どれも高級品っぽい代物だが、結構使い古されている

「ふーん、地味なセンスだな、面白くもなんとも無いな」

マントを羽織り、腕輪をつけてみると

職人っぽさが消え、ものすごっく普通っぽい、何の特徴も無い

いわば「モブキャラ」になってしまう

なんだが自分ではないみたいだ

かばんに荷物をしまって、さて、このままの格好でちょっとでかけよう


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モブマント(勝手にそう名づけた)を羽織り、町を闊歩する

今日は仕事が休みである

なんだか、すべてから開放された気分である

公園のベンチに座り、ぐーっと両腕と背を伸ばす

そして、フードを被ってみる

すると、なにやら話し声が聞こえてきた

「おい、連絡が途絶えてるな」

「銃声がしたんだよ、もう死んだよ」

「確認とったのかよ」

「えーもういいじゃない。あいつ・・・」

うるさいな、誰だよ 

フードを外し、周りを見回すもそばには誰もいない

かなりはなれたところに、年寄りと家族連れがいたが

話し声の主とは違うだろう



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