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2話 武器が無ければ

 目の前にはツノウサギA がいます。俺は狩るための武器を持っていません。ちなみに防具は穴だらけの布の腰巻のみです。上半身は装備無しです。

 どうする?

……どうしようもないよ。なんて俺はダメなのだろうか。あろうことか狩りに行くのに武器を忘れるとは。激しい空腹感のせいなのか正常な思考ができていなかったのか……、理由は不明だ。

 茫然としている俺を見てツノウサギは勝機でも見えたかのように目を光らせて頭に生えている角をこちらに向けて走ってきた。かなりの速さの上に当然だが戦闘経験のない俺、不意を突いたと思ったら不意を突かれている俺なんかにはよけようがなかった。

 ツノウサギは俺の機動力を削ぐためか左足に角を突き刺した。さらにその角は俺の左足を貫通し、見事に風穴を開けた。

 

(俺の防御力弱いな!おい!)

  

 痛みこそなかったが俺はパニックになってしまい、わけも分からずツノウサギの頭に自分の右腕を思いっきり振り下ろした。


「ヴォリァァァ!!!」


 俺のゾンビヴォイスが森に響いた。


 






 ……なぜこうなったのかは分からない。結果から言うと俺の左足に突き刺さっているツノウサギの頭部は粉砕しており絶命していた。さらに振り下ろした俺の右腕は肩の付け根のあたりからとれていた(・・・・・・)。ショックで声が出なかった。右腕がとれても痛みを感じないあたり、まさにゾンビである。

 ただただパニックだった上に腕がとれるという刺激的すぎる事件のせいであいまいな記憶を、必死にたどっていくと、どうやらツノウサギに当たった瞬間俺の右腕は自分のパワーにたえきれず後方に吹き飛んだらしい。俺に後方の木に腕らしきものが刺さっているのはそういうことだろう。俺の体はもともとぼろいので自分の力にも耐えられないということか。ス〇ランカー先生か、俺は。

 なんというか、どこから突っ込めばいいのか分からない。……凄まじい空腹感で頭が回らなかった。


(ダメだ……腹が減ってて思考が進まん。まずは食事だ食事)


 俺は残った左腕でツノウサギの胴体をつかみ自分の足から引き抜いた。そして……それを食らうため口に……いや、無理です。流石に無理です。

 

 ツノウサギは粉砕した頭からだばーっと血を垂れ流していて少し強く握ると血が勢いよく噴出した。

日本人の食事文化的に考えてこれはきついです。さっき食える!とか豪語してましたがつらいです。と、思いつつも自分の奥底から湧き出てくる空腹感にあらがえずにうんうん唸った後、俺はツノウサギに、いただきます、と感謝してからかぶりついた。


(……ん?そんなに不味くも無い、むしろ……美味い?)

 

 ツノウサギの肉は多少筋張ったところもあったがやわらかく、肉としては俺の前の人生の中で食べた肉の味だと上位には入る味だった。血生臭いがあんまり気にならない。ゾンビだからなのか。

 とにかく一口目でおいしさを知った俺はその後どんどんツノウサギを食べて10秒ほどで一匹を食いきってしまった。角までばりばりと、だ。少し足りないが空腹感はやわらいでやっと安心できた。

 ツノウサギを食うごとにゾンビである俺に活力のようなものが体にみなぎっていくような感覚がする。血が熱くなっていくようだ。心なしか自分の残った左腕が、血糊で見えにくいが少し血色が良くなっているようななっていないような。

 

 ツノウサギを食いきったその時、俺の体に不思議なことが起きた。なんとさっき吹っ飛んだ右腕がにょきっと生えてきたのだ。どうやら俺は何かを食うと体が再生するらしい。これがゾンビクオリティーなのか?後ろの木にだらしなく刺さっていた右腕は跡形も無く消滅していた。

 俺は再生した右腕をまじまじと見ていると驚くべきことを発見してしまった。

 なんと右腕は死体だったころの傷がそのままに再生するらしい。つまり……つまりだ……。俺がツノウサギを倒した時のようにまた右腕を振るえば自分の力に耐えきれず、また吹き飛んでしまうのではないか……。

 俺の戦闘は、毎回腕が吹き飛ぶよ!!宣言が知らない山の中でされました。

 もしかしたら腕だけじゃないかもしれない。下手すれば左手や右足、左足までもが……。俺は怖くなり考えることを止めた。



 

 空腹感で自我が崩壊する危険は去り、とりあえず俺は川を探した。俺の口の周り、おそらくすごい血で汚れているだろうし血がこびり付いた体を洗いたかったからだ。

 俺は川を探しに歩を進めた。いつもと同じペースで歩いているがさっきより若干速くなっている気がしたが、まぁ気のせいだろう。

 

