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とまれ  作者: つまようじ
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私のあの子

 かかわるな。

 かかわるな。

 人間にはかかわるな。



 どうして?


 とまれは、思ったままを呟いた。


 得な事は一つもないよ。

 関わったら、お前がとっても、傷つくだけ。




 *



 生き物の寿命が見えた。

 でもそれは私達にとって何ら特別な事では無く、自分のような弱小怪異でも、あの子の寿命が9歳で終わるのが、分かった。


 そんなのあんまりだ。

 そう仲間に伝えると、よくある事だ、いちいちかまうな、お前みたいな生まれて2年みたいな奴はみんなそう言うんだと、誰も協力してはくれなかった。


 関わるな。関わると、お前の方がおかしくなるよ。何度も何度も同じ忠告を受け続ける。

 それでも私には、「かかわるな」がどうしても出来なかったのだ。


 だけどどうすればいいか分からない。私は人型をとって啓示をあたえられるほど、高度な怪異ではない。だから人と話せない。それどころか、自分の原型である一定の形をした姿しか、人の瞳に映れない。


 そこで、私は思いついた。



 『とまれ』



 怪異は寿命だけではなく、その先の未来も、うっすら分かる。

 私は、まずは軽めな厄災を読んで、注意を促した。


 9歳の寿命なんて、事故に巻き込まれるぐらいしか考えられない。きっと私は、その時になって慌てて『とまれ』と姿を現すのだろうけど、急にそんなことしたって、その子は、意味が分からず踏み越えて行ってしまうかもしれないから。私を踏み越えると危険だぞ、そう経験を積ませることが大切だった。


 狙い通り、あの子は私が居ないか地面を見て歩くようになった。


 これで大丈夫だ。

 あの子は、私に絶対に逆らわない。


 月日は流れ、寿命が近づく。

 私は2週間に一度ほどしか現さなかった姿を、本当に些細な、地面に噛んだ後のガムが落ちてるとかそんな細かい厄災を全て拾い集めて、3日に一度の頻度で現していく。


 すると、心なしか歩くペースも、絶対に私を見落とさない為かゆっくり慎重に進むようになった。


 完全に注意を引くことが叶ったみたいだ。

 大丈夫。今日、あの事故が起こっても、私はあの子を守り切れる。



 『とまれ』



 昼間から泥酔しきったトラックが、歩道に突っ込む。

 瞬く間に引火して、激しい爆発が起こった。ドアが壊れて逃げられない運転手と、骨が折れて動けなくなった母親が、叫びながら焼け焦げて行く。

 

 ああ、よかった。

 あの子があんな無残な事にならなくて。



 もう大丈夫。もうこれで貴方に厄災は無いから、安心して前に進んでね。



 だけどその子は、やがて、部屋から一歩も動かなくなった。 

 

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