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死神に生を語る  作者: 惷霞 愁灯
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五話 橋下の契約 part2

今回は琴華目線です。

時を少し遡り、死神ナディスが寝始め、学活が終わる頃。





「今まで死神に言ってきたことは、自分にも言えることだよね」


最近のゴタゴタですっかり忘れちゃってたけど、ちゃんと謙士君に返事をしなきゃ。


「こういう思いも、生きてくのに必要なんだよ。」と、自分に言い聞かせる。


胸の動悸が止まらないが、なんとか落ち着かせようとしている矢先、私のところに一人の女の子がやって来た。


「ことかちゃ〜ん。一緒にかえろ?」


この子は小学生の頃からの友達【水本 紫陽花】。唯一信用出来る女友達と言っても過言ではない。今ではクラスが違うものの、ほぼ毎日一緒に登下校している。


「あ、さいちゃん。ごめん、今日は用事があって......」


「もしかしてカレシさんでもできたの? え、わ、私捨てられちゃうの〜?」


とても悲しそうな目でこちらを見つめてくる。と、同時に、女の感がとても高い技が炸裂する。といっても、隠し事はする気はない。


「まだ、だけどね。昨日告られたんだ。」


「えーー!! そっか、遂に私も独り身か」


長い黒髪がどんどん沈んでいく。大きな目がうるんで、雫を孕んでいる。


「さいちゃんだってそのうち出来るよ。可愛いからさ」


「ことかちゃんみたいな男の子なんていないよ〜。うわーん」


よしよし。と慰めたあと、教室で2人は別れた。紫陽花というだけあって、梅雨のようにとても泣き虫だが、そこが可愛い。その上裏表なく、男勝りな私を受け止めてくれる。多分親友なんだとおもう。


気が付いたら、謙士君との約束の時間ギリギリになっていた。私は走って事前に待ち合わせした近くの橋に向かった。走ってるせいなのか、動悸が激しく、顔が熱くなっていった。


橋に着くと、そこには既に一人の男の子が立っていた。すぐに遅れたことに対して謝ろうと思った途端、


「返事、聞いていいかな?」


いきなり話題を逸らさずに直球できた。あまりの恥ずかしさに頭がパンクしそうで、なんとか話せる内容の話題を返した。


「その前にこれ、返した方がいいかな?」


そう言って、私はペンを――もちろん受け取った時のままの形で――胸から取り出した。自分でも分かるほど、声が震えていた。

周りには誰も人がいなく、夕日だけが私達を照らしていた。


「いや、いいよ。男に二言はないから」


今まで意識しなかった点。修学旅行の夜は、恋バナで盛り上がっていた女子もいたが、ついていけない状況ができるほど、あまり興味がなかった。でも、嬉しい。私のことを意識してくれたなんて。こんな事考えてるなんて、変なのかな?


「なんでこのペンが大切か、教えてくれる?」


「そのペンは、昔僕が死にかけた時、救急車で運ばれたんだけど、まだ小さかったから泣き止まなかったらしいんだ。そんな時、急いで駆けつけてきてくれたお父さんが、これを渡してくれたんだ。」


「そんなことが……」


「よく分からないかもしれないけど、だからこそ本気って気持ちを受け取って欲しいんだ。」


刹那、静けさが漂った。その時、とても強い風が私に襲いかかった。そして、ペンを落としてしまった。そして転がっていき、橋の柵を越えていった。


「ペンが!!!!」


橋の影から見えなくなり、川に落ちてなくなったと思った。しかしペンは、橋の柱のくぼみに落ちており、なんとか取りに行けそうだった。


「私、取りに行くね。」


後ろから謙二の《大丈夫?俺が取りにいくよ》という声が聞こえたが、その声が聞こえるころ、すでに私はくぼみの上にいた。


「謙士君! あったよ!」


謙士のほっとしている表情が読み取れた。そして、すぐまたさっきの場所に戻ろうとした。が、


「きゃ!!!!!!!!」


またしても強い風がふいた。そのせいでスカートがめくれてしまい、片手を離したら、足を踏み外していまいくぼみの門に宙ぶらりん状態になってしまった。


「きゃあああああああ!」


どうしよう。死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!死ぬなんてやだ!偶然、死神のペンが頭をよぎった。そして私は、ありったけの声を振り絞って《ナディス》と呼んだ。そして先ほどの会話のやり取りの後で、ペンにキスなんかしてしまった。そして、あの眩しい光のせいで手を離してしまい、私とナディスは川に向かって真っ逆さまに落ちた。私は見たことない何かをその時見た。まるで



死神――――――



落ちていく中。不思議と、そう、それが自然な状態であるように。下、つまり川をみていた。


「何だろう。分かる。なぜか分かる。濁っているハズなのに。あの場所だけ石ある。」


その瞬間、自分の体が勝手に動き始めた。

空中で一回転。

しなやかに石に足をのせる。

落ちた反動に力を加え、体を上にあげる。そして上を向き飛び上がるその様は

海中から舞うイルカのように――――――――



それからの記憶は……ない。





気が付いたら真っ白な空間。音も風もない。物質さえ存在していないだろうと、思えるほどだ。なので影がない。どこが壁で、どこが天井で。今立っている場所でさえ、地面と保証はできない。出会った時につれて行かれた空間よりも違和感があった。


数秒ぐらいたった時。例のあいつの声がした。


「ここに来たついでに、これ。見ていってよ」


その声が終わるとともに、唐突に辺りが真っ暗になった。





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