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死神に生を語る  作者: 惷霞 愁灯
2/11

二話 死神の言い訳

「……ということなんだ」


と暗い口調で言われたものの、あまりうまく説明されたことををまとめられていない。いや、まとめたくもないが、私は仕方なく確認した。


「つまり、あなたは死神でいるのが嫌になり、生きるのも嫌になったけど、死神は死ねないから仕方なく人間界に来た。ってことでいいの?」


周りから見れば、私はどんな変人に見えるんだろう。ペンに付いてるストラップと話すなんてバカバカしいにも程がある。


「そういうことなんだ。死神は1ヶ月以上人間界にいると、勝手に体が消滅するみたいなんだ。だから、あと1ヶ月。よろしくお願いします」

と言われたものの、この摩訶不思議な自称死神に付き合わないといけないなんて信じられない。


「ねぇ、死神さん。ちょっと移動してもいいかな?」


「え? ……ご自由に」


路地裏といえど、誰に話を聞かれてるか分からない。それに落ち着きを取り戻すために、動きたい気分だった。私は近くの公衆トイレに駆け込んだ。それなら、電話してると思われそうだから。


はぁ…と、小さい溜息をついた。やっとあの場からは抜け出したけど、この不可解な状況からは、抜け出せてないことに。


「死神さん。あなたは人を殺す存在なのに、なんで死にたがるの?」


なんとか少しずつでも状況把握。且つ、死神とのコミュニケーションを、とろうと思った。こんなところで会話が途切れても気まずいし。


「根本的に違うんだ。まず死神は、人を殺すんじゃなくて、死ぬ予定がある人間を下界に連れて行くんだ。だから、人を殺すようなイメージがあるかもしれないけど。ようは、下界の天使みたいなものかな」


知らなかった。けど下界の天使って、やっぱり気持ち悪いイメージにしかならない。


死「僕、人を下界に連れて行く度に辛くて、辛くて。もう嫌になったんだ。死神でいるのが」


なるほど。ちょっとずつだが分かってきた。所謂、死神版ニートってやつなんだと。学校にもそういう人がいないわけではない。それなら私は学校で、もとい社会で教わったことを伝えたいと思った。



「ねぇ」


「な、何」


「死神さんは、死にたい死にたいって言ってるけど。」


「?」


「人間が、どれだけ死というものに怯えてるのか。分かるよね。」


「分かるけど……。人間が死ぬ時、どんな顔するか知ってる? 病気でも自殺でも事故でも、決まって同じ顔をしてるんだ。その顔を見てるともう辛いんだよ。それに、なんで人間は死に怯えてる人もいれば自ら死に向かう人もいるの? もう、訳わかんないし、だからこそ、死を見るなんて懲り懲りなんだ」


「じゃあ私は、見たくもないあなたの死を見なくちゃダメなの?」


少しの間が空く。


「え? ま、まぁそうなるけど……。」


「人間だって、多分貴方たち死神だって、生まれてきたからにはその道を全うするのが筋なんじゃないの? ここで死んだって何も分からないし変わらないままなのよ?」


「  」


死神からの返事がなく、気になった私は死神さん?と問いかけながらペンを軽く叩いた。

その時、隣から激しい水の音と、ドアの開く音がし、数秒後に女の子の声が女子トイレ内に響いた。


「ママー、ひとりごとがうるさいひとがいるよー!」


急いで口を手で覆った。私はこの日二度目の辱めを受けた。まさか自分が気づかないうちにトイレに入っていたとは。しかも声からして小学校にも上がってなさそうな女の子に。私はそーっとドアを開け、女の子とその母親が去ったであろうタイミングでゆっくりと外に出た。とんだ災難に見舞わされ、死神との会話がすっかり終わっていた。


気が付いたら辺りは暗く、仕方なく私と死神は急いで家に向かった。

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