 川を見つけた。川は洞窟に近いところにあり水には困らなそうだ。

 俺は顔を洗うために川の水面を覗き込む。そこには黒髪の男が映っていた。眼は日本人特有の黒眼ではなく黒に少し赤みがかった色をしている。

 口の周りは血で真っ赤になっていたがどうやら顔には傷は無く人間と見間違えるほどだった。……イケメン、とまでは言わないがそれでも転生前の俺とは違いなかなか整った顔つきをしていた。

 顔には傷がないようで口周りの血がなかったら俺かどうか疑っていただろう。

 とりあえず顔を洗った後(なぜか冷たいという感覚はあった)体も洗おうと、それほど川の流れは急ではなかったので服を脱いで――と言っても腰の布巻きだけだが――を外して、川に飛び込んだ。

 

「ヴァっヴォヴヴ!!」


あ、これは ひゃっほう!! って言ってるんです。ゾンビヴォイスでしかしゃべれないんで。


 嗚呼!川が真っ赤に!

 

 とりあえず体の血はすべて落とした。これもまた不思議なんだが無数の切り傷はあるものを、なぜかそこから血が出て来ないのだ。まぁ血が常に垂れ流しなのは困るんだが……。そういや腕が飛んだ時も血が出なかった。いったいどういうことだ?血が完全に抜き出ているわけでもなさそうだし。とりあえず俺がまとっていた強烈な腐敗臭も軽減して気になるほどではなくなったのでどーでもいいか。スルーでいこう。そうしよう。まだ俺には知らないことが多すぎる。

 俺は穴だらけの腰巻を装備し直し、川を後にした。


 初めての狩りを無事?に終われた。これは大きな一歩だろう。まだ少し残っている空腹感を癒すため俺はまたツノウサギを探しに歩き続ける。

 

 

 見つけた。帰り道が分からなくならない程度に散策しているとそれほど時間がたたずに2体目を発見した。今回の犠牲者2体目。ツノウサギだ。

 ツノウサギとはかなりエンカウントするようだ。生態系の低い位にいる種族なのか。

 今回の戦法も奇襲である。さっきは失敗したが、今回は成功させたい。


 結果(リザルト)


 成功。右腕が吹っ飛ぶのが嫌だったので左腕で殴った。右腕ほどではなかったが、かなりのパワーがあり、叩き潰すように左腕をツノウサギに振り下ろすと、突然の奇襲で不意を突かれたツノウサギは抵抗することなく破裂するかのように血をまきちらし絶命した。左腕も右腕のようにもろいらしく一発弱めにパンチを打っただけでとれそうになっている。ぎりぎり肩についているという感じでぷらーんと、頼りなくついているような状態は、かなりショッキングなものだったが、腕からはなぜか血がでないし、俺は海外ゲームなどで見慣れているしで、意外と驚かなかった。最近のスプラッター物の映画の方がグロいかもしれない。とりあえず慣れってすごいってことだ。

 とりあえず俺は俺の糧になってくれるツノウサギに感謝し、一匹目と同じように食らった。今回は迷いがなかった。

 食いきった瞬間右腕の時のように再び俺にとれかけていた左腕が再生した。パンチをうつ前の、傷だらけの左腕に戻る。

 毎回戦闘するたびに腕がとれるのは本当に困る。元死体ならしょうがないのかもしれないが。武器があればなんとかなるかもしれないんだが……。

 もはや、やけくそだ。武器がなければ拳を使えば良いじゃない、まさに迷言。

 

 2体目を食い終わった後、俺は空を見上げた。もう陽は落ちかけていて赤い夕焼けがまぶしいほどに光っていた。もう数時間で夜になるだろう。夜になってもゾンビは、大丈夫なんだろうが俺はいったん洞窟に戻ろうと決めた。理由は危険かもしれなかったからだ。まだこの世界の情報がなさすぎるし、俺の空腹感もほぼなくなっていたので良しとしよう。そしてさっきから強烈な眠気が俺を襲っている。ゾンビになっても眠るという行動は残っているようだ。俺は小走りで洞窟へ戻った。


 洞窟につくころには太陽はほぼ沈んでおり、もう数時間で夜になりそうだった。俺は転生してからの一日を有意義に終われたと思う。

 初めて命を奪い、そしてそれを己の糧とした。日本人だったころは、滅多にできないことだろう。


 

 俺は洞窟の中に入り、自分のスペースに行き、そして寝た。洞窟の地面はかなりごつごつして眠りにくかったが、強烈な睡魔によって俺は比較的早く寝ることができた。

 俺はまどろみの中、大勢の人間の足音のようなものを聴いたがそれがなんなのかは知ることも無く、眠りに落ちた。


こうして、ゾンビライフ一日目は終わった。

 

 

 

文才が欲しい……。おそらく編集で、この話は大幅に直しを加えると思います。これでストックは終了です。次からは、まだプロットしかできていないため、ネタが思いつき次第となります。


読んでいただきありがとうございます。

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