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「氾濫までして被害者がいないなんてうそよ」


 警察官の言葉を無視して、そのまま走って行った、次第に足元は水びたししになった。町中だというのに水が足首まで溜まっている。

 

 そこにはいろいろなものが流されてきていた。何かの破片や小物。梅の目にとまったのは携帯電話だ。


「明の?」


 水も構わずしゃがみこむ、携帯電話を拾い上げる。電源も入らない携帯電はを手にしてうずくまった。


「うそよ……」


 雨ですでに濡れている顔に新しい雫が落ちる。


「また居なくなるの?」


 梅の視界が暗くなっていく。意識にしがみ付く気力もなく、簡単に手放してしまった。


 母親。父親。幼馴染。

 私からどれだけのものを奪えば気が済むのよ。

 

 身体が揺れている。そう感じて眼がさめる。顔をあげて薄く眼を開くと、人の頭があった。梅はおぶられる形になっている。


「起きたか」


 そういって振り返った人。その顔は明だった。


「あき、ら?」

「探し回ったんだぞ」

「……生きてる?」

「誰が死んだって?」


 明は呆れるように苦笑いを浮かべる。


「だって携帯」

「携帯なんて量生産品だろ」

「だって笠間地区」

「氾濫前にもう避難所」

「……」


 梅の無言の拳が明の頭へ振り下ろされる。


「いっ、そもそも梅が家にいれば……」

「だって……」


 梅は背中に顔をうずめた。それも気にせず明は歩き続けた。


「前に約束しただろ」

「約束?」


 首をかしげて、記憶の中を漁り出した梅は思い出せずに疑問にしてしまう。


「忘れたのか?」

「えっと……」

「九年前と三年前」

「……」

「雨でも居なくならない。流されない。ずっとそばにいる」

「子供の約束でしょ」

「いや、どっちも俺は本気だ。絶対にやぶるつもりはない」


 無言のままおぶられる梅と進む明。いつの間にか雨はやんでいた。




 ある一室に一人の妊婦と男がいた。二人の左手には指輪が光っている。


「名前はどうしようか? 『明』が決めるんでしょ」


やさしく自分のふくらんだおなかを撫でながら質問を投げる。


「『雨』ってもう決めてたんだ。『梅』には言ってなかったけど」



『梅雨明け』END


 もはや梅と明と雨で「梅雨明け」というネタがやりたかったがための作品になってしまった。

 久しぶりの恋愛ものなんだかなーと思ってしまうできかもしれません。

 全部読んでくれた方、ありがとうございました。

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