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死神に生を語る  作者: 惷霞 愁灯
6/11

六話 魂の空間

これは何?

映像?でも白黒でザーザーいってる。よく見えない。それ以外は靄がかかっているみたいだった。

その後、映像が徐々に鮮明になっていった。そこには、部屋の中に立ってる一人の男の子がいた。手には封筒らしきのを持っている。


「はぁ。……なんで。何でだよ!」


何かに悩んでる様子だ。でもなぜかは分からない。持っている茶封筒をクシャクシャに握りしめる。


「もう無理だ。いいや」


そう言うとすぐに男の子は、ガララと窓を開けて、素早く身を中に投げた。


「止めて!!!!」


咄嗟に声と手が出た。けれどその時にはもう、彼は家の窓から飛び降りてた。もう少しで手が届くその瞬間。映像は消え、周りは先ほどの白い部屋になった。

映像にしては、あまりにもリアルであまりにも惨かった。悲しさなのか、怖さなのかわからない感情が、頭を激しく沸騰させた。


「死神!どこにいるのよ。出て来なさいよ!」


「僕はもういるよ」


ひょいと右肩の後ろから、黒い霧が現れた。


「ひゃあ!」


いきなり目の前に現れたその黒い物体はナディスの声で喋っている。多分、思っている通りだと。


「この空間は、僕の空間。僕の魂以外自由に出入りできない。それに、この空間には生きてるものしか入れない。その証拠に、琴華ちゃんは多分、服着てないでしょ。大丈夫。僕には見えてないから」


「え? きゃっ!」


下を向くと確かに肌色の皮膚が見えていた。とりあえず、手で、大事な所は隠した。なんで気付かなかたんだろう。 恥ずかしい……


「そんなことより。」


急に周りの雰囲気が重くなり、さっきまで真っ白だった辺りが死神に合わせて黒ずんでいく。


「僕は、さっきみたいなのを死ぬほど見てきたんだ。誰かが死ぬのを見るなんて、気持ちのいいものじゃない。ねえ、少しは分かったかい。僕の気持ちが」


恥ずかしい気持ちが吹っ飛ぶほどの、いつもより強い口調だった。幾重にも重なった苦しみが伝わってくる。


「もう嫌なんだよ!毎日毎日こんなの見てるなんて」


ついちょっと前まで改心してきたと思ってたのに。 言い返したい。言い返したいのに、体という体のすべてが震えて。感情が流れ込んでくるようだった。


「死ねば、楽になるよね。そうだよね」


「……違う」


「違くない!そうさ。あの男の子だって楽になったんだよ!」


「違う!!!!」


男の子の苦しむ姿が目の前にいる黒い物質に重なる。


「どうせ僕なんか、このまま生きてたって誰にも褒められず、無価値に過ごすだけなんだ」


「違う!」


その時、ふと頭の隅から言葉が浮かんだ。それが実際どんな役目を担ってくれるかは分からないけど、すぐに反論したい私は、すぐにそれを口にした。


「人生は、ご飯なのよ!」バ――ン




「・・・・・?」


自分の気持ちは変わらないが、伝えられない。私なりのできる限りに死神の心に響かせたかった。


「ご飯を噛めば噛むほど美味しくなるように、人生も歩めば歩ほど深く真髄が理解できるようになるのよ!」


「で、でも、今まで理解しかけたことすらないんだよ」


この返答にはすこし戸惑ったが、自分の発言に戸惑っている今としては、それほど問題ではなかった。


「だから人生と違って、ご飯は今日も、あまいのよ!」バ――ン


自分で言ってて何か脱線している気がしたが、言い切った気持ちでいっぱいだった。


数秒おいて、死神は口?を開いた。


「……。やっぱり敵わないなぁ。さすが僕の契約者だね!」




「へ?」


少し間抜けな声を出してしまった。え?契約者って何?初耳だよ! ア●ムとかに行って計画的にご利用しなきゃいけないの!?


「あ、話て無かったね。あの時のキスにより君の契約者になった死神のナディスです。」


なぜか改めて自己紹介をされた。それと契約という謎のワード。


「え?」


ここは、リアクションをとるべきなのか。あ、あれでしょ。ギャグ……だよね。でもなにかおかしい。

急に冷静になれた私はさっきまで自分が少し不思議な発言ばかりしていたことを思い出して、少し心音が上がったが、それでもなお、自分から契約なんてものを頼んだ覚えはなかった。


気付けば自然に握手?を交わしていて、


「これからよろしく」


とナディスは一言放った。やっぱり、最初から最後まで状況は把握できそうになかった。

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