夜に/星
「夜に」
月がきれいで泣きたくなって、
何にも持たずに旅へ出た。
星の光にさそわれて、
全て落として旅を行く。
黒くて青い空の下、
心だけなら飛べるのに。
醒めた夜風にさらわれて、
無粋な体はくだければいい。
そして身軽なこの心、
宿り木なくして消え失せた。
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「星」
伝えなければならない、と彼は言った。この思いは伝えなくてはならないと。
伝わらなくてもいい、と彼女は言った。この心の中にさえ、あればいいのだと
伝わればいい、と彼は歌った。その深いところが、いつか誰かに伝わればいいと。
伝えなくてもいい、と彼女は黙った。歪められてしまうくらいなら、誰にも伝わらなくていいと。
期待と絶望。諦めと希望。
強く輝き弱く落ち込む彼と、ただただ淡く輝く彼女と。